キーワードは「脱ファイルサーバ」、拡張以外のファイルサーバ見直しの選択肢を考える:IT導入完全ガイド(2/2 ページ)
データ量は増え続ける見込みなのに、いつまで既存ファイルサーバの拡張で耐えるつもり? いま、ファイルサーバ環境を見直すなら、拡張以外の選択肢も考えよう。
社内でファイルサーバを運用するリスクと負担を評価する
ではここで、社内でファイルサーバを運用する場合のリスクや負担について、より具体的に考えてみたい。
セキュリティ面のリスク
ファイルサーバを社内に置いて社内で管理するという方法は、一見するとセキュリティ面で優れていると思えるが、あながちそうともいえない。なぜならば、ファイルサーバに限らずオンプレミスなシステム全般に当てはまることだが、攻撃手法が高度化・複雑化している昨今では、一般的な情シス部門のスキルだけではセキュリティを十分に確保しにくくなっているからである。セキュリティ専門のスタッフを抱えることのできる大企業は別として、中小・中堅企業においては、プロが運用する外部のクラウドサービスなどに任せた方がむしろ安全、というのが一般的な見解となりつつある。
また、国内外に拠点を展開するような大企業では、大容量のデータを扱い、同じチームでコンテンツを共有することが多いというファイルサーバの性格上、拠点ごとにサーバを設置するケースが多い。これはつまり、本社のサーバ、支社のサーバ、そして個人のPCなど、拠点やエンドポイントごとに情報資産が分散しているということになり、どうしても管理が煩雑化して守ることが難しくなってくる。
さらに、拠点ごとにセキュリティポリシーを統一するのも難しくなるため、情報漏えいを防ぐためなどのリスクマネジメントが徹底し辛くなってくるのである。もう1つ、セキュリティとは少し離れるが、ユーザーにとっても、各拠点にファイルサーバが置かれている場合、拠点を越えた社内の情報共有には、時間や労力を必要とする可能性もある。
運用担当者に掛かる負荷
冒頭でも触れたように、ファイルサーバに保管されるデータ量がどこまでも増え続ける現状では、情シスはサーバやディスクの追加などの対応に貴重な労力が割かれてしまうことになる。最近では業界を問わずにITを活用したイノベーションが叫ばれているが、自社でのファイルサーバの運用は、こうした本来情シスに求められている役割を阻害する要因となってしまいかねない。またこれ以外にも、リース契約や機器の保守契約、バックアップ運用、OSのパッチ当て、さらには追加しようとした機器の販売終了による新機種の選定作業などといった対応も必要になり、管理するサーバの台数が増えれば増えるほど、運用管理にかかる負荷やコストは増大していくことになる。
運用を含めたファイルサーバのアウトソースを選択肢に
これまでに取り上げたようなオンプレミスでのファイルサーバの運用の課題を解決するために、ここは思い切ってシステムと運用のどちらも外部に任せるという選択肢が急浮上しつつある。その候補の筆頭となるのが、ファイルサーバとして利用できる各種のクラウドストレージサービスだ。
プロの運用スキルを低コストで調達する選択
DropboxやGoogleドライブ、Apple iCloud、Microsoft OneDriveといった人気のストレージサービスを、プライベートで使用している人はかなり多いはずだ。
しかし少し前までは、クラウドサービスを検討するに当たって企業が最も懸念したのがセキュリティだった。しかしクラウドサービスの世界が熟成された今では、大きく事情が異なってきている。先にも触れたように、企業での利用実態を踏まえて開発され、しっかりとした運用体制が整えられたクラウドサービスであれば、自社運用のシステムよりもむしろ高いセキュリティレベルを実現できるようになっているからだ。
このようなクラウドサービスでは、IT/ネットワークとファシリティのいずれについても徹底的なセキュリティ対策が施されたデータセンターでコンテンツが保護されており、その運用はプロの手で行われている。そのため、ユーザー企業は低いコストで最高レベルのセキュリティの実現が可能となっているのである。
例えば企業向けクラウドストレージサービスの代表ともいえるBoxの場合、コンテンツが一カ所に集約されるため企業にとっても守りやすく、ログによる管理性も高まる。各コンテンツへの権限についても、アクセス、プレビュー、編集、ダウンロード、共有といったそれぞれの事項に関して詳細な権限を設定してコンテンツを保護することが可能だ。加えて、セキュリティポリシーをクラウド上で自動化してしまうこともできるため、拠点にかかわらずセキュリティレベルを一定に保つことができるようになる。
また、TOKAIコミュニケーションズの「OneOffice クラウドファイルサーバ」も、企業向けに特化したサービスであり、サーバ統合による同一セキュリティポリシーの適用や、セキュリティが確保されたデータセンター利用によるセキュリティの向上を実現することができる。AD(Active Directory)連携やアクセスログによるデータへのアクセス情報管理、さらにはデータ書き込み時のウイルスチェック機能などによる適切な情報資産管理までを、低コストでプロに任せることが可能となるのだ。
「モバイル」や「ワークスタイル変革」が新しい働き方のキーワードとして取り沙汰される昨今では、その実現にクラウドストレージサービスをはじめとした各種ビジネス向けクラウドサービスの活用が欠かせないとみられている。オフィス外にあるモバイルデバイスからのアクセスや、取引先など社外の人間とのコラボレーションに、クラウドサービスはうってつけだからだ。
もちろん社内のファイルサーバを使うこともできなくはないが、セキュリティなどを踏まえるとシステム設計のハードルがかなり高くなるだろう。また情シスの運用負荷も高まるため、そもそもの課題解決を考えれば本末転倒にもなりかねない。
「社外とも柔軟にファイルを共有」はメールでは実現しない
社外の人間とビジネスコンテンツをやりとりする際に最もよく使われているのは電子メールだろう。電子メールは、誰もが使い慣れた情報伝達ツールであり、その添付機能によってファイルをやりとりするというのは自然なことかもしれない。しかし、メールのファイル添付による情報共有には、多くの問題があることを忘れてはならない。
1つの問題が、容量制限だ。リッチコンテンツ化が進み、業務で扱うファイル容量も大きくなっているものの、添付ファイルの最大容量を数MB程度に制限している企業は多い。
次にストレージの無駄という問題がある。送信者側のデバイスからメールで送ったファイルは、受信者側のメールサーバとデバイスの双方のストレージに蓄積されるのが一般的だ。これでは3つのファイルが重複して存在してしまうことになる。しかも、送信相手が複数となる場合には、全く同じファイルが送信先数分もサーバとPCに重複して存在してしまう。これではメールを削除しない限り、ストレージ容量がいくらあっても足りないだろう。
サーバだけでなく運用まで含めてファイルサーバを外に出すことのメリットはお分かりいただけたのではないか。そこで次回には、ファイルサーバとしての機能を備え、運用も委託できる代表的な企業向けクラウドストレージサービスを取り上げ、具体的な機能に迫ることにしたい。
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