日本ロボット産業の巻き返しが期待できる「ISO 13482」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)
欧米やアジア諸国との激しい競争の真っただ中にいる日本のロボット産業。新たな規格「ISO 13482」が巻き返しの起爆剤になるか。
安全性はどのように検証されるのか
ISO 13482の前提になるのが「リスクアセスメント」の実施だ。100%の安全確保は理想だが、現実にはリスクは無限にあり、全てをなくすのは不可能だ。
そこで、どこまでのリスク低減が必要なのかを洗い出し、安全要求事項を決めて、リスクを低減するプロセスを決める。要求事項をクリアしたと認められる評価基準や、どのような試験などをして検証するかも決める。
この決め方についての規定がISO 13482に書かれていると考えればよいだろう。ISO 13482の中に数値などの形で基準値が記されるわけではなく、あくまでメーカーがユーザーに受容してもらえるリスクのレベルを定め、リスク低減ができているかどうかを規格に照らして認証機関が審査することになる。
リスクの低減は、いわば「歩道と車道を分ける」というような、制御を必要としない「本質安全」対策を最優先し、その後に機能安全を含む安全防護策(保護方策)を組み込んで「制御」によるリスク低減を図る。さらに、ユーザーへのマニュアルや警告文書などの形で「使用上の情報」を提供し、残留リスクをできるだけ低減するという流れだ。
リスク低減についての基本的な考え方を図1に、ISO 13482の構成概要を図2に掲げる。詳細な内容は生活支援ロボット安全情報センターのWebサイトから入手できる。
ロボットメーカーが安全認証を得る場合、まず自社自身で製品の安全性試験を行う必要がある。これには自社内の試験設備ではなく、第三者である安全性試験機関での実施が必要だ。
日本では2010年に茨城県つくば市に「生活支援ロボット安全検証センター」が開設され、世界でもまれに見るような試験設備が利用できる。
同センターを利用して認証に必要な試験を実施し、データを含めた書類を安全性認証機関(日本品質保証機構が今のところ唯一の機関)に提出する。審査を経て問題なければ安全性認証が行われ、認証マークの使用が許されるという運びだ。
マークがあれば、ユーザーはその製品を安心して購入し、利用できるというわけだ。ただし、用途によって評価基準は違うので、同じ製品であっても介護用は認証されていても家庭用は認証されていないというケースも将来的には出てくるかもしれない。
メーカー、安全性認証機関、安全性試験機関、大学などの試験研究機関、標準化提案機関(NEDOなど)の関係を図3に示す。それぞれが責任を分担して、メーカーに過度な負担をかけず、ユーザーにはより確実で最小限のリスクだけを受容してもらう仕組みが、日本では既にできたことになる。
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