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RPAの基礎知識、面倒な仕事はロボットにお任せ

よく耳にするようになったRPA。現場業務をどう省力化できるかという課題を解消するために、またシステム改修の手間やリードタイムがない場合の選択肢として注目度が高まっている。

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 2016年ごろから耳にすることが多くなったキーワード「RPA(Robotic Process Automation)」。現場業務をどう省力化、合理化できるかといった課題に、大規模開発やシステム改修のリードタイムはかけられないという場合の選択肢として注目度が高まっている。今回はその概要を紹介しよう。

RPAとは何か?

 RPAは「社員の代わりを務めるロボット」といわれることが多い。とはいえメカニカルなロボットとは訳が違い、その正体はソフトウェアである。人間がPCで各種業務システムを利用して実行する業務プロセスを覚え、着実に自動実行する仕組みのことをいう。日本RPA協会によると、その定義は「これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業をルールエンジンやAI、機械学習などを含む認知技術を活用して代行・代替する取り組み」となる。

 RPAは海外では十数年前から、国内では4〜5年前から知られるようになったが、国内で広く注目を集めるようになったのは2016年からのこと。その背景には、労働人口減少に伴う人手不足に加え、政府が推し進める働き方改革、長時間労働抑制の動きがある。人材確保と人材の有効活用の方策に手詰まり感を覚える企業が増える中で、RPAツールベンダーとRPA導入、構築コンサルティング会社などによる国内大手企業での導入成功事例が語られるようになり、一気に関心が高まった。

RPAは何をしてくれるのか?

 RPAはこれまで人がPCを使って行っていたルーティン業務を肩代わりしてくれる。例えばさまざまな情報ソースから一部の情報をコピーして、特定の業務システムの入力フィールドにペーストしたり、その逆に特定業務システムの出力結果などを複数の業務システムに別々に入力したりするといった作業をルーティン業務として従業員が日々行っている場合がある。

 作業プロセスをいわば「シナリオ」にして、ロボットがその通りに順次実行するのがRPAだ。人間は煩わしいシステムログインやコピー&ペースト作業を行わず、その結果だけを利用することができる。つまり、面倒な作業はロボットに任せ、人間らしい創造的、生産的な仕事に専念できるというわけだ。

 RPA活用の最もシンプルなイメージとしては、図1に見るように「複数のアプリケーションのデータを集約して利用する」(アプリケーション連係)や、「特定システムで入力や更新したデータを複数アプリケーションに展開する」(データ連係)が分かりやすいだろう。

図1 シンプルなアプリケーション連係とデータ連係のイメージ
図1 シンプルなアプリケーション連係とデータ連係のイメージ(出典:アイティフォー)

 このような一連の作業の流れは、実際に人が行う画面操作の自動記録やWebページのオブジェクト自動取得機能などを用いて簡単に設計でき、それをつなげたり、条件分岐をしたりと、ワークフローツールのフロー図記述に似た要領で業務プロセスを最初から最後まで設計していくことができる。流れの作成は最初こそ専門家の助けが必要かもしれないが、運用の過程で業務部門でも変更や作成方法を習得できる場合が多いようだ。

図2-1 Webページのオブジェクト自動取得機能
図2-1 Webページのオブジェクト自動取得機能(出典:アイティフォー)
図2-2 業務フロー設計機能の例
図2-2 業務フロー設計機能の例(出典:アイティフォー)

 こうしてできた業務フロー設計が「シナリオ」となり、それをロボットに実装することになる。ロボットが新入社員とするなら、これは新人教育だ。人間と違い、ロボットは教わったことを、24時間休憩なし、休日なしでも高速に繰り返せて、操作を間違うことがない。しかも新しいロボットにシナリオをコピーできるので、業務量が増えたらロボット台数を追加すれば追随できる。似たような業務ならシナリオの一部改変で適用できる場合もあるだろう。

マクロとの違い

 このように記すと、「マクロを書けば同じこと」「システム間の連係機能を作り込めば良いのでは?」と思う人も多いだろう。実際、RPAの機能は「巨大なマクロ」と例えられることもある。しかしマクロは連係するアプリケーションが限られている。

 ExcelやWord、PowerPointなどのオフィスツールだけを使うならマクロの方が適することも多い。しかし社内では社内用Webシステム、外部Webサイト、ERPやCRMなどのパッケージアプリケーション、SaaS、自社開発アプリケーション、ホスト系システムなど、さまざまな業務システムが併存しているのが一般的で、1つの業務でも多様なアプリケーションとの連係が必要なケースが多い。これはマクロだけでは不可能だ。

 RPA製品の中にも連係アプリケーションが限定されるものがあるので選定時には注意が必要だが、基本的には連係先を選ばず、多様なアプリケーションにまたがる業務を自動実行できるところが長所といえるだろう。

連係開発との違い

 では、連係機能の作り込みの方はどうだろう。性能面からいえば、作り込みの方がずっと高性能になるはずだ。しかし問題は連係開発のためのコストと開発期間である。一般的にAPI開発を行うとなると少なくとも数カ月の開発・テスト期間が必要になる。またそれに伴いアプリケーション本体の改修も必要になる場合があるだろう。これにはもっと時間と投資が必要だ。

