次のWindows Serverサポート切れが来るまでに、日本企業が取るべきアプローチ(3/3 ページ)
日本企業のクラウド利用は「虫食いだらけ。あと数年で立ちゆかなくなる時期が来る」――ではどうすればよいか? 世界中の企業の変革を支援した実績から導き出された「いま日本企業がやるべきこと」を聞いた。
8000台のサーバも約900台/月で移行
もう1つの大規模事例として、オンプレミスの大量のサーバをクラウドに移行した欧州大手企業のケースも披露された。
この企業では、新たに構築するアプリケーション類については既にAWSなどのパブリッククラウドを利用していたが、ERPなどの既存システムはオンプレミスの約8000台ものサーバで運用していたという。基幹業務を担うERPなどは機能モジュール単位で切り分けた上で、クラウドに移行するかオンプレミスに残すかを判断していく一方で、「デジタルビジネスに寄与しない既存アプリケーション」についてはオンプレミスに残しつつ、時期を見て随時クラウド向けに再構築を進める方針を取っている。
ここでの問題は、システムを稼働させているサーバの数だ。戸賀氏が「数の暴力」と表現するように、サーバ数が多い場合、それら1つずつを確認し、どのような方針でいつどのように移行するかを計画することは非常に困難だ。こちらの事例でもやはり、システムとアプリケーションを細かく分解して、全ての依存関係を整理するのには約9カ月間もの時間が必要だったという。
ただし、依存関係の整理がつき、順序や方針が決まってしまえば、オフショアで人員を投下して素早く移行できるため、結果として、この企業では1カ月当たり800台以上のサーバをオンプレミスからクラウドに移行していき、短期間で計画を完了している。
コストコントロールをどう考えるべきか
ここで紹介があった2つの事例はいずれも「移行しにくい」とされるケースでありながら、短期間でのクラウド移行に成功している。1つは機能が複雑に絡み合うプログラムを持つメインフレーム。もう1つは大量のサーバに対して、どの機能をどこに置くかについて個別に判断する必要があるものだった。事前の機能分解や連携基盤を介した段階的な移行などを駆使し、手順や優先順位付けなどの計画を綿密に行った結果といえる。
移行前〜どうクラウド化するか、優先順位付けとコストコントロール
では、どのように優先順位付けを検討すべきなのだろうか。
いずれも現在稼働中の重要なシステムが対象であるため、段階的な移行が必要だ。そうすると、一時的に既存環境とクラウドを併用することになるため、コストがかさむことになり、計画そのものに社内のコンセンサスを得られない可能性がある。
そこで「それ以外の部分のコスト削減を併せて提示するような、移行計画のひと工夫が重要」と戸賀氏。コストを削減するためには、例えば、既存環境のハードウェアの償却期間、ソフトウェアライセンスの形態と契約期間、データセンターのラック契約期間などを総合的に判断し、費用が最少になるスケジュールと計画を作る工夫が必要だと指摘する。
逆に考えると、この計画ができれば2つ目の事例のように大量の人員を投下して移行そのものを短期化、低コスト化することも可能になるだろう。
移行後:運用中のコストコントロールは「3本の矢」で考えよ
さらに戸賀氏は、クラウド運用フェーズのコストコントロールで見ていくべきポイントとして「稼働時間短縮」「ダウンサイジング」「契約の見直し」の3つを挙げる。戸賀氏はこの3つを「3本の矢」と表現、定期的にチェックしてムダを排除するサイクルを示した。
この3本の矢を実現するためには、各サイクルで、状況把握や監視のために、統合監視やログ収集、将来的な稼働予測のためのシミュレーションなど、新たな運用体制を確立する必要があることも指摘、このプロセスを人が回すか、自動化するかについても判断していく必要があると指摘した。
なお、本公演で登壇した戸賀氏が所属するアクセンチュアでは「Accenture AWS Business Group」を組織しており、グローバルで約2万人のAWS技術者を擁しているという。自社だけでも、全システムの60%をパブリッククラウドに移行済みで、2年後にはこれを90%にまで引き上げる計画がある。
講演の最後に戸賀氏は、ここで挙げた事例だけでなく「自社実践のナレッジも体系化している。運用データの解析や、SAPなどのERPのクラウド移行や運用も非常に得意な領域」と語り、基幹系を含む全システムのクラウド化でのアクセンチュアの実績を強調した。
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