Windows Server 2003のEOSが契機に、中堅・中小企業クラウド活用:すご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)
Windows Server 2003のサポート完全終了まであと10カ月、この節目に中堅・中小企業が検討すべきクラウド活用について徹底検証。
「片道切符にならないクラウド活用」に向けて
冒頭でも触れたようにWindows Server 2003からの移行先としてクラウド(主にIaaS)を選ぶ中堅・中小企業はまだ少ない。その背景には「いったんクラウドへ移行すると、社内運用に戻れなくなるのではないか」というユーザー企業側が抱く不安がある。
しかし、これまで述べてきた通り、サーバ環境が仮想化されていれば社内設置とクラウドを適材適所で選ぶことが可能だ。今回のWindows Server 2003からの移行に際しては「仮想化あり」の割合が「仮想化なし」よりも高く、クラウド活用の基盤環境は整いつつある。
「クラウド移行が片道切符になってしまうかもしれない」という不安さえ払拭(ふっしょく)できれば、中堅・中小企業がクラウドを選択する可能性はもっと高まるはずだ。
手軽な手段として考えられるMicrosoft Azureとの組み合わせ
とはいえ、適材適所のクラウド活用のためには「高価なツールが必要なのではないか」「社内設置とクラウドの間を調整するノウハウが求められるのではないか」と考える人も少なくないだろう。
確かに、従来と比べて新たな知識が必要となるのは事実だ。だが、これまでのさまざまな技術と比べて格段に難しいというわけではない。
例えば、Windows Server 2012/2012 R2には「Hyper-V Replica」という機能が標準で備わっている。これによって、Hyper-V上で動作する仮想化されたサーバ環境を地理的に離れた他のHyper-V環境に複製することができる。
これにMicrosoft Azureのサービスの1つである「Azure Site Recovery」を組み合わせると、社内設置されたサーバ環境の複製をクラウドであるMicrosoft Azure上に作成することができる。主に事業継続対策を想定したサービスだが、「ライフサイクルの場面ごとに社内設置とクラウドを適材適所で使い分ける」という用途に生かすことも可能だ。
実は昨今のWindowsサーバOSとMicrosoft Azureはシステムアーキテクチャの多くを共通化しており、互いの親和性を高めつつある。最新のWindowsサーバOSを利用することが「片道切符にならないクラウド活用」を実現する最も手軽な手段でもあるわけだ。
このように社内設置とクラウドの関係は大きく変わりつつある。中堅・中小企業としても旧来のステレオタイプに固執しない柔軟な視点を持つことが大切だ。冒頭の調査データが示すように「サーバ仮想化」という最初の一歩は既にクリアされつつある。
Windows Server 2003のサポート終了は中堅・中小企業にとって少なからぬ負担ではあるが、これを単なる負担と見なすか、「社内設置とクラウドの新たな関係を見つめ直す契機」と前向きに捉えるかによって今後のIT活用の自由度や選択肢は大きく変わってくる。本稿がそうした新たな視点を持つための一助となれば幸いである。
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