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イーサネットを1Tbpsに増速する「帯域ダブラ技術」って何?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

普通のシングルコア、シングルモード光ファイバーで10倍の速度向上を実現する「帯域ダブラ」。高速化の最新トレンドを徹底解説する。

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 100Gbpsイーサネットも一般化したが、それを10倍高速にする基盤技術が開発された。しかもアレイファイバーやマルチモードの光ファイバーではなく、現在長距離伝送用に使われている普通のシングルコア、シングルモード光ファイバーで、10キロの伝送に成功したという。今回のテーマは、「帯域ダブラ」という技術だ。一体どんな技術なのか。

「帯域ダブラ技術」とは

 帯域ダブラ技術は、NTTが2016年9月に公表した高速光伝送の新技術だ。従来、光イーサネット規格の通信で使われるシンプルな強度変調、直接検波方式のまま、シングルコア、シングルモードの光ファイバーで現在の主流である100Gbpsイーサネットの10倍に当たる1Tbpsの通信速度を達成可能だ。

 現在のところ、実験系を利用して1波長250Gbpsで10キロのデータ伝送を実証した。同技術で将来的に4波長を多重できるため、250(Gbps)×4(波長多重)で1Tbpsの高速光通信が実現するとされる。

 光ファイバーによる高速通信技術は、光ファイバー自身の改良や変調方式の革新、波長多重技術の併用などにより、年々洗練されてきた。現在、最も高速化が期待されるのはデジタルコヒーレント光伝送技術だ。比較的長距離のキャリアネットワークを中心に既にシングルモードファイバー1本で10Tbps級(1波長100Gbpsで100波長程度)の大容量通信が実用化された。

 一方で、データセンターやLANなどの10〜100Gbps級短距離通信では、より小型、低消費電力、低コストで高密度に実装できることが望まれ、シンプルな強度変調、直接検波光伝送方式が用いられてきた。今回は、同じ強度変調、直接検波方式を用いて1Tbpsの速度が実現するというのだから驚きだ。

 その秘密は、電子回路にある。そもそも短距離用光イーサネット規格が採用する変調方式は、光の強さの変化を信号とする強度変調方式だ。これを利用するからこそ、光コンポーネントはレーザー光源が1つと受光装置が1つのペアで済み、デバイスもシンプルなものにできるわけだ。この方式は変更せずに、電子回路を新しい考え方で進化させたのが帯域ダブラ技術だ。

 イーサネットでの通信では、当然ながらデジタル情報をアナログである光に変換して送信する。高速化が進む中で複雑な波形出力が必要になり、まずはDSP(Digital Signal Processor)と呼ばれるLSIで送信信号を生成し、それをDAC(Digital Analog Converter)と呼ばれるICでアナログ信号に変換する段取りが取られるようになった。それをレーザー光源に導き、光として光ファイバーに送出するわけだ。

 ところが、ネックになるのがDACである。一般的にはDSPと一緒にCMOS基板上に作り込まれて1チップとなる。CMOSはデジタルデータの処理には強いが、アナログデータの処理には最適化されていない。このためCMOSのDACの出力帯域幅は30GHz程度に限られる。これが高速化の悩みになっていた。

 それなら、DACを多重化すれば良いではないかと考えたのがNTTの開発メンバーだ。30GHzで動作するDACを2つ並べれば合計60GHzになる。出てきた2系統の出力を、うまく1つにまとめて光コンポーネントに送れば良い。

ダブルDACからの出力をまとめるAMUXを開発

新規開発されたAMUXチップ
図1 新規開発されたAMUXチップ(出典:NTT)

 2系統の出力をうまくまとめるといっても一筋縄ではいかない。まずは、その速さで処理が可能なデバイスが必要だ。そこで開発されたのがAMUX(Analog Multiplexer、アナログ多重化器)チップだ。

 AMUXチップには、CMOSではなく化合物半導体が用いられた。CMOSのように複雑な論理回路を作り込むことはできないが、アナログ信号処理なら特性を生かしてCMOSよりもはるかに高速な処理ができる。このチップを用いて、30GHz動作のDACからの出力の2系統を、極めて短時間でスイッチしながら光コンポーネットへと60GHzで送ることに成功した。

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