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大手企業経営者がRPAに注目するその理由(前編)

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
移管に関する FAQ やお問い合わせは RPA BANKをご利用いただいていた方へのお知らせ をご覧ください。

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RPA BANK

欧米発の手法とは一線を画し、日本の企業文化に即した業務支援で海外展開などをサポートしているアビームコンサルティング(株)(東京都千代田区)。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の可能性にいち早く着目し、自社の社内業務でノウハウを蓄積してきた同社は2016年11月、顧客企業向けの「RPA業務改革サービス」を本格的に開始。RPAツール「BizRobo」による既存業務の自動化・効率化を提案し、急速に実績を重ねている。

RPA導入のコンサルから開発、運用体制の構築まで専任チームによる一貫体制を敷いた同社は、この技術のメリットをどこに見いだしているのだろうか。執行役員 プリンシパル 戦略ビジネスユニットの経営改革セクター長である安部慶喜氏に聞いた。

サービス開始3カ月で10社以上が導入。新規依頼も続々

「RPA業務改革サービス」の本格スタートから3カ月を経た2017年1月の時点で、アビームコンサルティングは、すでに10社を超えるクライアント企業への導入を完了。さらに導入を検討する企業からの問い合わせは100社を超えており、新たなプロジェクトの依頼も絶えることがない。RPA導入の専任として30人超の人員を充てていても納入が追いつかないほどの活況を呈しているという。

経営コンサル、ITコンサル、アウトソーシングなどの分野で多様な部門を持つアビームコンサルティングにあって、RPA導入支援の先頭に立っているのは、安部氏がリーダーを務める「経営改革セクター」だ。戦略ビジネスユニットの傘下に位置づけられるこの部署は、クライアントが確立させている業務プロセスを前提にシステムを導入するような業務とは異なり、より根本までさかのぼって仕事の進め方を戦略的観点から再検討するスタンスを特徴としている。 経営改革セクターの代表的な業務としては、クライアントが掲げる経営戦略を従業員一人ひとりの数値目標に落とし込み、それら目標を管理するための支援を行うこと、あるいは人事制度や従業員教育の見直しを通じ、従業員の能力を発揮しやすい環境づくりをサポートするといったことが挙げられる。

安部氏は、自身の部署が進める業務支援のイメージを「『国内から海外へ』あるいは『モノ売りからコト売りへ』といった産業構造の変化に合わせて、日本企業の戦略や従業員の動きにメスを入れていくこと」と説明する。 経営改革セクターのビジネスはコンサルティングが主体で、必ずしもシステムやソフトといった商材が介在しない。にもかかわらず、一種のアプリケーションソフトであるRPAが採り入れられたのは、クライアント側の事情よりもまずアビーム社内の課題解決のために導入を迫られ、その中で有効性が実証されたためだったという。

必要に迫られた自社への導入で時代に先行

同社では5年前、受託したコンサルティングの一環として、Webサイトを巡回して大量の情報を収集・分析する業務が発生した。ところが、必要となる作業があまりにも膨大なことから、人の手だけに頼っていては処理しきれないおそれがあると判明。このため、当時入手可能だった自動化ツールの活用を検討した結果、後にRPAツールとして『BizRobo!』と名付けられるソフトの初期バージョンを使うことになったという。

「まだRPAという言葉もない時代でしたが、人間が行ってきた作業をそのまま代行させられる、しかも人間が到底かなわないような早さと正確さで実行できるというメリットは、試してすぐ実感できました。社内で3年ほど運用したところで、導入当時の当社と同じ悩みを持つ企業に紹介したところ、すぐ採用が決まった例もあります。欧米発のトレンドとしてRPAが話題になりだしたのは2015年の後半ですが、よく聞いてみると、まさに当社で使っているツールそのものだったので驚きました」(安部氏)

社内および顧客企業での実績や、それらを取り巻く社会的な環境から、安部氏はRPAの普及を確信するようになる。先進的な経営者層の間でこの言葉が広まりだしたのと歩調を合わせるように、人間の仕事を自動化ツールに代行させるコンセプトの提案を強化。将来の需要を見越し、また迅速なレスポンスで競合との差別化を図る狙いから、クライアント各社がRPAを導入する際の開発作業は外注に頼らずアビーム社内で行うことを決め、専任の開発部隊を組織していった。

既存手法を尽くしていても、RPAがさらなる業務効率化を実現

クライアント企業へのアプローチでは、CEOなど経営首脳へのプレゼンが多いという経営改革セクター。RPAに触れた経営者層の反応を、安部氏は「すごく“刺さる”」と表現し、その理由をこう分析する。

「RPAが登場するまでの間にも、当社のクライアントに対しては業務の標準化やプロセスの見直し、間接部門の集約といった取り組みを、ほぼすべて実施してきました。それでも経営者は、まだムダな作業が残っていないかと常に気にしている。企業の将来にもっと役立つ仕事をしようと現場へ呼びかけるたびに『手が回らない』と断られているからです。だからこそ、人間がやらなくていいような仕事はそっくりRPAにさせればよい、そうすれば手っ取り早く人の手が空くというところに興味を持つんです」

加えて、政府が昨今推し進めている「働き方改革」の影響も大きいという。「長時間労働への指導が厳しくなったので、経営者や人事部は『すぐに帰りなさい』と言いたくなる。ただ、それだけを言うのがいちばんやってはいけないこと。仕事量が変わらず、残業申請もできなければ、結局は帰りにファミレスなどでタダ働きすることとなり、いずれ反発を受ける。単純作業をRPAに任せて、残業時間を減らせと言えば、従業員も納得できるのです」(安部氏)

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