店舗分析に顧客対応まで、ネットワークカメラの最新トレンド:IT導入完全ガイド(1/3 ページ)
市場拡大を続けるネットワークカメラの3つのトレンド。乗っ取りに盗撮、セキュリティの注意点や日本の「おもてなし」を支える利用法までを紹介する。
近年の製品価格低下により、アナログカメラからのリプレース需要を中心に市場拡大傾向にある「ネットワークカメラ」。高解像度の映像を長期保存できること、クラウド活用によりスマートデバイスからも管理できることなど、ユーザーから求められる性能や機能も時代に合わせて変わってきた。
また、機能向上が進んだことで、主に防犯や監視といった従来通りの用途以外に、マーケティング活動や顧客満足度向上のためなどにも活用されるようになった。今回はこうした活用の幅が広がるネットワークカメラの最新トレンドについて紹介していこう。
ネットワークカメラの基本機能
ネットワークカメラとは、ネットワークに直接接続し、撮影した画像をデータ化して送信する機能を搭載したデジタルカメラのことだ。デジタルカメラ本体内にネットワーク通信を可能とするコンピュータが組み込まれているデバイスと考えることもできる。IPプロトコルに対応することから「IPカメラ」と呼ばれることもあり、またカメラ本体とともに、映像管理機器までを含んだシステム全体をネットワークカメラと呼称することもある。
ネットワークカメラを利用する目的としては、大きく以下の3点がある。
検知:
撮影範囲内で何らかの動きがあるかどうかを把握する。例:侵入者の有無
認識:
撮影された対象物がどのようなモノであるかを大まかに把握する。例:自動車か人間か、あるいは動物か?
識別:
撮影された対象物の詳細を把握する。例:対象の人物が男性か女性か。服装や人相、所有物などを明瞭に記録する。
これらの目的に沿って映像(静止画および動画)を撮影するのがネットワークカメラであり、そのデータはネットワーク経由で「映像管理ソフトウェア(VMS)」が動作するレコーディングサーバ、もしくは録画専用ハードウェアである「ネットワークビデオレコーダー(NVR)」へ送られる。
撮影シーンによって異なる性能のカメラ
一口にネットワークカメラといっても、そのラインアップは非常に豊富だ。例えば、ネットワークカメラベンダーのアクシスコミュニケーションズが提供するネットワークカメラ製品は、実に175種類もある。その理由は、シーンに合った最適な映像を得るために、撮影部であるカメラの機能が異なるからだ。以下に代表的な例を挙げよう。
逆光に強いカメラ
室内などに設置して入口部分を撮影した場合に、強い逆光のため露出過多または露出不足という極端な映像になってしまい、詳細が分からなくなる。そういった場合、ダイナミックレンジの広いカメラを利用することで視認性を改善できる(参考:図1、図2)。
暗所に強いカメラ
夜間になると補助光源が望めないような場所で検知、認識を目的にするなら、赤外線を利用したデイナイトカメラを利用する。赤外線ライトを点灯させて撮影することで、人工光源を必要とせず高品質な映像を得られる。赤外線のメリットとして一般的な光源よりも遠距離まで到達するので、遠距離までの撮影が可能になることが挙げられる。逆に色調は破棄され、映像はモノクロとなるデメリットもある(参考:図3、図4)。
また、ここで挙げたようにネットワークカメラ製品の外観もさまざまだ。もちろん機能にあった形状という理由もあるが、カメラの存在を目立たせないようにする製品もあれば、逆にカメラの存在をアピールすることで監視していることを印象づける製品もある。
コラム:世界初のネットワークカメラ導入企業アップルは何を監視したかった?
世界初のネットワークカメラを開発したのはアクシスコミュニケーションズだ。同社は、汎用(はんよう)機のプロトコルコントローラーやプリンタサーバなどの機器を開発、提供するベンダーだったが、1996年にネットワークカメラを開発した(図5)。初めは市場に受け入れられるかどうか分からず、ある目標台数が売れたら正式に商品化しようと考えていた。
そんな中、どこからネットワークカメラの話を聞きつけたのか、ある人物が同社に接触してきたという。
その人物とは、あのスティーブ・ジョブズ氏とともにアップルを設立したスティーブ・ウォズニアック氏だった。ウォズニアック氏はネットワークカメラの機能をいたく気に入り、すぐさま購入。当時から他拠点に展開していた製造拠点における製造過程の遠隔監視などに活用した。
ウォズニアック氏の反応に、同社はネットワークカメラの将来性を確信した。以降主力商品の1つとしてさまざまな製品を開発、販売する。
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