成長鈍化は避けられないのか、2020年に向けてのIT投資トレンド:すご腕アナリスト市場予測(1/5 ページ)
マイナス成長が続くIT市場だが、2020年に向けての動向はいかに。企業のIT投資トレンドと今後5年先の動きをアナリストが概観する。
アナリストプロフィール
廣瀬弥生(Yayoi Hirose):IDC Japan ITスペンディング グループマネージャー
国内IT支出動向調査の責任者として、国内IT市場や第3のプラットフォーム市場全体の動向について製品別、企業規模別、産業分野別に分析する他、主要ベンダー製品別動向などの調査を担当。また、ユーザー企業におけるデジタルトランスフォーメーション戦略に関する分析も実施。IT分野における経営コンサルタント、国立大学や国の研究機関における研究者、総務省情報政策委員など情報通信分野に関する豊富な経験を有する。
マイナス成長が続くIT市場。2020年の東京オリンピック、パラリンピック開催に向けて投資が活発化しているようだが、現実はどうなのだろうか。産業別、製品別の投資トレンドは今後5年でどのように変わるだろうか。また、企業のデジタルトランスフォーメーションの実情と将来の見込みは?今回は、日本のIT投資の特徴と現在および今後5年間を見通した投資トレンドについてみていきたい。
国内IT投資の現状と2020年までのトレンド
IDCのIT投資調査によると、2015年の国内IT市場規模は14兆7638億円、前年比成長率で見るとマイナス2.3%という結果になった。これには前年のPC市場の更新需要における反動の他に、携帯電話基地局関連への設備投資などの抑制傾向が進んだ通信、メディア領域の市場が前年比8.9%減と縮小したことが大きく影響している。今後もこの領域では同じ傾向が続き、2020年に向かってさらに伸びが低下していくことが見込まれる。
一方、その成長鈍化を相殺して成長率を引き上げているのが、大型案件が継続する銀行とオムニチャネル推進に関連した投資が進む小売分野だ。これら分野は、2016年以降も堅調な成長率を維持すると予測している。ただし、不安定な中国経済や中東情勢など海外経済のリスクが懸念される中、これまでIT投資が堅調に推移してきた製造業分野で、投資の積極性が若干弱まると考えられ、全体としては低調な動きとなる。
こうした背景を踏まえ、2016年の国内IT市場規模は14兆7973億円、前年比成長率は0.24%と予測した。ただし市場全体としては2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けた投資がけん引し、2019年をピークにIT投資は堅調に伸びると考えられ、2015年〜2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は0.8%、2020年のIT市場規模は15兆4007億円と予測している。成長率のピークは2019年であり、その年は2.28%の成長が見込める。とはいえ、2020年には東京オリンピック開催年であるにもかかわらず前年比成長率はマイナス0.1%となりそうだ。
今後5年間のスパンで全体として大きな市場拡大の兆候は見られない。これには、消費者市場の伸びの鈍化傾向が止まらないことが大きな要因になっている。図1に見るように、民間企業の投資は2020年に向け、徐々に拡大するのだが、公共分野の投資は大きな動きがなく、一般消費者の投資は年々少しずつ縮小していくと予測される。
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