京セラのLPWA導入事例、ピザ宅配業者の2000万円損失に終止符を打つ(4/4 ページ)
通信やデバイス費用がかさむなど、活用に多くの課題があるIoT。打開策として注目を集める無線通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)のSIGFOX活用事例を紹介する。
2000万円の損失に終止符 ピザ生地の温度も自動でモニタリング
冷蔵庫の温度管理にもSIGFOXのネットワークが利用されている。大植氏は、アイ・サナップが開発したSIGFOX通信モジュールを搭載するIoTデバイスによって、ピザ生地を保存する冷蔵庫の温度を計測する事例を紹介した(図6)。
ピザの生地は温度によって発酵の進み具合が異なるため、温度管理が難しいという。大植氏の話によれば、宅配ピザなどを提供する「ナポリの窯」では、冷却器の故障や、注文が重なった際に冷蔵庫を閉め忘れるといったトラブルから、発酵が失敗したピザ生地の廃棄で年間2000万円ほどの損失があった。
そこで、15分に1回、SIGFOXのネットワークを経由して、クラウドに冷蔵庫の温度データを上げ、専用アプリでモニタリングした。「当初は3G回線を使用する予定だったが、1デバイスにつき月額1000円ほどかかり、全店舗に複数設置となるとコストを回収することができないという問題があった。SIGFOXの場合、1デバイス当たり月額83円ほどで済むので、大幅なコスト削減となった」と大植氏は話す。
最小限の投資でOK スマートパーキングの車両管理
パーキングの車両検知にも、SIGFOXのネットワークを使った事例がある。オプテックスが開発したパーキング向けの車両検知システム「車両検知センサー ViiK」を使用し、SIGFOXのネットワーク経由で車両の数を把握することで、最小限の投資でも駐車場の管理ができると大植氏は話す(図7)。
従来のパーキングシステムでは、地面に穴を開けて「ループコイルセンサー(車両の金属部分を検出するセンサー)」などを埋め込む工事が必要であり、初期導入の手間とコストが負担であった。一方、車両検知センサー ViiKを駐車場のポールに取り付け、車両の駐車状況のデータをSIGFOX経由でクラウドに送信する方法であれば、コストを大幅に抑えられると大植氏は話す。
海外展開にも有利? 広がるSIGFOXのネットワーク
IoTの活用例が増えてくる中でLPWAの需要も高まり、SIGFOXのネットワーク(提携企業)は現在32カ国にまで広がっている。今後は2018年3月に向けて、東南アジアを中心に60カ国への展開を目指している。これを受けて、大植氏は、グローバルIoTネットワークであるSIGFOXは、従来では管理コストなどが問題となる海外展開の際にも有効だと話した。今後SIGFOXのネットワーク拡大が進めば、IoTデバイスを海外ビジネス展開の武器として積極的に活用できるかもしれない。
なお、国内では、東京23区、川崎市、横浜市、大阪市でサービスの提供が始まっており、2018年3月までに政令指定都市を含む全国36都市にまでエリアを拡大する予定だ(図8)。
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