 RPA導入ではロボット台数分のライセンス費用が必要になり、また業務プロセスの整理やそのシナリオ化にある程度の期間がかかり、コンサルティング費用なども要るだろう。しかし既存システムには一切手を入れる必要がない。そのため導入開始から数週間程度、中には数日で本格運用を開始できたケースもあるほどだ。適用する領域さえ間違えなければ、早期に投資回収できる可能性が高い。

 まとめると、開発プロジェクトポートフォリオに乗るような案件なら連係開発の方が性能面で有利だが、そうでない案件、特に業務部門の現場の課題解決を早期に図りたい場合にRPAは向いている。また連係が必要になる部分は業務の一部でしかないケースも多いはず。その他の業務プロセスもまとめて合理化できる点でもRPA適用は効果的だ。

AIや機械学習との関連は?

 RPAを少し分かりにくくしているのが「AI、機械学習などの認知技術」が絡むところかもしれない。今導入できるRPAツールはその部分を十分に実装していないからだ。それでもこれが強調されるのは、RPAのロードマップに業務プロセスの自律的な分析・改善機能が明確に位置付けられているからである。RPAは、主に図3の3段階で考えられている。

図3 RPAの3段階
図3 RPAの3段階(出典:KPMGコンサルティング)

 現在のほとんどのRPAツールは「Class1」に属している状況で、これは単純なルーティンワークを任せるのに適している。「Class2」は、より複雑な非定型業務に対応し、一部は機械学習(ディープラーニングなど)や自然言語処理を含むAI要素を取り込んだものとなる。「Class3」はまさにAIが分析、改善、意思決定までも実行することを視野に入れている。

 なお、これとは少々異なるレベル分けも提唱されているが、単純なルーティン作業の自動化から例外対応や人間の作業の一部介在なども含むより複雑な作業の自動化、さらに機械学習技術をベースにした分析、改善、意思決定へと発展していく方向性は一致している。

 現段階でAI技術はロボットへのシナリオ実装を助けるためにルールエンジンや画面認識技術などが使われている状況だが、やがてはロボット自身がシナリオ改善やより高次の判断が行えるように、自分自身を変えていける仕組みができ上がると予想されているわけだ。

 既にPOSデータの収集と分析、それをもとにした広告出稿のオペレーションをロボットに組み込んだ事例なども出てきており、一部のツールは「Class2」へと進んでいる。Class3に行き着くまでに「あと5年」と明言する専門家の意見もあり、意外に早期にこれが実現するかもしれない。そのような期待も含めて、現在の市場の盛り上がりがあるというわけだ。

RPA導入の効果とは

 RPA導入でどんな効果が期待できるかをまとめると、主に次のようなポイントになろう。

  • 人間の作業のうち、PC操作に関わる部分を圧倒的に高速に代行できる
  • 24時間365日の稼働も可能なため、人間の数百倍以上の業務量でもこなせる
  • アウトソーシングしていた業務を社内ロボットに担当させるなどコスト削減が可能
  • 顧客対応のスピードが向上するため、顧客満足度が向上
  • 入力ミス、手続きミスなどのヒューマンエラーがなくなる
  • 既存システムに手を加えずにアプリケーション連係、データ連係が可能

 典型的な効果の例を示すと、例えば、あるコールセンターでは、図4のように熟練スタッフが既存の業務システムで複雑な画面遷移を自分の手で行いながら、顧客情報照会やデータ更新を実行していたが、その一部作業をRPAで代行させるようにしたところ、20分かかっていた作業が1分で済むようになり、しかもその過程でヒューマンエラーがゼロになるという効果を達成したという。

図4 コールセンターでのRPA導入効果の一例
図4 コールセンターでのRPA導入効果の一例(出典:RPAテクノロジーズ)

 しかし、この例からRPAが「人員削減するためのもの」と考えるのは早計だ。人間が本当に人間にしかできない業務に専念できるように業務の最適配分を行うものと考えた方が利用価値は高い。もう1つの例として、質を高めた「報告書作成」への適用事例を見てみよう(図5)。

図5 ウイークリーレポート作成へのRPA適用事例
図5 ウイークリーレポート作成へのRPA適用事例(出典:デロイト トーマツ コンサルティング)

 「現状」のチャートからは、人間がアプリケーションを何度も切り替えながら忙しくレポート作成を行っている姿が見えてきそうだ。その作業の一部、データ加工や文書作成作業がRPAによって自動化されると、人間が考えるための時間が生まれる。上図の「POV(導入検証)後」のチャートでは担当者のコメント追記に30分、2回のレビューで計55分の余裕が生まれている。最終的にかかる時間は同じでも、熟考の機会があることが報告書の品質向上に寄与している。このようなレポート作成のロボット化により、図6のように定量的にも定性的にも大きな効果が得られたという。うまく使えば多様なメリットを享受できるのがRPAなのだ。

図6 報告書作成のロボット化による効果
図6 報告書作成のロボット化による効果(出典:デロイト トーマツ コンサルティング)

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