IEEE 802.15.8を先取り、実証が始まったネットワーク自動構成技術「PAC」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)
中央制御装置なしで端末同士がネットワークを自動構成する「PAC」が登場した。IEEE 802.15.8規格の標準化を目指した動きに注目する。
PAC実現への道
PACは日本の他、韓国や米国など世界各国が取り組みを始め、さまざまな異なる方式が提案されている状況だ。IEEE 802.15.8はそれら提案を基に策定する予定だが、通信方式が1つに限定される可能性は少ないようだ。各国の周波数帯割り当ての都合もあり、国際的に完全に共通な方式は見いだしにくいのが実情だろう。日本の方式は標準に採用される複数方式の1つに選ばれる可能性が濃厚だ。
もし標準規格への採用が決まれば、日本では既にIEEE 802.15.4gチップがセンサーネットワークやM2M通信、スマートメーター、Wi-SUN実証実験などで多用されている状況なので、簡単に実用段階に発展可能と思われる。
また、チップやアンテナはコンパクト化が進み、端末のサイズは現在よりもずっと小さくできる見込みが高い。NICTによると、将来的には携帯端末は「カードタイプ」にまでできるという。ユーザー1人1人が簡便に持ち運び、現在地近くのローカルでこそ必要な情報を手にできる時代が、近い将来には到来しそうだ。
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Wi-Fi Direct
Wi-Fi対応機器がアクセスポイントを介さずに1対1ないしは複数端末のグループを形成して通信を行うWi-Fiアライアンスが策定した無線LANの一規格。PCとプリンタ、デジタルカメラ、スキャナ、タブレットなどの外部端末とPeer to Peerで直接通信できる。基本的な通信方式はWi-Fiと変わりはなく、対応端末がインフラストラクチャモードのアクセスポイントの役割を果たすところが従来との大きな違いだ。
「PAC」との関連は?
PACは、Wi-Fiが用いるIEEE 802.11の仕様を利用しない。むしろ既存の無線LAN帯域の混雑を避け、別の帯域で小容量のデータによるM2M通信を行うことを前提にした通信方式を採用しようとする。そのため扱うデータは動画などの大容量データではなく、テキスト主体の小さいデータのみとなりそうだ。
PACが依拠する国際標準となる見込みのIEEE 802.15.8のスコープとしては、通信相手の発見のために100kbps程度のシグナルを利用し、100台以下の端末とのPeer to Peer通信ができること、分散環境にあって10Mbps程度のデータ転送ができること、免許の要/不要を問わず国際的に利用できる周波数帯を使うこと、マルチホップは2ホップ程度、端末間の位置は10メートル程度といった特徴が示されている。ただし規格はまだ策定途上であり、正確な予想はできない状況だ。
Wi-SUN
NICTが主導し、2013年は東京電力が整備予定の次世代電力量計「スマートメーター」用無線通信方式として採用するなど、実用段階に到達しているM2M通信技術。端末間のマルチホップでカバーエリアを拡大でき、最終的には中央サーバに情報が集中できる方式をとる。
例えば、広い農場などで作物の生育状況や気象状況などを観測したり、建造物の保守用情報をセンサーネットワークで収集したりなど、広い応用が考えられる。ボタン電池で10年稼働できるほどの省電力化も図られているのも特徴だ。Wi-SUNアライアンスにより仕様が策定されて認定製品が登場した。
「PAC」との関連は?
Wi-SUNが利用する無線ネットワークの物理層はIEEE 802.15.4gが用いられるので共通する可能性が高いが、MAC層以上の部分は異なる。また、通信方式として中央に情報を集中させて制御する仕組みはPACには必要ではない(情報をセンターに統合するサブシステムは想定される)。
IEEE 802.15
近距離無線通信の仕様標準化を行うIEEEのワーキンググループ(WG)。IEEE 802.15.1はBluetoothの仕様として知られ、IEEE 802.15.4はZigbeeとして普及する。
「PAC」との関連は?
現在、IEEE委員会で規格策定活動が行われるIEEE 802.15.8は、PACを前提にして、通信の物理層とMAC層を定義しようというもの。韓国や米国など世界各国が異なる方式を提案する中、日本では独自のMAC仕様を開発したNICTが委員会のメンバーとして参加し、標準化作業に大いに貢献する。
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