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発電も塩加減が決め手になる「浸透圧発電」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

淡水と海水の絶妙な浸透圧で発電する「浸透圧発電」が登場した。太陽光よりも高効率という実力に迫る。

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 今回のテーマは、海水と淡水の濃度差を電力に変えるソフトエネルギーの1つ「浸透圧発電」だ。太陽光発電よりも低コストの発電ができることを実証したこの技術は、日本の機能性膜研究が生んだ海水淡水化技術とともに、グローバルな水資源効率活用に新たな道を切りひらくカギになりそうだ。

「浸透圧発電」とは

浸透圧発電実証プラント設備の一部
図1 浸透圧発電実証プラント設備の一部(出典:東京工業大学 谷岡明彦)

 海水と淡水とを半透膜で仕切ると、浸透圧で淡水が海水の方に浸透する。浸透圧発電は、浸透力を利用して発電機のタービンを回し、電力を得る新しい発電の仕組みだ。

 日本では東京工業大学の谷岡明彦教授が研究をリードし、2003年から技術開発に着手した。2009年に福岡市に浸透圧発電プラントを建設し、実験の結果、太陽光発電よりも優れた発電効率と発電コストを実証した。現在は海水淡水化プロジェクトを進める海外諸国から注目を浴び、国内では100キロワット級発電所実現を目指して技術開発を進めている。

 浸透圧発電は、いわばキュウリや白菜の浅漬けができる原理を応用したものだ。浅漬け名人になるコツは、上手に野菜から水を抜き出せる塩分濃度の浅漬け液を作ること。野菜の中の水分と、周りの液体との塩分濃度差により、濃度が低い方から高い方へと水が移動するのが「浸透」だ。濃度差は気圧差で表せるので浸透する力は「浸透圧」と呼ばれる。浅漬けは浸透圧を利用して水分を抜くわけだ。

 この原理を理科の実験で試したことのある人も多いだろう。図1のようにロートの広い口に半透膜という、水分は通すが塩分を通さない特殊な膜を貼り、塩水を詰め、水を張ったビーカーに垂直に入れると、やがてロート内に淡水が浸透し、ロートの水面が上がっていく。ロート水面が止まったところとビーカーの水面との高さ(水柱高さ)が浸透圧差に相当する。

浸透圧差の考え方
図2 浸透圧差の考え方。塩水の中に淡水が浸入することで水面が上昇し、塩水面が上昇することで圧力の差が生まれる(浸透圧差)(出典:東京工業大学 谷岡明彦)

 この実験を淡水と海水でやってみるとどうなるだろうか。浸透圧差は何と約30気圧、水柱の高さでいうと約300メートルになるのだ。つまり、約300メートルの落差のある水力発電所と同じだけの水力が得られることになる。

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