徹底比較、「Office 365」と「G Suite」 製品思想の違いから現れる「ドキュメント作成」の違い:クラウド時代のオフィススイート選定術(3/3 ページ)
ビジネス文書の作成には欠かせない「ドキュメント作成」、“Word”が当たり前の時代は終わった……? 「Office 365」と「G Suite」の違いを徹底比較、根本的な違いとは。
G Suite(Google ドキュメント作成)の特徴
Googleのドキュメント作成には主にドキュメント(文書作成)、スプレットシート(表計算)、スライド(プレゼンテーション)の3つのサービスがある。これらは往々にしてMicrosoft Officeとの互換性や使い勝手の話になることが多いが、基本的な操作はMicrosoft Officeと大きな違いはなく、Microsoft Officeにはない利点も多い。
また、社内のITリテラシーが低いのでMicrosoft Officeでないと使えないという話もよく聞くが、ITリテラシーが低いユーザーは使い方が限定的であるため、G Suiteへ移行してもほとんど問題ない。高度なOfficeドキュメントでの編集が不要な部門については、Google ドキュメントに移行することでMicrosoft Officeのライセンスを減らしコスト削減の効果も得られる。
Microsoft Officeとの違いとしてG Suiteの全てのサービスに共通しているのが、「AI(人工知能)」「コラボレーション」である。今回はこの2つの共通点がどのように業務の効率化をもたらすかを紹介する。
資料作成にAIの助言
G Suiteは初めからクラウドサービスとして開発されているため、昨今Googleが力を入れている先進のAI機能が随時追加、反映されている。その例をいくつか紹介しよう。
まず、データ探索機能は、文書のデザインや分析についてAIが助言をしてくれる。プロのデザインが簡単に利用できたり、今まで気が付かなかったような情報の特徴や関連性が見つかったりするため、文書が効率良く作成できるようになる。
例えば、下の図はオリンピックのこれまでの開催都市と参加選手数の統計データだが、データ探索機能のAIによるサジェストにより「参加国・参加地域数」が100増えるごとに「女性比率」が20.10%ずつ増加しているということが導き出されている。
他の例も紹介しよう。G Suiteの音声入力機能で機能するAIは、前後の文節をみて意図する言葉を認識してくれる。これにより議事録作成の効率化を図ったり、プレゼンテーションの練習をしながら話した内容をスピーカーノートに反映させたりすることができるのだ。
コラボレーション中心の設計
Googleドキュメントは複数のユーザーで1つの資料を作り上げるコラボレーションを実現するための機能が豊富に取り入れられている。例えばコメント機能を使うと、セルや文章に対して入力されたコメントを見ながらディスカッションができる。また、そこにメールアドレスを入れることで、特定の相手に自動でコメントの内容をメールすることもできる。
さらに、コラボレーションを意識しているのが、提案機能である。複数人でドキュメントを作成した後に、修正の必要がある内容を「提案」という方法で指摘でき、指摘された提案に対しては「承認」と「拒否」のボタンにより受け入れを選択できる。
この2つの機能はWordでいうところの変更履歴に近い使い方ができるのだが、コラボレーションを意識しているため、見づらい「打ち消し線」を使わなくてよくなる。
このように、ドキュメント内容の確認や承認といった手続きをドキュメント内で簡単に行えるため、作成、閲覧、フィードバック、修正および“待ち”の時間を大幅に削減することができ、当事者全員の時間節約につながる。なお、これらのコメントのやりとりはドキュメントが完成した後でも見ることができるため、後からドキュメント作成の経緯を確認することも可能となっている。
また、ファイル間のコラボレーションも強化されており、スプレットシートで作成したグラフをドキュメントやスライドにコピーすると、スプレットシート側の内容を編集した際に、コピー先のグラフも編集内容を同期できる。毎月会議のためにグラフなどが入った集計ファイル(会議資料)を作成しているような場合、元データの内容さえ更新すれば集計ファイルも更新されるため、自動的に最新の会議資料が出来上がるのだ。作成の手間を大幅に削減できる。
今回は、クラウドサービスのドキュメント作成について、Office 365のMicrosoft OfficeとG SuiteのGoogle ドキュメントの特徴を比較した。ドキュメントの作成1つとっても両者のサービスの成り立ちから来る製品思想の違いによりそれぞれ特徴があることが分かっていただけたのではないだろうか。
次回は、Office 365、G Suite、それぞれの運用管理について説明する。
筆者プロフィール
大川典久
富士ソフトに入社以来、Microsoft製品を扱う部署に所属し、「SharePoint Server」の技術者として多くのプロジェクトに参画。現在はOffice 365をはじめとしたMicrosoftのクラウドサービスを中心にセミナーの企画を手掛け、プレゼンターとして活動している。
脇本 孝太郎
2009年からGoogle Appsビジネスに従事し、営業およびプリセールスとして活躍している。多種多様な業種のGoogle Apps導入プロジェクトに参画してきた。現在は担当領域を広げ、Google Appsだけでなく「Salesforce」など他のサービスを含めた業務改善やワークスタイル変革について、提案やセミナーのプレゼンターとして活躍している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.