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乾電池で10年駆動、日本発の無線規格「Wi-SUN」とは?(3/4 ページ)

地上アナログ放送の停波で空いた920MHz帯を利用する日本発の無線「Wi-SUN」。乾電池で10年間駆動も夢じゃない、驚きの規格を解説する。

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HEMSの標準プロトコル「ECHONET Lite」の物理層を担当

 Wi-SUNの特長を利用して、家庭内での電力消費の適正化(省エネ)を図るためのエネルギー管理システム「HEMS」に適用する動きが、特に日本で加速した。経済産業省が推奨するHEMSの標準通信プロトコルがISO/IECで国際標準化された「ECHONET Lite」だ。

 これは図2のようにレイヤー5から7の部分で規定されるアプリケーションで、その下位のレイヤー1から4をWi-SUNのプロファイルとして規定し適用することで、920MHz帯無線(IEEE 802.15.4g)を利用した機能が可能である。ECHONET Liteのための下位レイヤーは別の技術を選ぶことも可能で、候補としてはZigBee規格やPLC(電力線通信)などがある。

 Wi-SUN規格は、既に2×4センチ程度のサイズの無線モジュールチップが開発されるなど、無線機の普及も急速に進んだ。2013年にはECHONET Lite用Wi-SUNプロファイルを実装した無線機をNICTが開発、実証実験を行い、その結果を受けて東京電力が同Wi-SUNプロファイルをスマートメーター用の無線方式として採用することになった。スマートメーターとHEMSのイメージを図3に示す。

スマートメーターとHEMS、「Bルート」とHANのイメージ
図3 スマートメーターとHEMS、「Bルート」とHANのイメージ(出典:NICT)

 Wi-SUNの採用が決まったのは図の「Bルート」と呼ばれるHEMSコントローラーとスマートメーターを結ぶ無線通信だ。東京電力は管内全域に当たる約2700万世帯に2020年までにスマートメーターを整備する予定だが、他の電力9社もBルートにWi-SUNを利用することに合意しており、これから急ピッチで普及が始まりそうだ。

 その動きにさらに拍車を掛けるように、2015年1月に図3の「HAN」(Home Area Network)部分、つまりHEMSコントローラーと各家電間の区間のネットワークについてのWi-SUNプロファイルが策定され、同月にNICTがそのプロファイルに準拠した無線機を開発、世界初の実証実験を行い、動作確認に成功した。図4にHAN用のWi-SUNプロファイルを示す。Bルート用のプロファイルに若干の変更がされた。

HAN用のWi-SUNプロファイル
図4 HAN用のWi-SUNプロファイル(出典:NICT)

 Bルートの場合とは違い、1つのHEMSコントローラーに対して2台以上の家電が接続する1対多通信となることや、またコントローラーと家電間の通信状況が劣悪で無線の中継が必要になる状況への対応が図られた。

 この実証の成功により、家庭およびオフィスなどのエネルギー利用の正確な計測のための前提条件がそろったことになり、対応する家電とコントローラー、スマートメーターがあればすぐにでもWi-SUNアライアンス認証規格に準拠する無線を利用したHEMS実現が可能な環境になったわけだ。

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