今度こそ定着できる? 社内SNS導入でムダなメールを削減しよう:IT導入完全ガイド(2/2 ページ)
いろいろ導入しても、なかなかうまく定着しないのが社内コミュニケーションツールの厄介なところ。社内SNS、導入に成功した企業はどんなことをしているのか?
社内SNSならではの機能
ここまでの機能は一般向けSNSと変わらない点が少なくない。とはいえ、「社内SNS」としてビジネスでSNSを使うには追加で必要となる機能がある。昨今の社内SNSに採り入れられている機能や要件を見てみよう。
コンテンツを会社が保有できる
一般向けSNSだと書き込みは全て一般向けSNSのサーバに保存される。つまりコンテンツは全てサービス提供側が握ることになる。これが許容できるかどうかは十分考慮した方がいいだろう。「今どこですか?」「もうすぐ到着します」のようなやりとりならさておき、ビジネスの情報が含まれることを考えると企業の管理下にある方が望ましい。
昨今の社内SNSだと多くはオンプレミスでサーバを稼働するものではなく、クラウドサービスとして提供されるものが多い。万が一サービスが終了するとき、あるいは利用を停止するときに過去に書き込んだコンテンツがどうなるか、契約を確認しておいた方がいいだろう。例えばトークノートでは利用を停止すると新規の書き込みができなくなるものの、コンテンツはサーバに残るので閲覧だけなら可能だ。
異動や退職も加味したアカウント管理
プライベートで使うSNSをビジネスでも流用すると、私的な「つながり」やタイムラインをビジネス関係者とも共有することになる。かといってビジネスとプライベートでアカウントを使い分けるのは、手間が掛かる上、運用に失敗すると「誤爆(誤った投稿をしてしまうこと)」のリスクもある。そもそも「社内SNS」としてツールを切り分けて運用するならば、プライベートとの混用が起きにくくなる。
社内SNSであればユーザー登録は本人ではなく、企業側が社員全員のアカウントを一括して管理することになる。氏名表記や所属部署が人事情報と連動することも重要だ。部署メンバーに限定したコンテンツがあれば、部署異動とともにアクセス権も異動する必要があり、退職したユーザーにはコンテンツにはアクセスできないようにする必要もある。
企業規模が大きくなればアカウント管理の手間が増えるので、人事情報を持つシステムと連動できるかどうかも重要になる。セールスフォース・ドットコムが提供するChatterのように企業システムのIDでSSO(シングルサインオン)が可能なサービスもある。
ビジネス利用を想定したセキュリティ
一般向けSNSだとプライベートな交流、社内SNSだと業務上のオフィシャルなコミュニケーションとなるのでセキュリティも必然的に異なる。社内SNSだと企業で扱うデータを扱うため、サーバに保存されたデータやサーバとの通信の暗号化は必須となる。
アクセス権は企業の要件に合わせて設定できる方がいい。要件が細かくなると一般向けSNSでは不十分となるだろう。また社内SNS製品によっては利用できる端末やネットワークを限定してアクセスを許可するものもある。これは登録された端末のみ、あるいは社内ネットワークまたは許可されたネットワークからのみアクセスできるということだ。TopicRoomのようにスマートフォンではシンクライアントとして、端末にデータを残さないアプリもある。
スマートフォンなら紛失や盗難も起こり得る。そうした事態が起きた時に管理側でアカウントを一時的に停止できれば、不正ユーザーからのアクセスをブロックできる。企業の管理側がアカウントを制御できる機能「も社内SNSでは必要になる。
定着のコツは
企業内の情報共有やコミュニケーション円滑化は、メールから始まり、グループウェア、社内ブログ、社内ポータル、社内SNSなど名前を変え、姿を変え、延々と続いている課題だ。本稿では社内SNSを紹介してきたが、過去、さまざまなコミュニケーションツールを導入したものの、定着せずに頓挫した経験がある方ならば、素直には受け入れにくいかもしれない。
ただし前編で言及したように、現在注目を集める社内SNSが過去の失敗と大きく異なるのは、受け入れ側が全世代を通してSNS上のコミュニケーションの文脈を理解しているという点だ。グループウェアなどが注目されたころには、まだメールないし書面でのビジネスコミュニケーションを重視する世代や、そうした意見を尊重する組織が多かったこととは対照的な環境だ。SNSならではのコミュニケーションの文脈を受け入れる素地が出来上がっていることから、心理的抵抗は過去のグループウェアなどよりも低くなっていると考えられる。
一方で、誰でも気軽に利用できるだけに、利用者ごとの投稿頻度の違いが利用者離れに結び付くリスクがある。特定のユーザーが応答しにくい情報を高頻度で投稿している、一部の人が別のツールで情報を共有している、といった状況が生まれると「使いにくい」と判断されるケースがある。これは社内SNSの機能的な問題というよりも、導入時のルール作りの問題といえる。
導入を成功させるには、「どんな情報をSNSで共有するか」「SNSで共有すべきでない情報は何か」といったルールや導入の目的を事前に明らかにしておき、ルールの順守を徹底するよう、参加者を誘導することがポイントだ。ルールに準じて活用して見せる「旗振り役」を用意することで、利用者全体の投稿モチベーションを高めることに成功するケースもある。事前に場のムードを作る役割を設定しておくのも作戦として有効といえるだろう。
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