地下街でも居場所が分かる「地磁気データ屋内測位」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(1/4 ページ)
GPS電波が届かない地下街や建物内でも位置が高精度で分かる「地磁気データ屋内測位」技術が登場した。おもてなしのキラーアプリになるか。
今回のテーマは、GPS電波が届かない地下街や建物内でもモバイル端末で自分の位置が高精度で分かる「地磁気データ屋内測位」技術だ。測位用の機器新設が不要なので、将来の広い応用が期待できる。
「地磁気データ屋内測位」技術とは?
地磁気データ屋内測位は、モバイル端末に搭載されたセンサーと専用アプリにより、場所によって変化する地磁気データを計測し、屋内地図と地磁気データを管理するサーバのデータベースと照合して、正確な現在位置計測や移動履歴記録を実現する技術だ。2014年末から2015年1月にかけて、野村総合研究所(NRI)が三菱地所の協力のもと、東京の丸の内地域内のビル内商業フロアの一部と地下で実証実験を行い、誤差2メートル程度という高精度なリアルタイム測位と測位ログからの人の動き(動線)の可視化に成功した。
図1 東京・丸の内エリアでの地磁気屋内測位の実証実験の様子。(上)スマートフォンによるマップナビゲーション(左下)対象エリアを実際に歩いた動線(実際の歩行経路=青線)(右下)測位ログを可視化した動線(地磁気測位データをプロットした経路=緑線)(出典:NRI)
測位技術として誰でも知っているのがGPS。GPSの組み込みが前提のカーナビはもちろんのこと、GPS搭載スマートフォンで歩きながら地図ナビゲーションを利用する人も多いだろう。
そして、便利さと同時に測位精度はかなりアバウトなこともご存じのはず。自動車での利用では十分でも、込み入った路地を歩行中には最短行程をガイドしてくれず、かえって遠回りすることもある。
GPSの誤差は民生用では少なくとも10メートルは覚悟しなくてはならず、携帯基地局やWi-Fiアクセスポイント設置位置情報を利用して補正する方法も、よほど条件が揃わないと精度が上がらない。
また、歩行中の測位は自動車の測位よりもずっと難しい。歩く速度は車ほど一定しておらず、横を向いたり後ろを向いたり、時にはUターンしてみたりと行動パターンが複雑で、端末を保持する位置もポケットの中から胸の前、手を下げて逆さにしたり、カバンに入っていたりとさまざまだ。
しかも必要なマップ情報は、店舗の入口やトイレの場所はどこかといった、より詳細なものが求められる。地下のショッピングモールなどでは曲がり角の位置が少しずれてもガイドにならないだろう。
一方、スマートデバイスユーザーは増える一方で、GPSやWi-Fi位置情報などの他の新しい屋内測位技術が強く求められる。GPS電波が届かないところでの測位、よりきめ細かい測位には、これまで次のような技術が提案、検討され、一部が実用化した。
Wi-Fi測位
複数の無線LANアクセスポイントからの電波強度や到達時間から位置を測定。10〜100メートル程度の誤差がある。
携帯電話基地局測位
携帯電話基地局からの所在確認信号に対する応答の方角と遅延時間から測位する。Wi-Fi測位よりも不正確な場合がある。
音波測位
等間隔に備えられた指向性の強い超音波発信機(スピーカー)からの信号を端末のマイクが受信して測位する。
Bluetooth測位
Bluetoothを使った発信装置(ビーコン)からの電波を使い、位置測位を行う。iBeaconを使った位置測位が実用段階にある。iBeaconの場合は、発信装置周辺のエリアに端末が進入したときにスマートデバイスの関連アプリが自動起動し、例えば近くの店舗のクーポン情報やセール情報を表示するようなO2Oマーケティングへの活用が可能だ。マップによるナビゲーションとは少し異なる利用目的で、発信装置周辺の狭いエリア内(2〜50メートル)でのピンポイントでの利用に向く。
可視光測位
LEDなどの照明装置を人間が感じられない早さで点滅させることで信号を送り、測位する。
カメラ画像測位
カメラの撮像と、あらかじめデータベース化しておいた周囲の画像情報とをマッチング処理して測位する。奥行きセンサーと組み合わせ、3D空間情報化して測位精度を高める研究も進む。
気圧測位
気圧センサーから検知できる高低差の情報を使う。特定ルートの高低差をあらかじめデータベース化することで、マッチング処理して測位する。
PDR(歩行者自律航法)
加速度、ジャイロ、地磁気などのセンサーを使い、移動の方向と速度を推計して測位する。他の方法で測位開始ポイントを決め、そこからの相対的な移動方向や距離を求める。
IMES(Indoor MEssaging System)
GPS同等の信号を発信する専用機器からの信号を基に屋内の測位を行う。もともとは準天頂衛星システムの枠積みから発案され、検討が進められる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.