アシックス流人工衛星の使い方が飛び抜けていた(1/2 ページ)
大手スポーツ用具メーカーのアシックスは、みちびきやGPS衛星から得た測位情報をスポーツに活用する施策を行っている。宇宙からのデータを使ってマーケットや事業を広げる1つの先例となるかもしれない。
6月1日、準天頂衛星「みちびき2号」の打ち上げ成功が日本をにぎわせた。予定が順調に進めば、2018年には4機のみちびきが運用されるだろう。地球を取り囲む人工衛星のネットワークが整えば、新しいビジネスが生まれる可能性が高まる。
IoTやビッグデータという言葉が世にひしめく昨今、「データを持っているか、いないか」は企業の命運の分かれ道となる。そして今、ビッグデータの入手手段として人工衛星使う選択肢が生まれている。
例えば、大手スポーツ用具メーカーのアシックスは、みちびきやGPS衛星から得た測位情報をスポーツに活用する施策を行っている。測位情報とは、スピードや距離、位置情報といったデータのことだ。この測位情報を使ってアシックスはスポーツにどう革新を起こすのか。「Interop Tokyo2017」では、同社スポーツ工学研究所IoT担当マネジャーの坂本賢志氏が同社の取り組みを紹介した。
準天頂衛星「みちびき」から得たデータの可能性
アシックスは、測位情報を基に「プレイヤーのパフォーマンスを可視化、向上する」「用具の設計に生かす」ことを狙う。そのためには、人工衛星から得られるデータが正確であることが重要だ。坂本氏は「みちびきのデータはGPS衛星と比べて誤差が少なく、高精度だ」と説明した上で、マラソンや球技での活用例を紹介した。
みちびきは、日本が独自に構築中の衛星測位システム「準天頂衛星システム」を支える人工衛星だ。衛星測位システムといえば、米国が開発したGPSが有名である。これは、上空約2万キロを周回するGPS衛星が発信した、正確な時刻データを含む信号を受信することで位置情報や速度などが測定できるシステムだ。
このGPSを補強する測位システムとして計画されたのが準天頂衛星システムである。人工衛星の高度が低いGPSでは、都市部や山岳部において電波の屈折や反射によるマルチパス障害が発生しやすく、大きな誤差を生じるという問題があった。一方、みちびきはGPS衛星よりも高い3.2〜4万キロという軌道を旋回するため、マルチパス障害が発生しにくく誤差を1メートル以下に抑えられる(図1)。
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