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オムニチャネルの旗手となるか、「モバイルPOSレジ」大全IT導入完全ガイド(6/6 ページ)

従来型POSレジと比べて安価に利用できるメリット故に広がりを見せるモバイルPOSレジ。知っておくべきモバイルPOSレジの基本を徹底解説する。

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異なるライセンスの考え方にご注意

 モバイルPOSレジを提供するベンダーごとに、ライセンス体系が異なるケースがあるので注意したい。登録ライセンス数での課金や店舗当たりの利用料課金などさまざまなものがあり、中には全ての機能が無料で提供されるものもある。商品アイテムの登録件数や顧客情報の件数に制限を設けることもあるなど、自社の環境に最適なライセンス体系が実現されているか十分に見極める必要がある。

モバイルアプリだけに……、一時的な機能比較はナンセンス

 多くのベンダーが口をそろえるのが、「あるタイミングでの機能比較はナンセンス」だということだ。従来のPOSシステムでは新たな機能を実装するには手間がかかるものの、モバイルPOSレジはタブレットのアプリとして簡単にバージョンアップできる。

 つまり、必要に応じて機能がどんどん追加され、あるタイミングでは対応していなかった機能が1カ月後には対応されているなんてことも十分あり得る話だ。もちろん必須の機能が実装されていないものは選択できないが、機能の○×だけで考えていくと後悔することにもなりかねないので注意したい。

 ただし、機能については現場の業務を的確に運用に乗せるための詳細な機能が充実しているサービスもあり、現時点で選ぶ際には十分に機能を確認しておきたい。例えば、レストランなど高級業態の飲食店では、ホールのスタッフが料理を出すタイミングをコントロールする必要があるが、ホールからキッチンに調理指示を出す「Fire機能」など店舗の運用が具体的にイメージできる機能などはぜひ使っていきたい。

対応する決済サービスは豊富か

 モバイルPOSレジは外部の決済サービスと連携することでカード決済を実現する。対応している決済サービスの種類なども選択する際には十分見ておきたい。

 従来のPOSシステムでは、金額入力後クレジットカードをCATと呼ばれる磁気読み取り装置に通すことで与信照会を行うことになるが、モバイルPOSレジの場合はタブレット端末のイヤフォンジャックに専用のカードリーダーを挿して決済を行う「Coiney」「Square」「楽天スマートペイ」「PayPal Here」「PAYGATE」「Anywhere」などの決済サービスが選択される。決済サービスは店舗を利用する顧客の利便性に応じて対応できることが望ましいため、できるだけ多くの決済サービスに対応できるものの方がメリットが大きい。

モバイルPOSレジが目指す姿の違いを理解する

 昔からあるレジスター、いわゆるキャッシュレジスターを単にモバイルPOSレジに置き換えたいだけであれば、実はあまり各社大きな機能の差がないのが実態だ。見ておくべきところは一体どこなのか。実は、各社が提供するモバイルPOSレジが目指す姿というのをしっかり理解しておいた方が、最適なサービスを選択できるようになる。

 例えばあるサービスは、店舗への集客に利用してもらえる、店舗に顧客を呼んで来ることに主眼を置いたレジシステムを目指す。具体的には、別のサービスでためた独自のポイントが決済サービスで利用できるようになっており、このポイント利用を目的に店舗に足を運んでもらえるようになることを目指している。

 また、他のサービスでは、OtoOやオムニチャネルといったキーワードでECサイトと店舗の情報を統合することで豊かなユーザー経験を提供するUX(User eXperience)に向けた店舗業務の一つとしてPOSレジを捉えている。汎用(はんよう)的なデバイスを用いて企業の基幹系と連携し、レジ業務以外の用途にも積極的にモバイルPOSレジを活用していくことで、新たな時代の店舗インフラを目指しているところもある。

 このように目指す姿が異なっているため、今後の機能アップデートもその方向に沿ったものが提供されるはずだ。自社が目指している方向に近いサービスは何なのかをしっかりと見極めてほしい。

コラム:組織に火種を植え付けるオムニチャネルにご注意を

 モバイルPOSレジを活用してECサイトと店舗の情報を統合するオムニチャネルを推進する場合、特に注意したいのは売上に対する取り分だ。もともとECサイトと店舗の売上についてはそれぞれで管理されているが、例えばECサイトで購入した商品の受け取りを店舗で行った場合、売上はECサイト側のものだが実際の引き渡し業務は店舗が行うことになる。

 顧客にとってはありがたい仕組みではあるものの、社内的なもめ事に発展することもあるという。そうならないためにも、事前に評価制度を見直しておく必要がある。また、強烈なトップダウンでオムニチャネルを推進することで、組織横断型の仕組みを強制的に運用するということも解決策として考えられる。

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