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用語解説:ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)困ったときのビジネス用語(3/3 ページ)

AIを活用したビジネス開発が活発だ。なかでもディープラーニングは注目を集めているが、その理由は? 私たちの業務はどう変わる? どこで使える? 基礎知識から技術応用のアイデアまでを解説する。

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私たちの仕事はどう変わる? ディープラーニングの応用例3選

 ディープラーニングはAIアプリケーションの可能性を大いに広げた。画像認識、音声認識、センサー情報の分析、自然言語理解、自動翻訳、行動監視や予測といった機能が、これまでよりも格段に良い精度で活用できると見込めるため、期待されるアプリケーションは多い。

 ビジネス上のメリットとしては、従来の業務や設備などの運用を改善し、効率化・自動化することで、コストを削減できることが1つの大きな期待要素だ。しかし、それよりも重要なのは、従来では考えられなかったサービスや製品開発が可能になることだ。今後数年で、ディープラニングを利用した新たなビジネスモデルが続々登場してくることが予想される。

 現在、既に取り組みが進む自動化や新しいビジネス開発の例を確認しておこう。

応用例1:自動運転技術

 近い将来に普及しそうな応用例を挙げれば、「車の自動運転/事故防止」が筆頭に挙げられよう。

 自動運転の実用化に向けた研究開発と実証実験は活発化しており、一例を挙げれば2016年のCES(Consumer Electronics Show)でトヨタとNTT、プリファードネットワークスが共同展示した、「複数のロボットカーが衝突を回避しながら、それぞれの目的の方向へ走り回るデモ」がある。

 そのロボットカーの運転能力は「最適な走行についてのディープラーニング」でトレーニングされたものだった(図3)。ちなみに、トヨタはシリコンバレーにAI専門会社を設立し、AI研究開発にますます注力を図っている。

衝突せずに最適に移動する走行能力を学習したロボットカーのデモ例(CES2016)
図3 衝突せずに最適に移動する走行能力を学習したロボットカーのデモ例(CES 2016) (https://www.youtube.com/watch?v=Tj86GlBD81w/より)

応用例2:ベテランのノウハウよりも効率よく自律的に学習するピッキングロボット

 自動走行だけでなく、製造業の現場でもディープラーニングの成果を応用した効率化に期待する声は大きい。

 例えばロボットの制御について、人間が教示するより、ロボットが自分で学習した方が短時間に精度が高い制御が行えることが明らかになってきた。

 例えばファナックは、乱雑に積まれた部品のピッキングの仕方を、人間が教示するのではなく、ロボットが自ら学習していけるという実証実験結果を発表している(図4)。

 これには、プリファードネットワークスが開発したオープンソースのディープラーニング用プラットフォーム「Chainer」が利用されている。

部品ピッキングロボートのピッキング作業学習
図4 部品ピッキングロボートのピッキング作業学習 (https://www.youtube.com/watch?v=ATXJ5dzOcDw/より)

 産業用機械に関しては、自動運用ばかりでなく、異常検出・稼働監視・予防保全、複数機械やロボットの協調動作などでもディープラーニングの適用が進みそうだ。

 他にも、例えば「医療画像診断」「施設などのセキュリティ監視」「保険料率の個別設定」「マーケティング/広告の最適化」「物流プロセスの最適化」「コンタクトセンターの業務支援」「農業の自動化」「家事や介護の効率化」など、有望な応用領域が数多い。

応用例3:公開サービスやライブラリを駆使すればベンチャーも参入しやすい

 さまざまな企業がAI研究開発に注力を始める中で、いち早く取り組んでいたのがGoogle、Baidu、Facebook、Microsoftなどの巨大企業だ。自前の計算機資源を使い、画像検索や音声認識、自動翻訳などの自社サービスに直接活用できるのでモチベーションが高い。

 彼らの研究開発成果は、積極的に外部に提供され始めている。例えば自社で開発したディープラーニング向けのライブラリ群をオープンソースソフトウェアとして公開したり、学習済みモデルをWebサービスAPIとして公開したりと、利用のハードルを下げる取り組みが進んでいる。ベンチャー企業や社内の小規模プロジェクトのように、少ない予算でも挑戦できることから、ビジネス開発の裾野は広がるだろう。

 日本国内では、例えばドローンによる空撮映像からのデータを活用する新ビジネスモデルを推進しているエアロセンスでは、「Google Cloud Platform」上で「Google Cloud Vision API」や「TensorFlow」を組み込んで、空撮画像中の物体自動検出などに利用しようとしている(図4)。

ドローンの空撮映像データを活用しやすくWebアプリケーションで提供
図4 ドローンの空撮映像データを活用しやすくWebアプリケーションで提供 (https://cloud.google.com/customers/jp-aerosense/より)

 なお、国内企業で、何らかの広義のAIを導入済みおよび導入検討/希望する企業は約4割(*1)に上り、上場企業では自社製品・事業の付加価値向上や販売・営業・保守支援、生産・物流効率化などへの期待が高い(*2)という調査も公表されている。

 ディープラーニングのビジネス応用は始まったばかりだが、期待感は急速に高まっているようだ。ディープラーニングをどううまく活用するかが、これからの企業間競争の1つの鍵となっていきそうだ。

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