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「HR Tech」で変わる採用業務、事例に学ぶメリットや主な機能を紹介

いま脚光を浴びつつある「HR Tech」。最もハートを込めて管理すべき人材管理・採用の部分を、ビッグデータやAIなどの最新技術をもって管理するHR Techが注目を集める背景、メリット、主な機能を紹介する。

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 少子高齢化などで生産年齢人口が減少するなか、人材価値は一層高くなっており、人員確保に悩んでいる企業も多い。そこでいま脚光を浴びつつあるのが、「HR Tech」(採用ソリューション)だ。最もハートを込めてマネジメントしなくてはならない人材・採用の部分を、ビッグデータやAIなどの最新技術をもって支援するHR Techが注目を集めている背景や、そのメリット、主な機能を紹介しよう。

成長の最大のポイントは「金」から「人」へ

 企業にとってビジネスを遂行する上で欠かせない基幹サービスとして位置付けられるのが、財務会計、販売管理、生産管理、人事・給与などだ。これらの中でも昨今その重要性が大きく高まっているのが人事領域である。

 その理由としてまず挙げられるのが、国や経済の成熟だ。ここ最近の世界の動向を見ていると、先進国に共通しているのが、“人の質”の差が企業の成長の差に大きく影響を与えている点である。企業にとっての三大資産である“ヒト・モノ・カネ”のうち、従来のように金が最大の力の源泉だった時代から、人材こそが企業の競争優位を左右する時代となってきているのである。

 加えて日本の場合、深刻な少子高齢化も企業の人事業務に大きな影響を与えつつある。少子高齢化により生産年齢人口が減少する一方で、人材需要はますます増加していることから、多くの企業では人材不足感が急速に高まっている。いま企業の間では、より激しい人材争奪戦が繰り広げられているのである。

人手不足
図1 この数年で人材需要が大幅に増加、人手不足感が急速に高まっている(出典:内閣府「平成27年度 年次経済財政報告」)

「リファラル採用」で企業も待ちから攻めの体制へ

 人材を企業の最大の資産とみなし、人を中心に企業の成長を考えるのが当たり前となったいま、人事分野のキーワードとして掲げられているのが「戦略人事」である。戦略人事とは、経営戦略と人材マネジメントを連携・連動させた企業経営を通して、競争力を高めていくという考え方だ。そこでは、経営資源の最たるものである「人」が、最高の価値を生み出せるよう、採用の段階から従業員のライフサイクル全般をマネジメントしていくことになる。

 ただし、戦略人事と言ったところで、そう簡単に実践できるものではないのも確かだ。そこで、まず採用の段階から変えようということで、多くの企業が新しい採用方法を模索し始めている。

 その代表例が、「リファラル採用」である。リファラル採用とは、従業員の知り合いを紹介するといった、人のつながりを軸とした採用方法で、欧米企業では以前より中途採用の主流となっている。

 かつてのように電話がコミュニケーションの中心だった時代には、1人の人間がアプローチできる人間は限られていたが、ソーシャルネットワークの普及で、人と人とが広くつながるようになった。そのため、「この仕事ならあの人が向いているかも」と思い起こしやすくなり、そこからの声がけのハードルも一気に低くなっているのだ。

 また、優秀な人にはすぐに声がかかるようになり、企業はただ待っていたのでは採用するのは難しくなる。そこで企業としても、従来のように求人媒体や転職エージェント頼みの“待ち”の採用だけでなく、積極的にアクションを起こして意中の人材を“引き抜く”という攻めの方法も取り入れるようになっている。

 グローバル企業である日本オラクルでも、中途採用者は、リファーラル採用での入社比率が約8割を占めるようになってきているという。1人当たりにかかっていた転職エージェントへのコストを考えれば、その費用対効果も大きい。また、リファラル採用の方が、従業員が「スキルだけでなく、社風も合いそうだ」と判断した候補者が来る可能性が高いため、入社後のギャップも少なく、離職率も低い傾向にあるという。

ビッグデータやAIで人事の仕事が変わる

 このように日本企業の間でも注目を集めるリファラル採用だが、低コストで優秀な人材を獲得できることを知ってはいても、具体的な方法が分からないという人事担当者も多い。また、ソーシャルネットワークを使った求人情報の拡散のプロセスが構築できないという声もある。

 さらに戦略人事までを見据えて、良い人材をどう採用し、どのように育て、そしてどうやって企業の継続的な成長につなげていくかを考えると、人事部門の既存の予算や人的リソース、ノウハウではとても対処できなくなるのは一目瞭然だろう。

 これらの課題を解決するものとして2016年に入って特に脚光を浴びているのが「HR Tech」である。HR Techとは、HR(Human Resource)×Technologyを意味する造語で、クラウドやモバイル、ビッグデータ解析、ソーシャル、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を駆使し、採用、育成、評価、配置などといった人事関連業務を行う手法を指す。

 多くの日本企業では、1人の従業員にまつわる情報は部署ごとに分散しており、採用時の面接官の評価や、OJTでどのような業務を経験したのか、どのような成果を上げてきたのかなど、その人の社内での歩みが一括して取り出せない状況にある。そうした従業員のライフサイクルに関わるデータを統合的に把握し、また可視化することで、次世代の幹部候補の育成にまでつなげていくというのがHR Techの神髄といえる。

