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断線しても通信可能、無線と有線のいいとこどり「電波ホース」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)

折れ曲がりや破断があって大丈夫。有線と無線のハイブリッド技術「電波ホース」が登場した。シンプルながら驚きの技術に迫る。

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ホースの途中から「針」で通信を分岐可能

マルチチャネル伝送のイメージ
図6 マルチチャネル伝送のイメージ(出典:東北大学 加藤修三研究室)

 ではマルチチャネル通信はどうか。これには電波ホースの中途からの入出力が十分な品質で行えなければならない。ところが、これこそシンプル極まりない方法で可能になった。

 他の有線通信では分岐装置がいるが、電波ホースなら波長の4分の1の長さのモノポールアンテナがあればよい。60GHz帯なら波長は5ミリなので、1.25ミリの画鋲のようなアンテナをホースに差し込むだけだ。実験では同軸ケーブルの芯線を1.24ミリ突出させてアンテナとして利用した。

 この実験でも、中途入力/中途出力の最大伝送損失は30dB、遅延スプレッドは約0.3nsという結果になり、両端間の通信もごくわずかな損失増加が見られるだけだった。これでマルチチャネル通信を行っても、3Gbpsでの通信は可能だという結論が得られた。

電波ホースの用途と今後

 極めてシンプルで安価でありながら、従来のワイヤーよりもある意味ずっと丈夫で使いやすいのが電波ホースだ。理論的には100メートル程度までは十分データ伝送可能とのことなので、例えば航空機などへの適用も可能かもしれない。

 また1話ワットの送信電力が利用できれば、1キロの通信も可能だという。5GHz帯の利用や、直径40ミリの大口径ホースでの実験も行われ、実用性が確認されているので、M2M通信が必要なさまざまな領域での期待に応えられることだろう。

 なお、60GHz帯ではIEEE 802.11ad(WiGig)やIEEE 802.15.3C(PAN)対応の製品がこれから続々登場することが予想される。これらの製品に搭載されるチップは電波ホースシステムの送受信機に転用可能だ。

 各規格の物理層だけを利用して、電波ホースでP2P通信が行える。コンシューマ向け製品の量産により、チップの価格はどんどん下がることが期待でき、電波ホースはさらに安上がりな通信方式になりそうだ。

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無線技術を使う車内通信システム

 従来の無線通信システムは軽量、安価ではあるが、マルチパスをはじめとする雑音に弱く、車内での伝送損失が大きく、高速通信が難しいのが悩みだ。

 導波管や光ファイバーを使う選択もあるが、伝送損失が低い半面、マルチチャネル通信を行う場合に多重化装置が必要になり、全体の重量は重く、コストは高くなる。また、導波管は曲げることができず、光ファイバーは過度に曲げると折れてしまう。どちらも事故などで破断すると通信ができない弱点がある。

「電波ホース」との関連は?

 上記の各システムの欠点を補うように、屈曲や圧搾に強く、破断しても通信が続けられる長所を持ち、コストが安く、軽量でもある。

60GHz帯の通信規格

 60GHz帯は2011年の電波法改正で利用可能な帯域幅が広がり、10ミリワット以下の送信出力の場合には免許が不要になったために、現在各方面から注目を浴びている。主な国際規格としてはIEEE 802.15.3cと、それから派生したIEEE 802.11ad(WiGig)がある。中でもWiGigは理論値最大7Gbpsを実現できる近距離通信方法として、2014年中に対応製品が市販される見込みだ。

「電波ホース」との関連は?

 電波ホースの発明者である加藤教授はミリ波の標準化のためのコンソーシアムCOMPA(Consortium of Millimeter wave Practical Applications)を2006年に結成、国内外39機関をまとめ、IEEE 802.15.3cの標準化をリードした功労者だ。2013年に標準化が完了したIEEE 802.11adは、2009年に完了したIEEE 802.15.3cとほぼ同様の技術(95%ほどは同じ)を採用する。その知見を生かした技術を応用したのが電波ホースだ。

ECU

 自動車やオートバイなどの各種制御を電子的に行うためのユニット。例えばエンジンに関しては、性能や燃費向上、排気ガスのクリーン化、走行パターンに応じた最適制御などをECUがつかさどる。

 ATをはじめとする駆動機構制御、エアバッグやABSブレーキ、トラクションコントロールなどの安全機構制御、エアコンやメーター類の制御もこなす。また、GPSやカーナビ、カメラ、レーダーによる周辺環境センシングなどのオーディオビジュアル系の制御も担う。

「電波ホース」との関連は?

 車内に数多く装備されたEUC間の通信を担うワイヤケーブルの重量を軽くし、かつ高速通信に対応できるようにするのが現在の自動車メーカーの課題の1つ。電波ホースはその課題解決策として好適だ。

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