IPネットワークではもう限界、「情報指向ネットワーク」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)
将来500億デバイスを超えるIoT時代に備えた新たなネットワーク体系「情報指向ネットワーク」の本質とは。詳細を徹底解説する。
トラフィック増加に対応できる「情報指向ネットワーク」の仕組みとは?
情報指向ネットワークは、従来のIPネットワークとは異なる考え方をとる。基本は、情報に対して「名前=データID」を付与し、従来のIPネットワークのようにデータのありかを示すIPアドレスを使うのではなく、データそのものを指すデータIDだけで欲しい情報にたどり着けるようにすることだ。そのための主な方法として、図1に示す2つのタイプが考えられている。
左の「名前ルーティング型」(CCNが代表例)は、中継ノードがデータIDへの「次のホップ」だけを経路情報として保持する方法だ。例えば、図左のHost 1にある「a/b1/c1」と名付けられたデータへの直接経路は中継ノードであるNode 1112が知っている。その上位にあるNode 111は、a/b1/c1にたどり着くにはNode 1112にリクエストを渡せばよいことだけを知っている。
各中継ノードはルートノードも含めて同じように経路情報を保持し、コンテンツのコピー(キャッシング)も行える。端末は映像などの大きなデータであっても大本のデータを持つホストからではなく、途中の中継ノードからデータをもらえるのでトラフィック量が抑えられる。
もう1つの「名前解決型」(NetInfが代表例)は、名前ルーティング型と同様の方法にプラスして、IPネットワークの場合と同様に、経路情報を集約して名前解決用のサービスを提供するDNS代わりのノードを設ける方法だ。
図ではルートノードがそれを担当しているが、下位の中継ノードが分担してもよい。コンテンツのコピー(キャッシング)は中継ノードが行って、要求した端末(複数の場合も)に送信する。あるいは途中でコピーせずに要求があり次第にコンテンツを保持するサーバからユニキャストで送信する仕組みをとる。
情報指向ネットワークの利点は?
少々複雑だが、いずれの方式もデータに名前で直接アクセスできることが最大のポイントだ。また、中継ノードなどにコンテンツをキャッシュするので、ソースのありかにまでアクセスせず、途中のノードから取ってこられるため遅延が起きにくくなる。さらにコンテンツは複数の中継ノードが保持することになるので冗長化により安全性が向上する。
これら特徴により、端末やサーバが移動してもキャッシュコンテンツや経路情報は近傍の中継ノードを利用できるため、移動性が高まる。現在は通信経路上の暗号化などで確保するセキュリティだが、データそのものに署名を付けてデータにセキュリティ機能を持たせられることもIPネットワークとは異なる重要な利点だ。加えて、パブリッシュサブスクライブ型の通信のような1対多通信や多対多通信、あるいは時として情報発信側と受信側が入れ替わるような通信にも対応できる。
ただし課題もある。「名前ルーティング型」はデータ数が膨大な量にのぼる場合、中継ノードが保持する経路情報がどんどん増える。IoTでは中継ノードも多量に必要なため低コストである必要があり、機能性や性能面で貧弱なデバイスでは荷が重くなってしまう。また、端末やサーバが広範囲に移動した場合に、送信元の周囲の中継ノードで経路情報の更新が頻繁に行われるため、中継ノードの負荷が高くなってしまうのが課題だ。
一方「名前解決型」では、端末やサーバの移動や通信の開始、データの変更などの都度、名前解決ノードの情報を更新する必要があるのが問題だ。個々の中継ノードの負荷は軽減してもルートノードや名前解決ノードの負荷は高まり、全体としての負荷軽減は難しい。
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