検索
特集

クラウドと制度改正が後押し、使える中堅中小企業向けERPIT導入完全ガイド(2/4 ページ)

当初は大企業中心だったERPも、クラウド型の登場で導入のハードルが低くなった。大きな制度改正を控え中堅中小企業からの期待も熱い。ERPの最新事情とクラウド型のメリットを紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

導入時の負荷を軽減できる

 クラウドなので、サーバやネットワーク機器といったハードウェアを調達する必要がないことは言うまでもない。それだけでも、機器選定から購入、設置といったプロセスを一気に飛ばすことができる。その上、ソフトウェアのインストールや環境設定も不要で、自社導入と比べると導入に費やされる負荷、期間そしてコストを大きく低減できる。

 ただし、たとえクラウドサービスであっても、最初にマスター設定や登録を行う必要はあり、最小限の環境設定は必要だ。しかし、この作業についても、Excelの入力テンプレートなどを用意し、Excelからマスターデータを取り込めるようにすることで、初期導入作業の負荷を低減したサービスが多い。

 なお、企業の規模や業務内容にもよるが、多くの場合はクラウド型ERPの導入に必要な期間は2〜3カ月程度とされる。

メンテナンスが楽になる

 クラウドの場合、サーバなどハードウェアの運用管理や機能強化、OSやアプリケーションのバージョンアップやセキュリティパッチの適用といった作業をサービス提供者に任せられるので、日々のメンテナンス作業を大幅に低減できる。これは、クラウドの数あるメリットの中でも特に大きな点だ。

 中小企業では専任のIT担当者を置いていないところも多く、それがこれまでERP導入を断念していた主な理由となることもあったので、クラウド型ERPはかなり魅力があるはずだ。

 また、たとえ情シススタッフがいたとしても、少ない人員でインフラから業務システム、クライアントなど全ての面倒を見なければならず、一人当たりの負荷は過大だ。それが、クラウド型ERPを導入することで、基幹業務システムに関してはメンテナンスから解放されるようになる。

 また、ERPの場合、法制度の改正などに対応するために、頻繁なアップデートが必要となるが、こうした更新作業もクラウド型であれば必要はない。

 一方、セキュリティは、企業がクラウドサービスを検討する際によく懸念される点だ。特にERPの場合、企業にとって最重要機密ともいえる会計帳簿を外部に「預ける」ことへの心理的な抵抗もかつては大きかった。

 しかし、クラウド事業者の強固なセキュリティ環境が知られるようになったことや、ERPをはじめとする基幹系システムのクラウド利用が大企業でも増え、実績を積んだことなどから、抵抗感はなくなってきた。

 むしろ最近では、サイバー攻撃の手口が巧妙化、複雑化する中で、情シス部門が最新のセキュリティ動向をキャッチアップしながらメンテナンスを続けることのリスクや負荷が問われている。そのため、運用管理の専門家がシステムを管理するクラウドサービスの方が、手間をかけずに高いセキュリティレベルを実現できると考える傾向が強まった。

クラウドERPのネットワークセキュリティ
図3 クラウドERPのネットワークセキュリティ(出典:NEC)

モバイルとの親和性が高い

 スマートフォンやタブレット端末の普及をきっかけに、業務へのモバイル活用のニーズが高まっている。ERPに関してもモバイル利用を検討する企業が増えた。

 こうしたモバイルデバイスを使って社外から社内システムにアクセスできるようにするには、新たなネットワーク機器の設置などネットワーク環境の大きな変更が必要となる。それに対し、そもそもネットワーク経由での利用を前提にするクラウドであれば、ほとんど何もしなくてもモバイルでの利用がすぐに可能となるのである。

 他のシステム同様、モバイル活用のニーズが特に高いのが営業業務だ。営業担当者がERPのモバイル対応機能を使うことで、例えば、出張の合間に旅費精算を済ませてしまったり、顧客との商談の場でタブレットから在庫を確認し、そのまま受注まで行ったりといったことが可能となる。

クラウド型ERPのモバイル機能
図4 クラウド型ERPのモバイル機能(出典:日立システムズ)

 経営者や管理者にとっても、外出先から全社や部門ごとの売上状況などを簡単に確認できれば、迅速かつ的確な経営判断につなげられるだろう。

 もっとも、こうしたモバイル対応機能は、ベンダー側の用意は進むものの、今のところ国内ではそれほど利用が進まないようだ。多くの国内企業ではまだまだモバイルデバイスをどのように業務で活用するかを模索中であり、着手するにしても、最初はメールやグループウェアなどの情報系からというのが一般的だ。

 だが、今後確実にモバイルデバイスの利用範囲は広がることだろう。だからこそ、基幹系システムのモバイル利用が本格化したときに、すぐに利用を開始できるようにしておくことも忘れないようにしたい。

モバイル端末から売上情報を参照
図5 モバイル端末から売上情報を参照(出典:オービックビジネスコンサルタント)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る