「ネットワーク仮想化」はココに効く、課題解決に役立つ導入法:IT導入完全ガイド(4/4 ページ)
一般企業での導入例も見えてきたネットワーク仮想化。しかし、複数方式が並立し、コスト効果が分かりにくく、導入をためらっていないか。事例を基に紹介する。
以上、ファブリック、VLAN拡張プロトコル、OpenFlow、そしてクラウド管理ツールの一端について紹介した。では次に、どのようにネットワーク仮想化ツールを選べばよいのかを考えてみよう。
オンプレミスで自社クラウドを構築する場合に有利な選択は?
ネットワーク仮想化の主なメリットは、VLAN IDの限界を超えた拡張と、運用管理負荷、コストの削減、迅速な変更が可能な点にある。
VLAN IDの上限の問題はクラウド業者などに限られるわけではなく、一般企業がグループ会社専用のコミュニティークラウドを構築する場合などには問題になるという。クラウド構築の際はパブリッククラウドの利用も考慮に入れることをお薦めするが、大規模構築、運用の場合にはオンプレミス構築の方が低コストになることが多い。これはSIer、NIerに相談して提案をもらい、パブリッククラウドと比較してみるのがよいだろう。
なお、ネットワーク仮想化はまだ発展途上の技術であり、ややチャレンジングな面があるところには注意したい。ベンダー自身が手探り状態である場合もある。しかしそれだけに逆に共同でつくり上げる意識が高く手厚くサポートしてもらえる面もありそうだ。
仮想化技術の中でパートナーの経験値が高いのがファブリック利用の方式である場合が多いだろう。FC SANの利用など他のニーズを原動力にした導入例が多いので、ファブリックベンダーの既存機器が大部分を占め、導入コストが見合えば比較的安心して利用できそうだ。
いずれにしても、現在のところ、ネットワーク仮想化に要する構築費用や期間は従来のネットワーク更改とあまり変わらず、その後のメンテナンスや変更作業に要するコストと時間が大幅削減可能なところがポイントだ。投資可能な範囲で、しかも中長期的なコスト削減効果とビジネス改善効果を考えあわせて判断したい。
図6は「SDNアプライアンス」導入の場合のコスト試算の例だ。このような大幅コスト削減の可能性もある。
既存ネットワークとの親和性を考えよう
既存のネットワークリソースをリプレースするのか、できるだけ今後も利用するかで選ぶ方式が変わる。ファブリック利用ではベンダー統一の必要があり、OpenFlow利用の場合ですら、今のところマルチベンダー製品での構築はリスクが高い。
既存ネットワーク機器を生かしたい、あまり構成に変更を加えたくない場合は、オーバーレイ方式のSDN構築を目指すのがよいだろう。フローベースの場合のようにきめ細かい制御はできないが、現状のL2ネットワークの課題克服を進められる。
なお、ここで詳しくは触れていないが、データセンターや事業所間の連携についても考える必要がある企業も多いことだろう。ファブリックを適用すると、拠点間のネットワークも一体化、抽象化され、1つのネットワークのように連携可能だ。また、BGPなどのルーティングプロトコルを利用して拠点間を接続してLANを拡張するなどさまざまな方法がとれるので、構築パートナーに相談してみるとよい。
以上、今回はネットワーク仮想化の実際例を基にメリットと意義を中心に紹介した。奥が深く、新技術や新機能が続々登場する領域でもあるため、具体的なイメージがつかみにくいが、ネットワーク仮想化で「何を実現したいか」を自社内で明確にし、それをSIerやNIer、ツールベンダーにぶつけてみることで明確な形が見えてくるはずだ。冒頭に記したように、ネットワーク仮想化が目的化しないよう、ビジネスとITインフラの将来の姿を見据えた導入検討が望ましい。
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