“走りながら考える”プロジェクト管理に必要な機能とは?:IT導入完全ガイド(1/3 ページ)
アイデアが競争力の源泉となる現代では、「走りながら考える」開発スタイルに対応したプロジェクト管理手法が求められる。アジリティ重視のプロジェクト管理は従来とどう違うのかをツール実装から見ていく。
要件が複雑化、多様化している現在、製品開発ではより効率的でガバナンスの効いたプロジェクト管理が求められるようになってきた。物理的なモノを作る場面だけでなく、ソフトウェア開発など“形のない製品”を生み出す場面でも同様だ。むしろソフトウェア実装のアイデアが市場競争力の源泉となる場合が少なくない現代では、「走りながら考える」開発スタイルに追従できるプロジェクト管理の手法が必要とされているともいえる。今回はこうした環境下でのプロジェクト管理について考える。
今はビジネスモデル構築よりも先に走り出さなければ間に合わない
企業内でのIT活用を考えたとき、以前は「ビジネスモデルが固まった後に必要とする機能をITで実装する」という手順が当たり前だった。ITがビジネスモデルの根幹に影響を与えることはなく、あくまでも業務支援などの目的であった。
この場合のプロジェクト管理はほとんどが静的なものであり、全体計画を立てれば、以降はステイタスだけを変えていけば運用できるものだった。ITで実現したい要件が最初から最後まで首尾一貫していたからだ。
しかし、情報技術の革新が進み、さまざまな業務やビジネスが顧客ニーズや世の中のITトレンドに合わせて随時要件が変わるのが当たり前になりつつある。計画はその都度、修正が求められるため、プロジェクトの計画も変更があることを前提とする必要がある。
ビジネス環境の変化に伴って、プロジェクト管理の在り方もまた変えていかなければならない時代になっている。
要件定義が難しく、不確実性も高いプロジェクトをどう管理していくか
状況に応じて随時計画を見直して変更していく必要がある開発プロジェクトの場合、従来のようにExcelシートなどを使った管理では手が回らなくなったり、適切なメンテナンスができなくなってしまうリスクがある。
もちろん、神業を持った専任のExcel職人的な管理担当者を置いて、随時変わっていくスケジュールやリソースの状況をきちんとアップデートしていくことができるのなら不可能ではないが、そのために人員を割いて運用を続けるのは決して効率の良い作業ではない。
ではどうすれば要件定義が難しく、不確実性も高いプロジェクトを管理していくことができるのか。
そのためにはまず、従来のようにトップダウン型で開発チームにプロジェクトを投げるようなプロジェクトの進め方を見直す必要がある。熟練のプロジェクトマネジャーでも判断が難しい要件が上がってきた時に、チーム(現場)の課題解決能力に任せる、という判断も必要だ。その場合には、きちんと権限を委譲した上で、開発に関わる判断を現場に任せ、マネジャーは進捗(しんちょく)状況のレポーティングを徹底させたり、都度の状況判断に徹したりする、という進め方を取り入れる必要がある。
開発チームには、人のアサインから予算の管理、場合によっては開発計画の立案自体も委譲する。成果の評価も開発メンバー個々ではなく、チーム単位だ。今まではプロジェクトマネジャーが開発項目を細分化して各メンバーにタスクを割り当て、メンバーは自分の担当分が終わればプロジェクトとの関わりも終わっていたが、新たな進め方においては、メンバーはチームの中での自分の担当分が終わったなら他のメンバーの支援に回るという動き方をすることになる。
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