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バリ取りメーカーによる業務改善プロジェクト、脱Salesforceで「管理部門」が作り上げた顧客案件管理システムとは(2/2 ページ)

金型をはじめ自動車などの製造現場で使われる研磨用の砥石やバリ取り用の工具を製造販売するジーベックテクノロジー。同社の情シスでない管理部門の一担当者が、顧客案件管理システムを構築した。その軌跡を追う。

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現場に浸透させていくための施策

 ここで、同社のkintone導入からの活動を、ガートナーが提唱している製品やテクノロジーの成熟度と採用率を表現する「ハイプ・サイクル」になぞらえて説明を行った本堂氏。2014年の「過度な期待」のピーク期にあたる導入期は、本堂氏自身が過度な期待を持っていたと振り返るが、「簡単にアプリを使って業務改善できるのであれば、営業部門だけで使うのはもったいない」と考えたという。

 そこで、やりたいことができることを示しながら、多くの社員に触れてもらうよう働きかけた。実際には、HP経由でセミナーが申し込めるアプリや顧客に貸し出すデモ機管理のアプリを作成、多くの人に触れてもらうために社内イベントの出欠確認アプリや健康診断の受診日確認アプリなど、身近に活用できるアプリを展開していった。これらのアプリが問題なく稼働することを示した上で、本来の目的だった顧客案件管理システムをkintoneに移行していったと語る。

基本機能だけでなくデベロッパーの支援をフル活用

 まずはkintoneがもつ基本機能だけで顧客案件管理システムを作成し営業部門に展開したところ、営業担当者による入力は進むようになった。しかし、多くの項目を1つの画面で入力することを強いてしまったことで、ノートPCユーザーである営業部門には不便な面もあった。また、kintone標準の検索方法も絞り込みマークから検索するプロセスが不評で、導入後10カ月を過ぎたあたりからハイプ・サイクルでいう幻滅期に突入。あらためてユーザーから不満の声が上がってくるようになったという。そこで本堂氏は、JavaScriptを駆使してkintoneをカスタマイズするべく、デベロッパーを頼ることに。

 kintone流アプリ作成のコツについてデベロッパーからアドバイスを受けるなど相談できるパートナーを見つけた本堂氏。実際にはM-solutionsがデベロッパーとしてプロジェクトに参加し、その中で、ポップアップで画面を表示し横スクロールしなければならなかった画面を改善してもらい、検索パーツを一覧画面に埋め込むなど、使い勝手を高めていった。

 また、企業機密が多く集まる製造現場にはPCが持ち込めないために、ノートでの手書きを余儀なくされていた営業部門に向けて、入力負担が軽減できるようコクヨの手書きソリューション「CamiApps」を導入。事務所に戻ってから入力していた作業をCamiAppsによって自動取り込みできるようになり、転記作業を含めて1件あたりの入力時間を半分ほど削減することに成功したという。

全社的な基盤に成長を遂げたkintone

 その後、開発部門向けに特許管理のアプリを作成し、出願から登録までの履歴を記録できる仕組みを構築。アラート機能によって、出願後の手続に関する期限管理を実施したという。「共同出願しているパートナーの企業にもkintoneに参加してもらうために、コメント欄を活用してコミュニケーションできるようにしました。このことで、案件に関する話が全てkintoneに集約されるようになったのです」と本堂氏。このアプリがきっかけとなり、開発部門から営業部門へ顧客案件管理の項目追加の要望が出てくるようになるなど、kintoneが組織を横断して活用されるようになっていった。また業務部門でも受発注業務にkitnoneを活用するなど、全社的な基盤として活用が広がっている。

 現在は、積極的に業務改善するためのツールとして社内に浸透しており、2017年はメンバーと一緒にアプリを作成していくことで、社内でメンテナンスできる人材を育てていく方針だと本堂氏は意欲を見せる。既にカードリーダーにICカードをかざすことで入退社時間をkintoneに自動取り込みできるソリューションを導入しており、今後は有給や残業申請も全てkitnoneに乗せていく方針だという。

 最後に、kintone運用でのつまずきやすいポイントについて、「入力することがメインな時期と、検索する方が多い時期といった形で、1つのアプリも成長します。この成長や変化をよく見極めて、その時々に合わせた使い勝手が提供できるようにすべきです。アプリは作って終わりではなく、見守っていきながら変化に対応していくことが重要です」と語った。

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