マルチデバイス時代に向けたIT資産管理の勘所:すご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)
スマートデバイスが普及する中、標的型攻撃対策などIT資産管理の役割や形態も大きく変化している。実態を徹底解説。
システム形態から見たIT資産管理の今後
ここまで、IT端末の多様化とそれに伴うIT資産管理が担うべき役割の拡大について見てきた。続いて、システム形態などから見たIT資産管理の今後について見ていくことにする。以下のグラフは年商500億円未満の企業に対して、「IT端末の管理/運用を担うシステムに関する今後の方針」を尋ねた結果である。
グラフ中の選択肢は大きく以下の3つのグループに分けられる。
グループ1:IT資産管理システムの設置形態に関する項目
IT資産管理を担うシステム自体を社内に設置するのか、社外に預けるのかについての項目である。具体的な選択肢は以下の3つとなる。
- 現在は自社内設置であり、今後も自社内設置を継続する
- 現在は自社内設置だが、今後はクラウドへと移行する
- クラウドへ移行済みであり、今後もクラウドを継続する
グループ2:IT資産管理と他の分野との統合に関する項目
IT端末の管理、運用を担うシステムとしてはIT資産管理の他に「セキュリティ対策ツール」や「バックアップツール」も存在する。こうした他のシステムとIT資産管理を統合するか、それとも従来と同様に別々に導入するのかについての項目である。具体的な選択肢は以下の2つとなる。
- 分野ごとに複数システムを導入する状態を継続する
- 複数の分野を担う統合的なシステムへと移行する
グループ3:IT資産管理の管理対象に関する項目
以前から存在するPCと新たに導入したスマートデバイス(スマートフォンやタブレット)を別々のシステムで管理するのか、それとも双方をカバーしたシステムを導入するのかについての項目である。具体的な選択肢は以下の2つとなる。
- PC向けをスマートデバイスにも対応させる
- スマートデバイス向けとPC向けを分ける
各選択肢の回答結果は「今後スマートデバイスの比率を増やすと回答した企業」(以下では「IT端末多様化企業」と表記)と「今後PCの比率を増やすと回答した企業」(以下では「IT端末現状維持企業」と表記)に分けて集計してある。つまり、多種多様なIT端末の活用に積極的な企業とそうでない企業を比べたときに、IT資産管理システムに関する今後の方針がどのように違ってくるのかを示したデータということになる。
グループ1の結果を見ると、「IT端末多様化企業」ではクラウドへの移行が多く、「IT端末現状維持企業」では自社内設置が多くなっていることが分かる。スマートデバイスの事例を見ると、社外での活用例が少なくない。
社外で利用されるIT端末を遠隔で管理しようとしたとき、IT資産管理システムを自ら管理、運用するのは容易ではない。IT資産管理システム自体や社外と社内を結ぶネットワークのセキュリティも確保する必要がある。IT資産管理システムをクラウドに移行すれば、それらを専門の業者に任せることができる。このようにIT端末の多様化が進むことにより、IT資産管理システムの設置形態がクラウドへと移行していく可能性がある。
一方、グループ2については「IT端末多様化企業」と「IT端末現状維持企業」の間で顕著な差は見られない。先に述べたように、IT資産管理においてもセキュリティ対策の要素が必要となっており、実際に多くのIT資産管理ツールはアプリケーションの導入、実行の禁止などといったセキュリティ関連の機能を既に備えている。
グループ2の結果を踏まえると、「今後、さらにセキュリティ対策ツールやバックアップツールとの統合を進めるべきか」については、IT端末の多様化とは切り離して検討していくことが無難と考えられる。しかし、「PCのリース期間が切れたタイミングで、社内の大半のPCをタブレットPCに刷新する」といった大きな変化に際しては、IT資産管理ツールだけでなくセキュリティ対策ツールやバックアップツールも含めた全体を広い視点で見直してみるのも良いだろう。
グループ3については、「IT端末多様化企業」において「スマートデバイス向けとPC向けを分ける」という項目の回答割合がやや低くなっている。「IT端末多様化企業」ではPCと比べたときのスマートデバイス比率が高くなってくる。そのため、PCとスマートデバイスを別々に管理していたのでは、同じ規模のIT資産管理システムを二重に持つことになりかねない。
従って、PCとスマートデバイスの双方をカバーできるIT資産管理システムに対するニーズが相対的に高くなると考えられる。ここで注意すべきなのは、IT資産管理システムの拡張性、将来性だ。先に述べたようにIT端末の多様化はスマートフォンやタブレットからウェアラブル端末へと拡大しつつある。「スマートフォンは対応可能だが、スマートグラスは管理できない」となると、また別のIT資産管理システムを追加することになってしまう。IT資産管理システムを選定する際には「今後登場する新たなIT端末にも対応できる拡張性/将来性を備えているか」が重要な選定ポイントとなってくる。
このようにIT端末の多様化によって、IT資産管理の役割や形態は大きく変化しつつある。多種多様なIT端末を使いこなせるかどうかについては今後の企業業績にも大きく影響してくると予想される。その際にさまざまなIT端末を安全かつ効率的に活用するためにも、「IT資産管理とは何か」をもう一度見つめ直しておくことが大切だ。本稿がその一助となれば幸いである。
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