色も材料も接合強度も設計できる3Dデータ仕様「FAV」って何?:5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)
複雑な内部構造まで記述できる新3Dデータフォーマット「FAV」が登場した。体積とピクセルを組み合わせて表現する。
今回のテーマは、3DプリンタやCAD、CAEでの利用が見込まれる新しい3Dデータの記述フォーマット「FAV(ファブ)」だ。現在普及する3Dデータの記述法では外形は記述できても複雑な内部構造を記述することができない。構造の中の一部の色、材質、接合強度などの属性も、構造データそのものに含むのは無理だ。新データフォーマットのFAVは、それらを可能にする。将来のものづくりを大きく変える可能性を秘める仕様を紹介しよう。
「FAV」とは何か
FAVは、3Dプリンタで出力する3Dデータを表面形状だけでなく、複雑な内部構造、色、材質、接続情報などの情報を含めて記述できるるオープンデータフォーマットだ。富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所の共同研究による成果で、2016年7月に仕様を公開した。
FAVはFAbricatable Voxelの略で、Voxel(ボクセル)は体積(volume)とピクセル(pixel)を合わせた造語だ。FAVの基本的なイメージは2次元画像を表現するピクセルを、3次元に拡張したものと考えれば良い。
図1に見るように、従来の3Dデータは表面形状をポリゴン(多角形、三角形)の集合(ポリゴンメッシュ)による近似で表すのに対して、FAVはまるで積み木のように、ボクセルの積み重ねで表す。ボクセルは、図では立方体で表現しているが、実際には形状は任意で、例えば球体であっても良い。
この表現の仕方は、3Dプリンタの出力を経験したことがある人なら簡単にイメージできるだろう。スライシングソフトのシミュレーション画面では図1とよく似た画像が見られる。しかし、FAVは現在3Dモデリングデータ形式として標準的に使われる「STL」などとは全く違う。
STLでは、表面形状を小さな三角形の各頂点と面法線ベクトルで記述する。部品製造などの場合にはそれだけの情報では足りないので、AMFや3MFと呼ばれるフォーマットが開発された。これらでは色や材料、テクスチャが記述可能だが、煩雑な中間処理を行うことが前提だ。どちらもポリゴンによる表現をベースとしており、材料の接合強度などは記述できず、複雑な内部構造の記述は前提としていない。
これに対しFAVは、図2に示すように、積み木細工のように大きさの違うボクセルを組み合わせることができ、どんなに複雑な内部構造でも、誰にでも分かりやすい方法で設計できる。また、ボクセルごとに色、材料、接合強度などが記述できるため、対応するプリンタがあればそのままデータを送るだけで出力できる。出力までの中間工程や後工程が要らず、モデルの再利用、ボクセルの編集などが簡単に行え、記述できる属性情報が多いため、プリント時間短縮やデータ処理などの工数削減が期待できる。
図2 FAV=ボクセルによる3次元形状の表現。各ボクセルに、色情報、材料情報を保持できる。近傍のボクセルとの接合強度なども保持できる(3Dプリンタによる造形物の異方性反映、将来の実現可能性)(出典:富士ゼロックス)
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