つまづくポイントはここにあった、デスクトップ仮想化「方式別」に見る導入運用のポイント:IT導入完全ガイド(1/4 ページ)
実はROIが高く業務活用に適しているデスクトップ仮想化。業務にあった方式を選択できればコスト高に陥るリスクも避けられる。
クライアント環境を変革するために有力な選択肢となるデスクトップ仮想化。その方式を選ぶ場合、どのようなポイントに注目すればよいだろうか。コストの側面と業務への適合の側面はもちろん、セキュリティと運用管理工数も重要な検討ポイントだ。特に仮想PC方式の場合は“コスト高”というイメージがつきまとうが、実際はどうなのか。
今回は、コスト、セキュリティ、運用管理に関連するポイントに注目し、失敗しない導入のための検討ポイントを紹介する。
業務にふさわしいデスクトップ仮想化方式を選ぶ
デスクトップ仮想化は高コストといわれることが多いが、それは少々乱暴な意見のようだ。クライアント仮想化製品導入企業のROIは平均300%以上、投資の回収期間は11.6カ月とするユーザー調査結果(IDC Japan 2013年公表。近々2015年調査結果も公表される)もある。投資額の3倍以上の効果があって、1年もたたないうちに投資コストが回収できるという技術はなかなかない。
企業個別の条件によってデスクトップ仮想化技術の選択も、システム規模も、投資額も異なるはずだが、業務やニーズ、IT戦略に沿って適正な導入を図れば、高い金額を支払っても十分に見返りがあると考えてよいだろう。ただし、どんな目的にも最善といえる技術は今のところない。技術の中身をよく知り、自社の現在の業務及びIT戦略に最適なものを選びとることが成功の条件になるだろう。
サーバOSの共同利用で済むならシンプルなSBC方式
まず、SBC(サーバデスクトップ共同利用)方式と仮想PC(VDI)方式のメリットや注意点を紹介しよう。
一般的なオフィス業務ではPCアプリケーションの種類が限られ、あまり追加や変更の必要もない。このような定型業務中心の職場には、サーバデスクトップ共同利用方式が最もシンプル、かつTCOに優れた選択になるだろう。また、受付窓口業務やコールセンターなどのように、シンクライアント端末を使いたい場合にもこの方式の効果が高い。主なメリットは次の通りだ。
SBC方式のメリット
- 圧倒的に高いユーザー集約率(サーバが低スペックでも多くのユーザーが同時利用可能。大規模導入の場合はサーバが複数台必要だが、仮想PC方式よりも台数を節約可能。なお1台の物理サーバで複数の仮想サーバを稼働させることも可能)
- デバイスまたはユーザーごとのサーバライセンス(Microsoft RDS CAL、Windows Server Remote Desktop Services Client Access License)が選べる(ユーザーごとのライセンスなら1ユーザー当たりの利用デバイスは無制限。仮想PC利用のためのライセンスよりも低額になる可能性あり)
- アプリケーション導入はサーバに対してのみ(ライセンスコストの抑制可能)
- セキュリティパッチ、バージョンアップ、アンチウイルス導入、運用もサーバに対してのみ(運用管理コストが軽減)
- クライアントOSは適宜選べる(スマートデバイスなど対応モジュールがインストールできるデバイスなら何でも可能)
- ユーザーによるアプリケーション導入ができないので統制が容易(セキュリティが標準化)
USBデバイスなど外部デバイスの利用制限が簡単(セキュリティ、コンプライアンス強化につながる)
要するにハードウェアコスト、ソフトウェアコスト、運用管理工数が、物理PC運用よりもはるかに軽くなる可能性がある。また後述する仮想PC方式よりもTCOはずっと低くなるケースが多いだろう。コストを重視する場合には最適な方式といえる。
一方、主な注意点と、起こり得るトラブルは次の通りだ。
SBC方式の注意ポイント
- ユーザーがアプリケーションを導入できず、性能も選べない(非カスタマイズ性)
- 従来使い慣れたアプリケーションが利用できない場合がある(アプリケーションの非互換性)
- サーバのリソース逼迫(ひっぱく)や障害が全ユーザーに影響する
- ローカルディスクの内容が全ユーザーに見える(情報漏えいの可能性がやや高まる)
- オンラインでなければ利用できない(ネットワーク必須)
- 画面サイズが小さいデバイスではデスクトップが利用しにくい
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