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水や電力の需要予測、災害や犯罪対策など“社会インフラ”IoTの使い方IT導入完全ガイド(1/3 ページ)

土砂災害から電力供給、犯罪予測まで現状分析と未来予測で社会インフラ化する「IoT」のユースケースを紹介する。「寝返り」のデータからは何が分かる?

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 IoTで日本が世界をリードできる可能性が高いのが社会インフラ領域だ。デバイスをはじめとする要素技術に優位性があるばかりでなく、防災対策や省エネルギー対策、交通システムなど、政策として世界でも先進的な取り組みが進んでいる分野が幾つもある。これらの効果が具体的に出て来れば、やがては日本のIoTベースのインフラが世界に輸出できる時代になるかもしれない。まずは社会インフラ領域でのIoTのユースケースをみてみよう。

防災、気象情報、交通管制では世界トップレベルにある日本

 社会インフラ領域で日本がアドバンテージを持っているのは防災や気象情報のインフラ、ITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)に代表される道路交通管制システムや鉄道システム、BEMSやHEMSの進展に見られるエネルギー最適利用技術などだ。GPS(全地球測位システム)とGIS(地理情報システム)を組み合わせて活用する「G空間」技術や、道路や橋、トンネルなどの保守情報とトラブルの予兆検知技術などにも一定の強みはある。上下水道の配管管理や遠隔制御の一部技術も重要だ。

 IoTが業界や地域を超えて発展すると、こうした優位性ある技術が結び付き、情報連携により単独では無理な利便性向上や的確な予測に基づくトラブル予防対策や避難などの防災対策、機器の自動制御による危険回避など、さまざまな利点が生まれる。社会インフラが高いレベルで合理化されれば、その技術はゆくゆく世界へと輸出できる可能性がある。本稿では社会インフラに関連するIoTユースケースについて具体的イメージを紹介しよう。

未来を予測するソリューション

 日本が世界に誇る気象情報の収集、管理、分析技術や災害予測、防災対策技術などを利用して、幾つものユースケースが考えられている。その中でも蓄積された過去のデータと現在のデータを突き合わせて分析して未来を予測する、高度なビッグデータ解析を利用したソリューションは、防災やライフライン確保などに重要な働きを期待されており、安全・安心な社会を低コストに実現する鍵とみなされている。

水需要予測

 気象情報と過去の実績情報の十分な蓄積をベースに、水の需要予測を高精度に行う実証実験が行われており、ソリューションとして提供される予定になっている。この実験では、浄水場、送水場、配水池、配水網のそれぞれの水圧や流量、水質などの情報をセンターに集め、その状況と気象情報・実績情報を照合して分析する異種混合学習技術と呼ばれるベンダー独自のアナリティクス技術が応用されているとのことだ。正確な需要予測ができることにより、無駄な造水を行わずにすみ、電力コストを適正化しつつ、水資源の有効活用を可能にすることが見込める(図1)。

水需要予測ソリューション
図1 水需要予測ソリューション(出典:NEC)

土砂災害検知、予測

 河川や傾斜地のセンサーからのデータを分析し、災害の起こりそうな場所や時期を予測する防災ソリューションも提供されている。図2は、土中の水分量をセンサーで計測し、情報をセンターに吸い上げて分析して斜面の崩落などの土砂災害の発生を検知、予測するシステム(実証実験)の例だ。

 危険度が水分量センサーの値だけで算出できる分析アルゴリズムが肝心なところだ。このアナリティクス技術があるために、従来土砂崩落の予測に必要とされたセンサー数を約3分の1に低減することができ、より広い範囲の斜面のモニタリングを行うことができるという。実験では災害の危険性ありと判定した10〜40分後に斜面崩壊が発生したといい、危険の通報や避難などの対策をとる一定の余裕が期待できるようだ。

土砂災害検知、予測ソリューション
図2 土砂災害検知、予測ソリューション(出典:NEC)

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