通信網はグローバルからスペースへ、「宇宙光通信」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)
宇宙空間と地表で電波の代わりにレーザー光を用いたデータ通信を行う「宇宙光通信」。宇宙でのネットワーク技術確立はもうすぐか。
今回のテーマは「宇宙光通信」だ。衛星間でも、地上と衛星間でも地上のネットワークと同等の高速、大容量データ通信の実現を目指す取り組みだ。2014年6月、日本で開発された片手で持てるサイズと重さの光通信モジュールが上空600キロの超小型衛星に搭載され、新しい基礎実験が始まろうとしている。
「宇宙光通信」とは?
宇宙光通信は、宇宙空間と地表で電波の代わりにレーザー光を用いたデータ通信を行う技術のことだ。衛星で撮影した高解像度映像による地図作成や、災害時の地上の状況の観測、地上の通信網の中継などさまざまな社会ニーズ、産業ニーズに対応できる大容量、高速な地上ー衛星間および衛星ー衛星間の通信を実現するのが目的だ。
宇宙光通信技術は、1980年代から研究が進められた。世界で初めて衛星ー地上間の双方向空間光通信に成功したのは1994年のこと。日本の宇宙開発事業団(現JAXA、宇宙航空研究開発機構)が打ち上げた技術試験衛星VI型(ETS-VI)と、東京都小金井市の通信総合研究所(現NICT、情報通信研究機構)の地上局および米国のジェット推進研究所(JPL)の地上局との間で1Mbpsの光による通信回線が実現した。
宇宙光通信研究はNICTとJAXAに引き継がれ、2005年にはJAXAの低軌道衛星となる光衛星間通信実験衛星「きらり(OICETS)」に光衛星間通信機器が搭載された。きらりは、欧州宇宙機関(ESA)の静止衛星「ARTEMIS」との間で、これも世界初となる双方向衛星間通信実験を成功させた。またNICTの地上局との間で、低軌道衛星として世界初となる双方向光通信を成功させた。
海外事例では2008年、ドイツ航空宇宙センター(DLR)が運用する地球観測衛星「TerraSAR-X(テラサーX)」と米国の衛星「NFIRE」との間、TerraSAR-Xと地上局との間で現在のところ世界最速の5.6Gbpsでの空間光通信が実現している。NICTは、TerraSAR-Xを用いた国際的な共同実験にも参加し、DLRおよび欧州宇宙機関ESAとともに衛星からのレーザー光の検出に成功した。
超小型衛星に大幅に軽量、小型化した通信モジュールを搭載
2009年にきらりの運用が終了して実験の間が空いたが、2014年5月に打ち上げられたJAXAによる「だいち2号」の相乗り小型副衛星として超小型衛星「SOCRATES(ソクラテス)」が軌道高度約600キロの太陽同期軌道へ投入され、現在本格的な光通信実験を待っている。
SOCRATESに搭載されたのは、きらり搭載モジュール(重さ約140キロ)の約2.4%に当たる重さ約6キロの超軽量小型モジュール「SOTA(ソータ)」だ。
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