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攻めと守り、両立の秘訣は? モバイルが変えた文書管理IT導入完全ガイド(4/4 ページ)

社外で社内文書を見ることができたらどれだけ便利か。しかし、問題となるのが安全面だ。モバイルデバイスを利用する「文書管理術」を紹介する。

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文書管理ツールの性格を見極めよう

 文書管理ツールは電子化文書の増加に伴って発展し、当初の目的により種類がおよそ次の3つに分けられる。

紙文書の電子化保存を主眼にした複合機ベンダーが提供するツール

利点:

 複合機のスキャナ機能と内蔵ストレージあるいは別途サーバによる文書の電子化と整理、保管が合理的、効率的に行える。

課題:

 複数ベンダーの複合機などが混在する環境での文書管理統一に難がある。

契約書や図面、ISO文書、業界固有の帳票、伝票の管理を主眼にしたツール

利点:

 古くから利用されてきたツールが多く、文書の種別や属性、管理手法などのベストプラクティスが蓄積されている。一般に機能が豊富でセキュリティ面でも堅牢。

課題:

 文書登録に手間と時間がかかりがち。専任管理担当者による日常的な管理作業が必要。セキュリティ面で確実が期せる反面、利便性に欠け、特にモバイル利用に難がある場合がある。

モバイルからの利用を前提にしたコンテンツ管理ツールベンダーからのアプローチ

利点:

 スマートデバイスUIに適合したルック&フィールでモバイルでの文書検索や閲覧に優れた操作性、表現性を持っている。

課題:

 文書の属性管理やアクセス制御の面では従来の文書管理ツールほどの緻密さを実現しておらず、文書登録や業務プロセスへの自動化ルーチン組み込み、文書の承認フローなども未発達。

 これらの特徴を持っていたツールが、それぞれにカバーエリアを広げて課題を解決しつつあるのが現在の状況だ。ほとんどのツールが複合機との連携機能は備えており、モバイルデバイス用の専用アプリや、ブラウザでの利用に対応する機能も用意済みだ。従ってツールの出自が機能の有無に直結してはいないが、得意用途を見極めるときにはツールの成り立ちや実績、事例を参考にしたい。

文書の属性をどれだけ細かく管理可能か見てみよう

 文書管理のキモになるのが文書への属性付加だ。例えば「契約管理」で使われる属性情報には「フォルダ」「文書種別」「契約名」「契約管理部署」「契約担当者」「契約先」「契約先担当者」「契約締結日」「契約終了日」などがある。技術文書や図面などにはまったく異なる属性の登録も必要。古くからの文書管理ツールには属性の事前登録機能があり、自社業務にフィットしたカスタマイズが行える。

 一方、現業部門では運用管理をシンプルにし、最低限のセキュリティで文書を活用したいのが本音。これには比較的新しいモバイル特化ツールの方がフィットしやすい。図7にモバイル文書管理に特化したツールの文書登録画面を示す。緻密な属性管理の対極にあるように見えるが、ユーザー部門内の管理者にとってはこれで十分という場合が多いと思われる。

モバイル文書管理ツールの文書登録画面例
図7 モバイル文書管理ツールの文書登録画面例(出典:インフォテリア)

 しかし、これでITガバナンスが効かせられるかは問題。例えば、全社対象の文書管理には緻密な属性管理が可能なツールを利用し、各業務部門内では機密性の低い文書だけを別のツールで利便性高く利用するといった使い分けが必要になるかもしれない。

 また、管理フォルダと公開用(複雑な版管理などをせずモバイルでも利用可能な最新版だけを提供する)フォルダとを使い分ける方法もある。コストと管理二重化の是非について検討が必要だが、運用法を最適化すればよい解決法になり得る。

業務に文書管理ツール機能が組み込めるかをチェック

 業務プロセスに文書を組み込む方法は業種業態で千差万別。一例として図8(標準作業手順書の作成から現場での反映までのワークフローを文書管理ツールが担うケース)を示すが、ツールのもつ機能やオプション機能を使えばさまざまな業務プロセスの合理化が行えよう。業務の課題解決に役立つ機能やカスタマイズ可能かどうかを、ベンダーやSIerに相談してみるとよい。

文書管理ツールを業務プロセスに組み込んだ例
図8 文書管理ツールを業務プロセスに組み込んだ例(出典:日立ソリューションズ)

 なお、業務プロセスへの組み込みという意味では「e-文書法」や「内部統制」に対応可能な機能の有無も確認したいポイントだ。これには証跡管理と長期保管、タイムスタンプや電子署名などの改ざん防止機能などが必要になる。ここでは詳しく触れないが、対応が必要な企業は要チェックだ。

 文書管理は突き詰めれば底なしの深みをもつ領域だ。投資可能な予算をにらみながら文書の運用設計を行いたい。その際には業務部門の意見を尊重し、情報資産の価値を最大限に引き出す努力をすることが、今後ますます求められよう。

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