コスト部門から攻めのITへ、サービスデスク最新事情:IT導入完全ガイド(3/4 ページ)
お茶出しやプロジェクタ修理、そんなことまでサービスデスクで対応可能に? ビッグデータ解析エンジンも搭載するなど進化するサービスデスクの最新事情とは。
基本的な機能が分かったところで、最新のクラウド版ツールの注目ポイントをトピックとして幾つか紹介しよう。
社内情報を効果的に利用する「ビッグデータ解析」
まずは、図2で紹介した画面のツールだ。この製品は、ユーザー側の画面でインシデント登録に当たって自由に文章を入力していくと、下部にその内容に関連するサジェスチョンやレコメンドが行われている。また、管理者側の画面ではインシデントに対応する解決策がレコメンドとして表示されている。
この機能の背後には、システムに登録されたさまざまな情報を検索、利用できる「ビッグデータ解析エンジン」が使われているのだ。サポートしてもらいたい内容を自由に書き込むと、その内容がたちまち解析されて、画面内に解決に結び付く内容が表示されるので、インシデントが登録前に自己解決されるケースが増加すると期待できる。
まだ特定の製品が持つ機能にすぎないものの、1企業では構築できない規模のビッグデータ解析プラットフォームが簡単に利用できるところは、クラウドサービスならではの可能性を感じさせる。
ちなみにこのビッグデータ解析に使われているのは、2012年11月の米大統領選のオバマ再選の一因としても有名な「Vertica」だ。このときには世論調査の結果や有権者の声、ソーシャルメディアなどの膨大なデータの迅速な分析を行い、ある地区の不在者投票の投票率予測を小数点第1位までの精度で予測したという。
その正確な票読みにより、劣勢選挙区にリソースを集中して選挙運動を展開、わずかな差の選挙区で勝利に結び付いたといわれている。この分析能力はITシステムの弱点発見、改善にも役立ちそうだ。サービスデスクに限らず、IT運用においてもビッグデータの活用は今後のトレンドになりそうだ。
従業員の相互サポートで問題解決できるチャット機能
また、ソーシャル機能がサービスデスクツールから利用できる点も、最新クラウド版ツールの特長的なところだ。掲示板的な使い方で、ユーザーが直接運用管理や開発担当者と会話ができるので、インシデント登録に至る前に解決することも多くなるはずだ。
ITだけではない社内サービス全体を管理するフロントツールも登場
さらに特筆すべき最新動向として、ITサポートばかりでなく「会議室予約」や「什器の管理」までも担当できるフロントツールが登場している。従来のサービスデスクツールやシステム運用管理、自動化システムが背後にあることが前提だが、その機能をビジネス視点で捉え直し、あくまでビジネスの生産性を向上するためのツールとして使えるようにすることがコンセプトに据えられた。
使いやすさの代表例は、モバイルデバイスの操作性を採り入れたことだ。例えば「プロジェクタが壊れている」と従業員が自分のスマートフォンにささやけば、音声認識機能でそれがインシデントとして登録される。
GPSで端末の位置情報を取得し、例えば予備プロジェクタの場所を示して解決できるだろう。カメラでIT機器貼付のQRコードを撮影すれば、その機器のマニュアルを表示してくれるといった使い方も可能だ。
また、図10のようにオフィスの機器の位置をマップ上で表示し、問題発生箇所を感覚的に把握可能にしたり、遠隔地からでも問題のある機器を正確に特定して復旧のためのアクションをとったりすることも想定されている。
さらに「会議室にお茶が出ていない」というような、ITとは無関係な総務部門管轄のサービスまで、同様にカバー可能なところも特長的だ。ユーザーには、ITサービスも総務系のサービスもひとしなみに業務効率アップのためにあるという考え方が、新しい時代の波を感じさせる。
なお、シンガポールの銀行では一足先にこのフロントツールを導入し、バックエンドのITリソースの自動プロビジョニング(自動構成変更)システムを利用して、100%のフリーアドレスオフィスを実現し、業務とスペースの効率化とワークスタイル変革に成功しているという。従業員がツール画面から自分の席を予約すると、その席のPCに当人専用の環境が導入されるという仕組みだ。
こうしたユーザーとしてメリットが実感できるサービスが実現していくと、運用管理スタッフと業務部門ユーザーとの意識の乖離(かいり)がなくなっていくのではないだろうか。
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