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人材派遣に革命をもたらすヒトとロボットの「ハイブリッド派遣」(前編)

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANK

 人材派遣業として豊富な実績を持つキューアンドエーワークスでは、早期からRPAに取り組み、人材とRPAを組み合わせたハイブリッド派遣「RoboRoid RPA Solution」を提供している。人ならではの能力が発揮できる部分とRPAの能力が発揮できる部分を仕分け、その能力を組み合わせることによって、結果的に業務の効率化とコスト削減を目指すというものだ。特に同社は「育てる人材派遣」で培ったノウハウをもとに、日本の企業風土に合わせた独自のRPAを開発している。今回は、キューアンドエーワークスの代表取締役社長である池邉竜一氏にお話をうかがった。

キューアンドエーワークス(以下、QAW)は、人材派遣業を中核とするキューアンドエーの子会社として1999年に設立、「一生錆びない自分を手に入れる」ことを標榜し、エンジニア、テクニカルサポート、ヘルプデスク、オンサイトなどIT系のテクニカル領域の人材派遣に強いことが特徴だ。そのQAWだが、設立当初はテクニカル系とは毛色の違う2つのことに注力していたという。

そのひとつが「売れる営業マン」を採用する活動に明け暮れるのではなく、営業プロセスを分業化し、俗人的な一人の能力に頼らない「売れる仕組み」を人それぞれの得意分野の結集で作り出す人材派遣の提案だ。

企業では常に優秀な人材を探すことに苦労している。そこでQAWでは、営業活動に必要なプロセスをまるで中学校の英国算数理からなる5科目のように見立て仕分けた。それが「リストアップ」「アプローチ」「プレゼン」「クロージング」「フォロー」である。 池邉氏は、「営業といっても、科目に分けるとそれぞれ求められる能力に違いがあることがわかるはずです。

もちろん、これらすべてを難なくこなす人は「優秀な営業マン」なんでしょうが、これをそれぞれ科目ごとに適した能力を持つ人たちで分業化することにより、例えば、電話を通じて多くの企業にきっかけをつくるのが得意な人と人前で話すことが得意な人がそれぞれの強みを組み合わせることによって『売れる仕組み』が作れると考えました。人には得手、不得手があるもので、それぞれの得意分野を組み合わせ活かすことが出来るならば採用のハードルは下がり、多くの人が力を合わせて「売れる」ようになるのです」という。

もうひとつが就職氷河期に社会にでた若者を正社員化する紹介予定派遣の取組みだ。心理的採用ハードルの高い正社員を目指すことに囚われず、まずは派遣で働いてみて、企業側にその能力が理解されれば正社員として雇用される仕組みであり、QAWでは他社に先んじてこれを推進し、派遣での就業に留まっていた若者に、新たな就業機会のきっかけを提供。新しい雇用を創造してきた。

自ら問い学べる人材育成に情熱を注ぐその理由

少子高齢化は日本の最重要課題のひとつであるが、池邉氏は業務経験の豊かな労働人口の減少が大きな問題であると指摘する。「働き手が減るということは、経験者が減るということです。そこでQAWでは、未経験の若手人材を育てることを提案しています。『育てる人材派遣会社』ですね。そこで重視しているのが、『限られた時間の中で、自ら問いを学び、働くことでその答えを出す』すなわち『学問』できる人材の育成ですね。ちなみに『学習』とは習い学ぶと読めるように、記憶力を高めるための暗記を主軸とした勉強スタイルであり、例えばAIやロボットは機械学習といいますよね。QAWが目指している育成とは、人が『学習』の域を超えていくこと。正論と正論の狭間で問いに対する自らの見解を持ち、時には失敗からも学ぶ『学問』への挑戦なのです」(池邉氏)。

この方針をQAWでは「一生錆びない自分を手に入れる」と表現している。一生錆びないスキルとして、QAWではITパスポートの取得からはじまり、LPIC、CCNAなどの資格や、サーバ、データベース、さらにはサイバーセキュリティまでのスキルアップを学んでもらっている。また、資格と同時に重視しているのがコミュニケーションスキルだ。

「ITパスポートを取得したあたりから、コールセンターでテクニカルサポートを経験してもらいます。そこで学ぶのは伝達能力です。ただ伝えるだけでなく『伝え、達する』ことを学ぶことが重要です」。

QAWでは高いITスキルと伝達能力を持つ人材を育てるだけでなく、その後の派遣先においてもOJTに賛同する親会社のキューアンドエーとその株主であるNECネッツエスアイ、NTT東日本など豊富な受け皿がある。そこでスキルアップして別の会社で活躍できるカンパニーローテーションもできる。人材を育てるだけでなく、働きながら学べる先を豊富に用意していることが、QAWの強みであると池邉氏は強調した。

