クラウドを前提としたバックアップ&リストア計画、効率化の考え方:IT導入完全ガイド(1/2 ページ)
クラウドが当たり前になると、システムのバックアップは煩雑になりがちだ。どうすれば運用を楽に、効率的にできるだろうか?
ITが必要不可欠なインフラとなった現在、企業内には多くのサーバが乱立する状況が生まれている。そこでサーバを仮想化してリソースの集約を図るという取り組みが進んだが、一方で新たな問題も出てきた。データのバックアップだ。従来は物理マシンだけを対象にしていればよかったが、今では簡単に増減する仮想マシンまでを考慮する必要がある。
この状況は、特に専任のIT担当者を置くことが難しい中堅中小企業では、大きな課題となっているようだ。今回は、仮想環境を含むデータバックアップの運用プロセスを効率化するためのポイントについて、考えてみたい。
保存することに意義があるデータの扱い方
米ベリタステクノロジーズの調査レポート「Data Genomics Index 2016(日本語版、PDF)」によれば、実に41%のデータが過去3年間、更新されておらず、さらに12%は7年もの間、全く更新されていないという。
特に古い形式のOfficeファイルや所有者不明のデータが、ストレージ容量と管理負荷の増大につながっているといい、これらをアーカイブもしくは削除することで、ストレージコストは50%も削減できるという。
今企業ではビッグデータ活用への取り組みが進んでいるが、データの重要性は高まる一方だ。それに伴ってデータバックアップの重要性も増している。しかしその半面、企業内には使われていないデータが約4割も存在している。さらに、ファイル数が年平均で39%ずつ増加しているという調査結果もあり、不要なデータまでをバックアップ対象に含めてしまうと、運用コストは増大するばかりだ。
そこでバックアップツールベンダーでは、バックアップデータからメタ情報を取得し、バックアップデータの中に存在する文書データや画像データ、動画データがどれぐらいの容量かなどを可視化するソリューションを提供している。ユーザー企業自身でこうしたファイルタイプの調査を行うことは難しいが、外部企業の力を借りれは、自社の現状を見える化することも可能だ。
データバックアップの仕組みを構築する以前に、まずは不要なデータを洗い出し、削除もしくはアーカイブするところから始めることができれば理想的だ。
ビジネス視点から担保すべきシステムのサービスレベルを定義する
企業がデータバックアップを行う最大の理由が事業継続だ。仮に1秒停止したら1億円の損失が出るというようなミッションクリティカルなサーバがあったとき、障害発生後のリストアに1時間もかかってしまえば、その被害は甚大なものになる。
そこでデータバックアップの際に最初に考えるべきポイントは、バックアップ対象とするシステムのサービスレベルだ。まずこのシステムはデータが破損したときに、どれぐらい前の状態のデータまで戻ることができればいいのか、すなわちRPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)を設定する。これによってバックアップすべき頻度が見えてくる。1日1回でいいのか、1週間に1回でいいのか、といった要件である。
またデータが壊れてから、どれぐらいの時間で元の状態に戻れなければならないのか、も重要な視点だ。これがRTO(Recovery Time objective:目標復旧時間)で、1秒停止したら1億円の損失が出るようなサーバなら、一刻も速く復旧させなければならない。
ビジネスの視点からはRPO、RTO共に短時間であることに越したことはなく、一方で投下するコストは安いに越したことはない。しかし両者はトレードオフの関係だ。そこで最終的には、自社の活動が成り立つかどうかという観点から、対象システムのRPOとRTOを判断していく必要がある。1カ月前のデータしかなければ、経営が破綻するというのであれば、月次のバックアップでは意味がないし、リストアに1カ月かかっても意味がない。
中小規模の企業でも、自社データの重要性をきちんと理解しているところはIT予算を確保し、高機能なバックアップツールを導入しているという。“必要最低限、この状態をこれぐらいの時間内にリカバリーできなければ、自社が存在できなくなってしまう”という観点から、バックアップ対象とするシステムのRPO、RTOを定義し、サービスレベルを明確化しておくことが肝要だ。
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