日米間でファイル転送世界記録を樹立した「MMCFTP」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(1/5 ページ)
大陸間データ伝送で約150Gbpsの速度を実現し世界最高記録を樹立した。立役者となった新ファイル転送プロトコル「MMCFTP」とは?
今回のテーマは大陸間などの長距離データ転送の最速記録を打ち立てた新ファイル転送プロトコル「MMCFTP」(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)だ。国内の光ファイバー網も海底光ケーブルは100Gbpsまで高速化したが、帯域を全て使っても数千〜1万キロ超の距離で実質的にデータを転送できるのは最速で80Gbps止まりだった。
その最速記録を2016年に大きく塗り替えたのが「MMCFTP」だ。日米間で約150Gbpsの速度で1〜10TBという大容量データを安定して転送できることが実証された。TCPのマルチコネクションを利用するというこのプロトコル、一体どんなものなのか?
「MMCFTP」とは?
MMCFTPは、大陸間などの長距離データ転送のスピードを劇的に向上させる新しいファイル転送プロトコルだ。大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(以下、NII)が開発し、2016年12月に国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)と共同での日米間データ転送実験において約150Gbpsでの1〜10TB(実質転送容量)のデータ転送を安定的に行うことに成功した。
10TBといえばBlu-ray Disc400枚分だ。それが実測値で8分58秒で日米間で転送できた。これは1サーバと1サーバ間のデータ転送速度として従来の世界記録だった80Gbpsを大きく上回る快挙だ。
遠距離間で高速データ転送が必要となるシーンはビジネス上でも頻繁にあるが、典型的な例として物理研究で利用する加速器や核融合実験炉、各国の電波望遠鏡を利用した天体観測システムなどが出力する学術ビッグデータの国際共同利用が挙げられる。
2016年末の発表は11 月に開催された国際会議「The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis」(略称SC16)(米ソルトレイクシティ)でのデータ転送実験によるものだ。
同プロトコルを用いた実験はそれ以前にも行われており、2016年8月には国際熱核融合実験炉ITER(イーター)の建設サイト(フランス)から約1万キロ離れた青森県六ヶ所村の遠隔実験センターへの高速転送(7.9Gbps)が実証されている。
この時はITERの初期実験で想定される1 実験当たり1TBのデータを、繰り返し安定して送信した結果、最終的に50時間で105 TB(1日当たり50TB)の大量データ転送が可能なことが実証されている。大陸間級の長距離サイト間転送量としてこれも世界最大級だ。
このような学術研究用のデータは既存・新設の実験・観測設備から日々出力され、膨大な量が蓄積されている。そのデータを各国の研究機関などが利用しやすいようにするために、また実験・観測設備から地理的に離れた拠点でもリアルタイムデータ解析を行いやすくするために、長距離データ転送のさらなる高速化技術が切実に求められてきた。
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