 さらにもう一歩進めると、従業員のデータだけでなく、社外で活動している人々に関するデータもソーシャルネットワークなどから集め、ビッグデータとして蓄積するようになっていくことになる。例えば従業員のライフサイクルデータと社外のソーシャルネットワーク上の人々のデータとの相関関係を分析することで、「この人を採用すればこういった活躍をするだろう」ということまで予測可能になると期待されている。また、応募者の履歴書のデータと、現在社内で活躍している人材のさまざまなデータから類似性を見つけ出し、将来の活躍具合を予測することも可能だろう。

 ここでのキーワードは、ビッグデータとAIになる。さまざまな人材に関するデータを集めてビッグデータをつくり、それをAIが分析し続けることで、活躍する人、活躍しない人の属性を確立させていくのである。もちろん、活躍と一口に言っても、人によってその分野は異なってくるので、どの仕事でなら活躍できるのかも属性には含まれることになる。

 これまでの人事業務を大きく変える可能性を秘めたHR Techだが、既にそのコンセプトに基づいたソリューションも幾つか存在する。ここではHR Techの採用ソリューションの機能について、大まかな機能を紹介することとしよう。

 HR Techの採用ソリューションの役割を端的に言うと、「良い人材を市場から見つけ出し、採用するまでのプロセスを支援するソリューション」ということになる。その機能(ソリューション)は大きく以下の3つからなる。

ソーシング

 ソーシングは、自社への人材候補者の質と量の最大化を図るものだ。自社に応募してくるかもしれない潜在的な候補者にリーチする領域とも言い換えられる。例えば経理担当者を1人採用したい場合に、従業員用のソーシャルネットワークを通じて、営業、開発、生産などの部門に広く呼びかける。そうすると従業員の誰かが、他社で働く経理スキルの高い知り合いを思い起こして、一般のソーシャルネットワークから声をかける。このように、いかに候補者を増やし、かつ優れた候補者を集めてくるかに貢献するのがソーシングソリューションである。

従業員からのソーシャルネットワーク投稿を生かすソーシングソリューション
図2 従業員からのソーシャルネットワーク投稿を生かすソーシングソリューション(出典:日本オラクル)

リクルーティング

 リクルーティングは、選考・採用のプロセスの生産性を向上するものとなる。例えば、応募者が質問に答えると、システムが質問の重み付けに応じて自動的に点数を付け、自社に適合性が高い応募者は優先して次のステップに進ませるようにするといったことも可能だ。人数の限られた人事担当者が、大量の応募者をいかに効率的にさばいて、確実に優秀な人材を採用するか、そこを支援するのがリクルーティングソリューションだ。

オンボーディング

 オンボーディングは、採用した人材の早期戦力化をサポートするもので、最近特にニーズが高いソリューションとなる。内定を出せば採用の仕事は終わるわけではない。入社前に健康診断を受けてもらったり、役所で書類などを取得して来てもらったり、入社前に研修を受けてもらったりと、やることは多いのだ。

 このように内定してから入社するまでのオンボーディング・プロセスを自由に設定して管理可能なのがオンボーディングソリューションである。内定者にアカウントを発行し、システムにログインして進捗(しんちょく)を確認、必要書類を提出してもらい、eラーニングで研修を受けてもらう一方で、採用側も必要なプロセスに遅れや漏れがないかなどを確認することで、待望の新戦力が少しでも早く活躍できるよう促すのである。

 現在、HR Techの採用ソリューションのほとんどは、ソーシング、リクルーティング、オンボーディングそれぞれに特化したものとなっている。ただし、オラクルの「Oracle Talent Acquisition Cloud Solution」のように3つのステップを網羅したソリューションも存在する。

採用に効果があった国内事例

 既に国内でもHR Techの採用ソリューションを活用したリファーラル採用で効果を上げている企業が出てきているようだ。例えば、実名型グルメサービス「Retty」を展開するRettyでは、職種ごとに異なる採用フローが複雑で、各候補者の採用状況を管理するのに、わざわざ面接者が会議で共有する時間を設けていたという。同社はビズリーチの戦略人事クラウド「HRMOS 採用管理」を導入したことで、候補者の採用フローを可視化し、一元管理することに成功した。その結果、これまで情報共有に使っていた時間を、人事戦略を考えるなど本来採用担当者がすべき議論に費やせるようになったという。

図3 現状の採用選考状況や、サマリーが確認できる
図3 現状の採用選考状況や、サマリーが確認できる(出典:ビズリーチ)
図4 候補者のプロフィールや選考ステータスなども1画面で確認できる
図4 候補者のプロフィールや選考ステータスなども1画面で確認できる(出典:ビズリーチ)

 また、面接担当者は全ての候補者を同じ基準で見ている訳ではない。採用担当者Aは候補者を少し甘めに見て次の選考ステップに進めさせるが、採用担当者Bは厳しめに評価する……など採用担当者による差も発生していただろう。採用管理ソリューションではそうした採用担当者の評価傾向を可視化し、同じ基準に是正することもできる。採用管理ソリューションを活用することで、これまで人に頼ることによって発生していた「もしかしたら優秀な人材を逃していたかもしれない……」といった懸念の払拭(ふっしょく)につなげることができるようになるだろう。

図5 面接者ごとの評価実績レポートの例
図5 面接者ごとの評価実績レポートの例(出典:ビズリーチ)

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