ビジネス効果を高めるマルチクラウド運用のツボ:IT導入完全ガイド(2/3 ページ)
IT部門がまとめて仕入れ、業務部門が必要に合わせて活用できるようなマルチクラウド運用は今後ますます拡大していく。より効果的な運用管理の在り方を考えてみる。
運用の省力化/自動化
運用管理の最終的な責任はIT部門が負うとしても、インスタンスの追加や削除などは業務部門に限定的に配分した権限の範囲内で自由に行えることが、ビジネススピードを高める秘訣(ひけつ)になる。しかし、業務部門にバックアップなどの運用技術を確実に習得してもらうことは容易ではない。
また、インスタンスの立ち上げに際しても細かな選択や設定をその都度していたのでは、オペレーションミスや不要なコスト増につながる可能性が高い。運用管理操作は極力シンプルにする必要がある。そこでマルチクラウド運用管理ツールの機能を使い、一部でも省力化/自動化しておくことが重要になる。
図1は、オンプレミスシステムや各種のクラウド上で稼働するサービスを統合的に管理する運用管理システムのアーキテクチャの一例だ。
オペレーションは人手で行うこともできれば、登録したジョブをスケジュールに基づいて制御する「ジョブ制御」の形で自動実行することもできる。汎用(はんよう)的なマルチクラウド運用管理サービスの機能としてはまだ成熟していないようだが、ジョブ制御が可能な運用管理製品を使えば実現可能だ。
例えば、オフラインでのバックアップが必要な場合には、まず監視を停止し、次にインスタンスを停止し、バックアッププログラムを実行し、終了したらインスタンスを起動して監視を再開するといった一連のオペレーションを行う必要があるが、マルチクラウド運用管理ツールを利用することで、これらの作業をユーザーが意識しなくともワンオペレーションで実現することが可能だ。
また、ユーザー自身がセルフサービスポータルを利用し、インスタンスの作成や削除などを目的に合わせて自由に、簡単に行えるようにすることも重要だ。この時、各種の業務に最適な仮想サーバの構成をあらかじめテンプレートとして用意し、「サービスカタログ」の形でポータル画面から選択可能にすることができる。
パッケージ化されたサービスを選択肢の中から選ぶだけなら間違いは起きにくい。また、業務部門やプロジェクトによって選べるサービスを限定することで、余計なオプションの利用などを避け、コスト適正化につなげられる。加えてIT部門によるコスト把握も容易になるうえ、セキュリティについてもサービスカタログに規定しておくことで簡単に標準化を実現できる。
まとめると、業務部門のセルフサービスと専門的オペレーションの自動化がどこまでできるかがマルチクラウド運用管理の1つの検討ポイントとなる。
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