主戦場はクラウドだ、進化するHAクラスタリングソフトウェア:IT導入完全ガイド(3/3 ページ)
インフラがクラウド移行する中、クラウド標準機能では困難な、詳細な検知機能を誇るHAクラスタリングソフトウェアがどう生かされるのか。徹底解説する。
クラウドとの対応関係をしっかり確認する
パブリッククラウドのサービス内容や仕様は事業者によってさまざまで、裏側にある運用基盤やサービスデリバリーの仕組みはほとんど公開されない。このため、ユーザーがパブリッククラウドに独自にHAクラスタリングソフトウェアを持ち込んで、動作検証や最適なクラスタ構築を行おうとしても事実上不可能だ。
従って、HAクラスタリングソフトウェアの選定は、対応関係が明示されたパブリッククラウドとセットで行うことになる。当然のことながら、HAクラスタリングソフトウェアを提供するベンダーとクラウド事業者の間のパートナーシップの深さや実績も、重要な判断基準となる。
SPOF(Single Point of Failure:単一障害点)を避ける
HAクラスタを構成する際に、SPOFを避けることは大原則である。しかし、特にパブリッククラウドでは運用基盤が見えづらいだけに注意が必要だ。稼働系ノードと同じネットワークスイッチの配下、同じラック、同じホストサーバ上に待機系ノードを作ってしまったのでは、いざという事態の可用性を確保できない。
パブリッククラウドの中にも、データセンターや運用基盤を物理的に完全に分離した「リージョン」や「アベイラビリティゾーン」を用意し、契約によって意図的に使い分けられるものがある。SPOFを確実に避けるためには、このサービスに対応したクラウド事業者ならびにHAクラスタリングソフトウェアを選択する必要がある。
SIサポートやリカバリーキットの有無も確認する
パブリッククラウドにHAクラスタリングソフトウェアを導入し、実際にミッションクリティカルなシステムの運用に耐える可用性を確保するためには、専門的なスキルとノウハウに基づいたインテグレーションが必要となる。
データセンターからハードウェア、OS、ミドルウェア、ユーザーデータ、アプリケーションに至る全ての層に対して、障害発生時に「どこが、どうなったときに、どの部分を、どのように、どうするか」といった対策を施すことで、はじめて業務が必要とする高レベルのSLAを確保できる。
その意味でもSIを含めたサポートは不可欠である。また、各パブリッククラウドに最適化されたリカバリーキットやテンプレートが用意されたHAクラスタリングソフトウェアは、複雑なスクリプトを作成することなく、より簡単かつ短時間でHAクラスタを構築できるなどメリットは大きい。
データレプリケーションの仕組みを併せて考える
HAクラスタ構成では、稼働系ノードと待機系ノードの間で常に同期を取りながらデータを共有する必要がある。このとき、特にWindows Server標準のフェイルオーバークラスタリング機能(WSFC)を使って可用性を確保するシステムをそのままクラウドに移行しようとする場合、次のような問題に直面することになる。
- WSFCでは、稼働系と待機系をまたいだ共有ディスクが必須となる
- ところがクラウドサービスのIaaSでは、共有ディスクを利用できない場合がほとんどだ(クラウドストレージを複数のノードにひも付けられない)
この問題を解決するには、別途データレプリケーションソフトウェアを導入し、共有ディスクに見立てる必要があることは十分認識しておこう。
自社の利用形態にあったライセンスを選択しよう
HAクラスタリングソフトウェアの利用ライセンスには、可用性確保の対象とするゲストOS単位のライセンスと、ホストサーバ単位のライセンスの大きく2種類がある。
限られた少数のシステムだけを守れば十分で、将来的にも増える可能性は低いというのであれば、ゲストOS単位のライセンスが有利だ。逆に、可用性を確保しなければならないシステムを、今後も次々に仮想化環境に移行するといった場合には、最初からサーバ単位のライセンスで導入した方が割安となる。
最近ではパブリッククラウドの利用形態と歩調を合わせ、上記2つのライセンスに月額制の料金体系を組み合わせて利用できるHAクラスタリングソフトウェアも登場している。
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