自社業務にロボット派遣を決めたQAW

QAWでは、人材を自ら育てることで人材不足の解を出した。しかし、それだけでは人材不足は解消できないと池邉氏はいう。

「新雇用創造という観点で、ロボット(RPA)に注目しました。人とロボットが協働することでイノベーションを起こせると考えています。人間には、学問とひらめき、共感力があります。それとロボットの驚異的な学習能力が組み合わさることで、企業の目的である利益の追求、コストの削減、売上の向上を実現可能になります。こうした人とロボットを『ハイブリッド派遣』できることがQAWの大きな強みなのです」(池邉氏)。

RPAの話を聞き、その可能性を強く感じた池邉氏は、まずはQAW で導入した。そこで、RPAの導入には3つのフェーズが必要であると感じたという。

まずはRPAについて、ある程度の理解があることが前提となるが、フェーズ1はロボ化(RPA化)できるかどうか業務の仕分けを行い、フェーズ2では、その業務がテレワークでできるものなのか、常駐しないとできないものなのかを見極めて、フェーズ3では、RPAをいつまでに導入するかという納期のスケジュールとKPIを立て、ロボの開発期間を費用として算出していく。 RPA化では、業務の流れすべてがRPAに置き換わるケースは少ない。特にRPAは定型業務いわゆるルーティンワークが得意なため、ひとつの業務に10の工程があるとすると、それをRPAと人が分担する形となる。

たとえば10の工程のうち6つの工程をRPAに置き換えられるとすれば、虫食いのように4つの工程が残る。そうすると、それぞれ1時間や2時間といった短時間の作業を派遣で補うことができ、短時間であれば子育て中の主婦なども派遣での仕事に参加し易くなる。また、RPAと開発言語を必要とするプログラミングと連携させる人や作成されたロボの保守をする人も必要となるが、基本的に専任ではなく、別の工程を担当する人がマルチで兼ねるという。

3ステップに分類されるロボットの導入効果

RPAを自社導入した際には、社内の評価は二極化したという。「人材派遣のビジネスは、冷静に考えると人がいなくなったら終わりですよね。現在、非常に売り手市場の中で、各社が囲い込みを始めたり、契約社員を正社員に登用したり、労働市場では人の動きが鈍くなってきています。そこで自分たちの意志で働くロボを作ることによって新しい労働力を作り出していけることは歓迎である声と、派遣する業務が減っていくからロボ化はダメ、人材をもっと大事にしていくべきという声がありました」と池邉氏は当時を振り返る。

RPAの導入効果についてうかがうと、導入効果にも3つのステップがあるという。

「最初のステップは、RPAを導入することでタスクが解決されていきます。ただし、RPAは人の作業を置き換えていくので、虫食い状態になります。たとえば、9時から6時までの就業時間のうち、人が2時半から3時まで作業していた業務がPRAに置き換わります。でも、30分の効率改善は誤差の範囲内ですよね。そう導入初期は具体的な効果が感じ難いところからスタートします。

しかし、ロボ化できる業務が増えてくると、ロボで実行できる時間が長くなり、隙間時間が寄せ集められるほどになり、まとまった時間となってきます」 「そうしたら、次のステップでは業務設計を24時間365日の考え方に変えていきます。たとえば、これまでは仕事の終わりに上長が承認を行うと、それを受けて翌日からバケツリレーのように作業が続けられていきました。しかし、RPAを導入すると、上長が承認ボタンを押せばロボが自動的に作業を引き継いでいきます。しかも人の就業時間に制約されないので、24時間の考え方で業務を組み立て直せるようになります。これがステップ2ですね」

「このような考えが進行していくと、日中に有効活用できる時間ができ、人員の再配置や業務そのものの見直しや適正人員での業務運営ができるようになります。そうなると効果が実感できて、いわゆるコストメリットが感じられてくるのです。やはり、最初に効果が実感できるのは「時間ができること」です。最後のステップでは、その時間を使い、更なるロボ化の有効活用が考えられるようになり、ロボ化を念頭においた業務の再設計が成され、働く人の生産性があがります」(池邉氏)。

重要なことは、やはり人に敬意を払いつつ、かつニューテクノロジーを拒まないという、この2つの軸を取り込んでいくことが重用だと池邉氏は言います。「先ほどの学習と学問ではありませんが、やはり『人は大事だ』ということと、一方では違うものの力、すなわちRPAの力を取り入れて、両者がまるでギアのように噛み合い、会社という大きなエンジンを回していくのが理想ではないかと思います」。

後編では、QAWのハイブリッド派遣の特徴や、RPAが適する会社、また、今後の見通しや展開などについて聞いた。

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