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大規模製品開発プロジェクトの脱Excel管理術とは?IT導入完全ガイド(3/3 ページ)

納期がタイト、関係組織が多数……。大規模な製品開発プロジェクトでは自部門の作業であってもExcel管理では間に合わない。

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プロジェクト管理ツールが、Excelによる日程管理の問題点を全て一掃する

 その際に有用となるのが、プロジェクト管理ツールだ。変更データの即時反映や他の行程への影響度合いのアラート機能といった、各部門マネジャーが管理する際に有効な機能を持っていることも少なくない。プロジェクト管理に特化したツールであるだけに、導入実績が多いほど、現場の声を取り込んだ機能強化が行われている可能性が高い。

 まずプロジェクト管理の基本となる日程の管理については、大日程から自部門の日程、さらには関連部署の日程までを1つの画面内で、多段のガントチャートで表示することが可能となっている。そしてプロジェクトマネジャーが大日程を変更したら、それと連動して各部門の日程も自動的に変更され、部門担当者にはアラートが通知されるようになっている。部門担当者は、自部門が関わるプロジェクトの進行状況や変更状況を確認し、それらとの整合性を取りながら自部門の日程調整を行うことが可能となる。情報の転記や二重管理も不要だ。

 自動車部品メーカーなど、組み立て加工系の製造業での導入実績を持つ日立ソリューションズ東日本のSynViz S2の場合、特に評判が良い機能が「シャドー」機能だという。

 機構設計、強度解析、制御ソフトウェア開発、ソフトウェア実装……のように多数の部門がプロジェクトに参加している場合、全体の日程や、関連部門のおおよその日程を参照したい場合がある。関わっている他のプロジェクトの関連日程を自部門の日程内で、一画面で参照できれば、周囲の部門の作業進行状況を確認しながら、調整できるようになるため、地味ながらも現場の評価が高い機能なのだという。

 この点、Excelで大日程を管理している場合は、計画に変更が発生すると、プロジェクトマネジャーは大日程用のExcelを修正する。しかし、そこから転記して各部門の日程を作成していると、変更点が分からなくなることがある。また、転機漏れが致命的なエラーになることも少なくないという。

 実際に、「ある部署で計画変更を把握したのが2カ月後で、その時にはもうスケジュール通りにプロジェクトを完遂させることが不可能になっていた」という場合も少なくないという。たった1つの転記漏れが、プロジェクト全体の遅れを招いてしまうのがExcelを利用したプロジェクト管理の問題点の1つといえるだろう。

図2 部門間の日程調整を支援するガントチャートの多段表示、シャドー機能
図2 部門間の日程調整を支援するガントチャートの多段表示、シャドー機能(出典:日立ソリューションズ東日本)

 専用ツールならではの機能も多くあり、例えば制約条件を定義できたり、GUI操作でスケジュール調整が可能であったりする。また、製造業でいえば、定期的に実施される「デザインレビュー(設計内容を複数の部門で評価する会議)」など、特定のアクティビティーパターンを事前に登録したり、新規プロジェクト作成時に幾つかのパターンからドラッグ&ドロップで配置したりできる。

図3 大日程単位で俯瞰的かつ一目で簡単に進捗を把握可能
図3 大日程単位で俯瞰的かつ一目で簡単に進捗を把握可能(出典:日立ソリューションズ東日本)

 参考までに、計画に変更があった場合には、その差分のみを報告してくれる機能もある。少し細かくなるが、この場合には計画変更履歴一覧画面からドリルダウンしていくことで、追加や変更のあった箇所を一目で確認することができ、さらにこの画面はスナップショットとして保存できるので、週次あるいは月次で進捗状況を確認する際の補足資料として利用することで、前回報告時からの変更点を簡単に把握することが可能となる。

 一方各部門の担当者も、自部門の実績を登録する際にはドラッグで簡単に行うことができ、また成果物を日程表とひも付けて管理することも可能となっている。

図4 成果物を日程表とひも付けて管理することも可能
図4 成果物を日程表とひも付けて管理することも可能(出典:日立ソリューションズ東日本)

 自動車部品メーカーのように製品開発に関わる関係者、関係組織が多いプロジェクトでは、システム連携の有無も重要なポイントだ。最近では、HTTP経由でデータを参照/更新できるWeb APIを介して、例えば受注管理システムと連携して「受注が入れば自動的に日程を組み立て、納期を計算する」といった仕組みを用意することもできる。

 ここまで“脱Excel”をキーワードに、ツール活用による効率的なプロジェクト管理の実現方法について紹介してきた。しかし実際にExcelからプロジェクト管理ツールの導入に踏み切る企業の最も大きな動機は、プロジェクト管理の効率化というよりも“納期厳守”のためだという。

 先に、ある部門が計画変更を把握したのが2カ月後で、その時にはもうスケジュール通りにプロジェクトを完遂させることが不可能になっていたという話を取り上げたが、Excelを使ったプロジェクト管理では、こうしたトラブルが発生する恐れは永遠に付いて回ることになる。それはいわば企業のコンプライアンスとしての問題であり、さらには顧客企業にも多大な機会損失を与えてしまうことにもなり兼ねない。より正確で迅速な情報管理を実現するという観点からも、プロジェクト管理ツールの活用は必要不可欠だ。

 今回は多数の部署や組織が連携して製品を作り上げる製造業におけるプロジェクト管理とその支援ツールを見てきた。大規模プロジェクトでは全体の進捗管理だけでなく部門やサブプロジェクト単位でさらに詳細なスケジュールやリソース調整を行う必要がある。モノの取引を伴う製造業では、人的なミスが発生したりデータ破損が発生したりした場合に、財務的にも大きなリスクにつながりかねないだけに、プロジェクト管理の標準化やシステム化は急務といえるだろう。

コラム:プロジェクト管理ツールの効果的な活用は運用次第

 今回紹介したプロジェクト管理ツールでは、プロジェクトマネジャーが大日程を変更したら各部門の日程も自動的に変更され、部門担当者にはアラートが通知されるようになっている。

 確かにツールの機能としては非常に有用なものだが、しかしこの仕組みがあるからといってプロジェクトマネジャーが一方的に大日程を変更し、各部門担当者はツールから通知されるアラートを確認してくれという姿勢では、プロジェクト全体のスムーズな運用もままならない。

 やはり事前にプロジェクトマネジャーは部門担当者と調整を行い、それを踏まえた上で大日程に変更を加え、ツールからのアラートはあくまでその確認用、というような決めごとを作っておく必要がある。

 また製造業の工場などでは、PCの操作にそれほど慣れていない担当者もいる。どんな場面でツールを使うのか、また実際にどんな操作をすればいいのかを、きちんと理解しておいてもらうことが肝要だ。

 どんなに使い勝手がよくて、便利な機能を提供してくれるプロジェクト管理ツールを導入しても、結局手を動かすのは人間だ。ツールと人をどうつなぐか。それが運用のルールである。ツールの導入時には、運用ルール作りも併せて考える必要がある。

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