これが最前線の現場だ、ウェアラブルデバイス活用事例3選:IT導入完全ガイド(2/4 ページ)
業務用ウェアラブルデバイスの普及が始まっているが、具体的な運用シーンは一体どうだ? 日立、富士通、NTTデータの3社に聞いた最先端の活用例。
自由度の高いシステムでHMDを顧客の環境で生かす、富士通の事例
同じくHMDを使う富士通の場合の事例を見てみよう。同社の「ヘッドマウントディスプレイ」もまた点検、保守、組み立てといった現場が想定されている。それは日立のインフラシステム社と共通する「タフな現場」だろう。しかし、富士通の場合、HMDの耐久性スペックが群を抜いて高い。これは「手荒な扱い」「ぶつける」といった事態も踏まえて開発されているからだ。
スペックを見ると、連続使用時間が4時間になっている。これは「どんな使い方をしても」4時間使えるという数字。高負荷な利用でも4時間使えるのなら長いといえるのではないだろうか。
図4 Fujitsu HMD。業務用とはいえ見た目がゴツイ富士通の「ヘッドマウントディスプレイ」だが、この外観がむしろタフさを証明している。実際に装着すると見た目の印象よりも重くはない。このディスプレイにAR表示が可能だ。写真右は、腕に装着するウェアラブルキーボード(出典:富士通)
また、システムの作りこみが少ないのも特長だ。Bluetoothでスマートフォンやタブレットとの連携を行い、そのスマートフォンやタブレットがクラウドサーバに接続する仕組み。画面に表示されるコンテンツは、スマートフォン内の画像などで、スマートフォンからMiracastで送られてくる。さらにHMD自体はにAndroidを搭載しているので、クライアントアプリを作れば、HMD単独でアプリを使うことも可能だ。
図5 HMDのシステム構成イメージ。HMDとスマートフォンが接続し、スマートフォンの画像をHMDに表示するという仕組み(ただしスマートフォンがなくともクラウドサーバへの接続は可能)。スマートフォンやタブレットはAndroidだけでなく、Windowsでも対応可能なため、顧客が既に利用している環境に合わせやすい(出典:富士通)
現在、富士通の「ヘッドマウントディスプレイ」を試験的に導入している企業は国内外に数十社あり、日本、欧米で展開しつつある。主要外国語への対応も進み、東南アジアや南米に拠点がある企業も視野に入れているようだ。また、多言語への対応で世界中に拠点がある企業の緊急時の対策にもメリットがあると考えている。
例えば「地球の裏側」の現場で緊急事態が起きた場合、対応チームの到着までに飛行機で何時間もかかる。しかし現地の作業員がHMDを装着し「遠隔サポート」を受けられるのであれば、チームは現地へ行かなくても支援ができるというわけだ。
また、機能を見ていくとAR表示に対応しており、ARマーカーを貼る手間、コンテンツを作成する手間はあるものの、点検する現物をHMDで見ると作業ガイドや注意事項をAR表示することができる。富士通からはARソリューション「Interstage AR」も提供されているので、この機会にARの導入を検討してもよいだろう。
ARの良さは組み立ての製造ラインでも発揮される。例えば自動車であれば、1メーカーに多様な車種があり、1車種の製造工程だけで数百はあるという。オプションを加えれば1車種だけで覚えるべき工程が膨大なものになる。また、製造ラインでは異なる車種を扱うのも当たり前だという。となると当然作業員は工程を覚えることが難しく、スキルアップまで時間がかかる。そこでARを活用し、HMDに作業内容を表示するのだ。トレーニング効率も上がり、不良品の発生を抑制、歩留まりが改善する。
HMDにマニュアルを入れておくこともでき、その場合はHMD単独で使うことも可能だ。音声コマンドに対応しているためハンズフリーで操作も可能。作業をしながら「写真」と言えば撮影が行われ、マニュアルを表示している時は「拡大」や「縮小」と言えば表示サイズを変更できる。「○番起動」という具合にアプリ名や番号を言うことで、アプリを起動させることも可能だ。
一方で富士通の「ヘッドマウントディスプレイ」にはキーボードも用意されている。これはHMDにコンテンツを送るスマ―トフォンにBluetoothで接続し操作するのだが、点検時に数字を入力するためのデバイスとして用意されている。HMDに表示された画面にキーボードの数字が入力されていくのだ。もちろん正しくはスマ―トフォンに入力している様子をHMDに表示しているわけだが、スマートフォンやタブレットを介すことで実現した、自由度の高いシステムならではの使い方だろう。
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