事例で理解するワークフローツールの最新活用法:IT導入完全ガイド(3/3 ページ)
ツールの機能が洗練されたことに加えて、クラウド(SaaS)型ツールも使いやすくなり、より現場の業務に近い部分での活用が広がり始めているワークフローツール。導入事例を基に最新活用法について考えてみる。
PDFをベースとするドキュメントワークフローとは?
厳密にはワークフローツールという分類に当てはまらないかもしれないが、アドビが2015年から提供を始めた「Adobe Document Cloud」を活用したドキュメントワークフローソリューションでも企業のワークフローを改善できるかもしれない。
これは、PDFソリューションの「Adobe Acrobat DC」と、「Adobe Sign」と呼ばれる電子サイン(電子署名とは別物)を利用し、申請書や契約書に承認サインを施した上で、安全に保管できる仕組みだ。ワークフローツールと連係させることで書類を軸にしたワークフロー構築が可能になる。
申請から承認までの流れは次の通りだ。まず申請者が申請書類をPDF化し、Adobe Document Cloudにアップロードする。この時、承認者の「署名欄」のみ書き込み可能な状態のPDFが生成される。
承認者(または契約相手)には、書類へのリンクが記載されたメールが送信される。承認者はPCやスマートデバイスからリンクをクリックし、Webブラウザで内容を確認した上で署名欄に手書きでサインするか、キーボードでタイプするか、事前に登録してある画像(サインでもいいし、印影でもいい)を貼り込む。
最後に申請者に「署名がされたこと」を通知するメールが届く。また同時に、署名済みのPDFにはロックがかかり、改ざんや削除ができなくなる。申請者はサイン済みの書類の履歴やステータスをいつでも閲覧できる(自身と相手の双方に署名済みPDFのコピーも送られる)。
気になるのは「署名」だけで効力を発揮できるのかどうかだろう。アドビでは、Adobe Document Cloud上のタイムスタンプやアクセス時のIPアドレス、メールを開封した時間やメール内のリンクをクリックした時間などのログデータによって「署名をしたのが『確かに本人であること』が証明できること」で本人性の確認と非改ざん性の確保ができると説明する。もちろん、書類の種類によっては電子署名を付与することも可能だ。
多くのワークフローツールと違い、サインを求められた側はメールを受信し、書類を確認できるWebブラウザがあればよい。課金されるのはサインを求めた側だけなので、社外の人とのやりとりにも遠慮なく使えるという点でも独自性がある。国内での普及はこれからのソリューションではあるが、アドビでも日本の商習慣にマッチするように、国内データセンターの開設、印影などのイメージファイルのサポートなど導入支援体制を整えているところだ。
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