最新規格「IEEE 802.11ax」がやってきた、最新無線LAN事情:IT導入完全ガイド(3/5 ページ)
多くの企業が利用する無線LAN。2016年後半からは登場した802.11ac Wave2対応の製品に続き、新規格「IEEE 802.11ax」のドラフトが決定した。乱立するIoT向けサブGHz帯の動向など、無線最新動向を解説する。
Draft1.0が登場した「IEEE 802.11ax」とは
2017年は802.11ac Wave2が市場に広がっていくことになるが、既に次世代の規格である「IEEE 802.11ax」の議論も大いに盛り上がっている状況だ。IEEE 802.11の中でも、全体参加者の4割あまりがIEEE 802.11ax標準化の議論に参加している状況で、無線LANにおける標準化の主戦場として活況を呈している。
実際には既にIEEE 802.11axのDraft1.0が2016年11月に登場しており、チップセットの開発に着手しているベンダーもある。なお、IEEE 802.11acでは5GHzをターゲットにしているが、IEEE 802.11axでは2.4GHzもターゲットにした規格となっており、仕様上の最大スループットは約9.6Gbpsになる予定だ。
OFDMシンボル長の変更
IEEE 802.11axでは、障害物などの影響によって複数の電波を受信してしまうことから通信品質の低下を招くマルチパスに対する耐性を向上させるべく、以前から使われてきたデジタル信号の変調方式の1つであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)のシンボル長を4.0μsから13.6μsなど3種類に規定している。
また、シンボル長の拡張とともに、信号の中にどの周波数成分がどれだけ含まれているかを抽出するアルゴリズムであるFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)サイズが拡大され、データを送るためのOFDMサブキャリア間隔が312.5kHzから78.125kHzに変更された。サブキャリア間隔が短縮されたことで多くのデータが送れるようになっている。
OFDMA
無線リソースを効率的に利用するため、MU-MIMOとともに採用されているのが、LTEなどでも利用されているOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)だ。OFDMAは、OFDMを使って複数の通信を収容することを目的にした多重化の手法で、Uplink、Downlinkともに無線LANフレームを周波数と時間双方の軸上で多重化することが可能になる。このことにより、同時送信による送信機化を拡大し、システム全体での通信容量を向上させることができるようになる。
Uplink MU-MIMO
これまでのIEEE 802.11acでは、APから端末に向けた通信であるDownlinkのみが採用されていたMU-MIMOだが、IEEE 802.11axでは、端末からAPへの通信となるUplinkでのMU-MIMOが採用され、上りリンクのスループット向上が期待されている。
1024QAM
1度に多くのbitを送受信するための変調技術である直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)では、これまでIEEE 802.11a/g/nでは64QAMが採用され、IEEE 802.11acでは256QAMをサポートしているが、これは1度に8bitの情報を送ることができるもの。IEEE 802.11axでは1度に10bitを送ることができる1024QAMをサポートすることになり、さらなる高速化が期待できるようになる。
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