課題から理解するクラウド型ERP、導入の手順、選び方のコツ(3/3 ページ)
事業拡大や業務効率化を考えたとき、クラウド型で提供されるERPの利用は、検討したい選択肢の1つだ。だがクラウド型はどこから着手すべきかは考えておく必要がある。
ERPのフロントウェアを活用するという発想
ERPは、ヒト、モノ、カネという企業リソースの利用計画を全体最適の視点から行うためのソリューションだが、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少しつつある現在では、働き方を改革して従業員の生産性を高めていくための取り組みが、企業というよりも日本全体としての大きな課題となっている。
そこで今、従業員の働き方に関するビッグデータを吸い上げ、分析することで、企業の働き方改革を支援しようとするERPの“フロントウェア”が提供されている。今回のテーマであるクラウド型ERPからは少し離れるが、働き方改革への取り組みが必須となっている現在の企業にとっては非常に興味深いソリューションだと思われるので、ここで少し紹介しておく。
「働き方改革」プラットフォームをうたうこのソリューションは、勤怠管理、就業管理、工数管理、カレンダー、経費精算、電子稟議(りんぎ)、SNSという7つの機能を1つのプラットフォーム上に融合した製品で、機能としてはERPの人事給与モジュールに相当する部分を提供する。ERPとの連携は、このソリューションに入力されたデータを月次でCSV形式で吐き出してERP側に読み込ませることで簡単に実現できる。
このソリューションが、ERPの“フロントウェア”として訴求されているのは、自身に入力されたデータをERPへ連携するという役割を担っているからだが、しかし今も述べたようにERP側で必要となるデータは月次単位で、しかも従業員の詳しい勤務状況、例えば1日の勤務時間中にどんな行動をしていたのかなどは一切不要だ。
しかしこのソリューションを日々使っていくプロセスの中では、そうした従業員の働き方に関するビッグデータが自然に蓄積されていく。それらを分析することで、より効率的な働き方が見えてくる。例えばそれほど残業しているわけではないのに、突出した成果を出しているメンバーがいたとき、その人がどんな働き方をしているのか、収集したワークログを分析することで可視化することができる。
それはマネジャーだけでなく、メンバー全員で共有することが可能で、またSNS機能を利用すれば他のメンバーが質問したり、あるいは上司がアドバイスを与えたりすることもできる。
つまり別の言い方をするなら、このソリューションを使うことで、働き方改革のヒントとなる従業員の働き方に関するビッグデータを簡単に収集することが可能となり、さらにそこからERPで使うデータを作成して、連携することもできるということだ。
ERP側を主体とするなら、文字通りERPの“フロントウェア”ということになるが、一方で入力された従業員のビッグデータをさまざまな視点から分析できるという点では、働き方改革を推進するためのプラットフォームと捉えることができる、ということだ。7つの機能が融合されたプラットフォームを利用することで、従業員の日々の事務作業も合理化され、創造的な業務に充てる時間を生み出すことも可能となる。
このソリューションはクラウドで提供されており、現在利用しているERPの人事給与モジュールがオンプレミスかクラウドかに関わらず、連携することができるので、現在使用中の製品の使い勝手が悪いとか、あるいはリース切れを迎えるなどのタイミングで、一度検討してされるのもいいのではないだろうか。
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