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ついに「コピーロボット」が現実に? NTT東日本が「働き方改革」でたどり着いた答え

働き方改革を推進したければ、コピーロボットに働かせればよい――NTT東日本が実践し始めたロボット出社と、その効果をレポートする。

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 2017年7月24日、総務省、厚生労働省、経済産業省などの複数の省庁や内閣府が900以上の一般企業・団体を巻き込んで、働き方改革の国民運動「テレワーク・デイ」を実施した。この日、テレワーク・デイ参加企業でもあるNTT東日本は、働き方改革が抱える課題について、ロボットを活用して解決すると発表した。

 NTT東日本では、2014年7月から約3万人の全社員を対象とした「働き方改革」を推進しており、2016年度実績では362人が在宅勤務制度を活用しているという。さらに、2017年7月からは、総務人事部長直結の組織として「ダイバーシティ推進室」を設置、在宅勤務日数の回数制限も撤廃し、モバイルワーク環境の整備も進めている。

 同社では、早くから働き方改革を実践したことで、在宅勤務者が抱える問題への知見も深めてきたという。具体的には、「緊急会議に参加しにくい」「職場の社員とコミュニケーションを取りにくい」「在宅勤務故の孤独感がある」「ビデオ会議などへの参加で自宅プライベート空間の映り込みを避けたい」といった問題だ。

「コピーロボット」が私たちの「存在」を伝える

 これらの問題を解決する方法として、NTT東日本が見いだした答えが「“コピーロボット”を用意すること」だ。“コピーロボット”といえば、国民的アニメーション作品に登場する、夢のような未来の道具として記憶している方も多いだろう。

NTT東日本が導入したロボット「OriHime」
NTT東日本が導入したロボット「OriHime」

 今回、NTT東日本ではオリィ研究所が開発した人型ロボット「OriHime(オリヒメ)」を在宅勤務支援を目的に導入した。OriHimeは、マイク、カメラ、スピーカーを搭載しているが、人工知能などの機能は搭載しておらず、あくまでも遠隔操作者の「分身」として動作する。在宅勤務者の「目」「耳」「声」と「存在」を代替する存在と考えると分かりやすいだろう。

 OriHimeは、在宅勤務者の分身としてオフィスに設置される。

 ロボットという「形のあるもの」を置くことで、職場で自身の存在を周囲に認識させやすく、ビデオ会議システムなどのように専用の機器で接続するなどの操作をせずに、いつでも会話が可能になる。内蔵のカメラを使ってオフィスにいる対話相手の顔を見ながら会話できる一方で、在宅勤務者側は、在宅勤務中の私的空間の映像が職場に配信されることはなく、プライベート空間を守れる点も特徴だ。

NTT東日本でのOriHimeの利用例 iPhoneまたはiPadで操作する。感情表現の動作ボタンも用意されている
NTT東日本でのOriHimeの利用例 iPhoneまたはiPadで操作する。感情表現の動作ボタンも用意されている。
感情表現ボタンの動作例(オリィ研究所のWebサイトより)
感情表現ボタンの動作例(オリィ研究所のWebサイトより)

 「目」「耳」「声」を遠隔に届ける点はビデオ会議システムとさほど変わらないが、OriHimeという「存在」があることで、在宅勤務者とのコミュニケーションの距離感や性質を変えられる可能性がある。例えば、ちょっとした用件を口頭で相談するといった軽いコミュニケーションにも、社外から参加しやすくなり、在宅勤務者の孤独感を払拭(ふっしょく)するとともに、情報のヌケモレが起こりにくくなることが期待できる。

 同社ではまずトライアルとして40台のOriHimeを導入、その効果を検証してきたという。導入の効果として、在宅勤務の社員が家庭内のプライバシーを守りつつ、いつでも接続できること、在宅勤務の孤独感を和らげ、存在感をオフィスにいる社員に伝えられることで、コミュニケーションの円滑化、チームワークの向上につながったとしている。この結果を受け、2017年度内に29支店に2台ずつOriHimeを導入する予定だ。

 なお、OriHimeの開発元であるオリィ研究所では、7月24日のテレワーク・デイ当日、エンジニア1人以外の全社員が「OriHime出社」(在宅勤務)を実施、「朝礼」から始まる通常業務を行ったという。

オリィ研究所の「OriHime出社」の様子
オリィ研究所の「OriHime出社」の様子。分身同士で朝礼などを実施。SF小説のような光景だ。

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