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タンパク質でデジタル信号を処理する「タンパク質光スイッチ」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)
遠赤色光を利用して光変換と蛍発生を行うタンパク質を応用し、研究が進む「タンパク質光スイッチ」の全貌を解説する。
波長が長い遠赤色光に反応するタンパク質を新発見
上のような光スイッチングを行うタンパク質は、生物が太古から持っているものだ。例えば、最初に二酸化炭素を吸収しつつ酸素を生成(光合成)したシアノバクテリアは、体内にシアノバクテリオクロムという光センサーを持ち、光に向かって移動したり、細胞を光に依存して凝集させたりして、光から生きるためのエネルギーを効率よく獲得する。身近な植物の光合成も、似たような光感受性と光エネルギー利用の仕組みが備わっているからこそできるわけだ。
シアノバクテリアに関する研究は世界で盛んに進められ、青・緑色光センサー、赤・青色光センサー、赤・緑色光センサーなどの幅広い波長の光を感知するシアノバクテリオクロムというタンパク質が発見されている。だが、それよりも長波長の光を検知するものが見つかっていなかった。
2015年1月、静岡大学の成川 礼講師らの研究グループが、世界で初めて遠赤色光を吸収するシアノバクテリオクロムを発見し、光スイッチングに新たな展開をもたらした。そのタンパク質は、696ナノメートルの遠赤色光を吸収するタイプと、622ナノメートルの橙色光を吸収するタイプとの間で可逆的な光スイッチングを行う。
図2左に示すように、遠赤色光を照射すると橙色吸収タイプに変わり、橙色光を照射すると元の遠赤色光吸収タイプに変わる。さらに、遠赤色光を照射すると、ピークが730ナノメートルの長波長の明るい光(蛍光)を発し、光スイッチングとともに蛍光が減少するという特性をもつことも同時に分かった。
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