「ワークフローツール」、こんなにあった業務改善効果:IT導入完全ガイド(4/4 ページ)
業務の電子化にとどまらず、基幹系システムとの連携による業務改善やコア業務の生産性向上が期待できるワークフロー。ツールの活用で業務改善した事例から意外な利用法を紹介する。
導入やリプレース目的に合わせた機能のツールを選ぶ
グループウェアやプロジェクト管理ツール、特定業務パッケージの一部として装備されているワークフロー機能と専用製品との違いは何かといえば、汎用(はんよう)性の高さとワークフローの複雑性への対応能力といっていい。
例えば、承認の権限者が10人以下で、定型的な伝票フォームが今後も利用でき、しかもワークフローの本数が限定的である場合には、グループウェアのワークフロー機能で十分かもしれない。シンプルな運用性にむしろ業務を合わせることで、中小規模の会社や部門内での利用には好適な場合があるだろう。
しかし、承認者がそれ以上になり、条件による分岐が複雑な場合、あるいは業務ノウハウが詰め込まれた独特の伝票、帳票を利用し、また新たなニーズが生まれたらフォームや業務プロセスを改善していきたい場合には、シンプルなワークフロー機能では業務効率の足かせになってしまう可能性があることに注意して、導入やリプレースの目的に合致する製品を選択する必要がある。
自社業務へのフィット感で選ぶ
ワークフローツールの必須機能は「フォームの設計」と「承認ルート設計」機能といえる。多数の伝票の作成、編集(再利用)が低コストに行え、複雑な分岐と多段階の承認処理(時には100以上の承認処理が必要なこともある)に対応でき、しかも業務部門がそれらの設計、運用、管理ができる運用性と操作性を備えていることが必要条件だ。
また、他システムとの連携のためには、CSVなどのファイル連携やHTTPやSOAPなどによるリアルタイム連携が可能なインタフェースも必要だ。こうした機能をできるだけ標準装備し、カスタマイズやアドオン開発が最小限で済むツールが望ましい。
あるベンダーは「ワークフローツールの中心ニーズは『経費精算』と『勤怠管理』」であるとして、それぞれの業務に特化した機能と、メジャーな会計や勤怠管理パッケージとの連携機能を装備した製品を提供する。カスタマイズやアドオン開発の必要をなくして自由に編集可能な伝票のひな型とともに提供されるので、導入や運用が容易だ。
また、別のベンダーは共通アプリケーション基盤(フレームワーク)上にワークフローツールを位置付け、他システムとの連携構築にも幅広く対応可能にして、ワークフロー管理にとどまらない業務プロセス改善が図れるBPM機能も盛り込んだ統合ツールを提供する。
どのように自社業務にフィットさせるかは、
- 運用設計やアドオン開発などでツール機能の不足分を補うか
- 業務特化されて既存システムとの連携も容易なツールを選ぶか
- 業務にフィットした柔軟な構築と幅広いシステム連携が可能なフレームワーク上のツールを選ぶか
という、およそ3通りの方法がある。
他システムとの連携やBPM機能で選ぶ
業務改善を重視する場合には、既存システムとの連携がしやすいツールを選びたい。
あるツールでは、他のシステム(どのようなシステムでもよい)からのデータを画面から取得し、ワークフローツールの申請内容として申請書を自動作成して申請、承認のフローを実行できる「申請書自動起票オプション」を提供する。ワークフローが実行されている間は他システムの次の処理を止め、決裁が済み次第、実行を行う仕組みだ。これを利用すれば、あらゆるシステムに容易に申請から承認処理が組み込めることになる。
また、システム間連携を含むタスクの自動実行を行うBPMを統合する製品もある。図7のように、BPMのフローの中に人間系のワークフローを組み込んだり、人間系のワークフローの途中に自動処理タスクを挟み込んだりすることが容易だ。また、全体の進捗状況の可視化も可能になり、BAM(Business Activity Monitoring)も同時に実現可能だ。
SaaSやPaaSの利用も考えよう
多くのワークフローツールが、オンプレミス用のパッケージの機能と同等のクラウドサービスを提供するようになり、ユーザー当たり月額500円以下で利用できるSaaSやPaaSも増えた。資産を増やさず初期投資を抑える目的にかなう他、バージョンアップや機能追加が自動的に行えて常に最新機能を利用できる点で利用価値が高い。
また、連携する既存システムがクラウド上にある場合、ワークフローツールだけをオンプレミス構築するのは非合理でもあるので、利用ケースが増加中だ。
ただし、利用年数がかさむほど、累計コストは増加し、およそ5年でオンプレミス構築の方が低コストになる場合が多い。またオンプレミス構築用のパッケージではユーザー単位課金の他、CPU単位課金、同時接続数課金などのライセンス体系が選べることもあり、よりコスト最適な運用ができる可能性があることも、考慮に入れておきたい。
コラム:ワークフローの承認ルートには抜け穴が必要?
ワークフローが定義されたら、その枠を外れた業務はできなくなる。業務ルールの順守で統制がとれる一方、突発的な事象が起きたとき、承認者の不在で迅速な対応ができなくなることもある。複数の承認者を設定するなど、柔軟に運用できる設計をしておく「抜け穴」づくりを、悪用されないように作っておくとよい。
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