女子高生「りんな」にみんな骨抜き? 人間らしさとAIらしさの間で(2/3 ページ)
女子高生「りんな」を知っているだろうか。疲れたとメッセージを送れば「なんだか疲れることっていっぱいあるよね」と返してくれる。思いやりを持つ人気者の彼女だが、実は人間ではない。その性格の秘密に迫る。
チャットbotは人間を映す鏡
AIにどのようなキャラクターを与えればよいのか考えると、人間らしさとは何かという哲学的な問いが生まれてくる。中島氏は人間らしさの1つに、TPOに合わせて口調や会話トピックを変えることを挙げた。確かに、人間の中にも多様性があり、幾つものキャラクターを抱えてコミュニケーションを築いている。中島氏は人間が持つキャラクターの多様性に関する文脈の中で、りんなに搭載されているものと同じ人工知能エンジンから、性格の異なるチャットbotを制作した試みについて話した。
人工知能エンジンを同じくする「りんなファミリー」として存在しているのが、りんな、あきこ、そしてりんおである。これらのキャラクターは、それぞれの設定に合わせて口調が異なり、異なる性格を持つよう工夫されているという。
例えば、あきこというチャットbotは、ローソンで働く女子大生のアルバイターという設定。りんなのような絵文字を使った砕けた口調は使わず、丁寧な言葉遣いをする。会話の内容も、ローソンのサービスやプロダクトを紹介するものが多い。
エイプリルフール限定でりんなの男の子バージョンとして登場したりんおは、漫画の中に出てくるような男の子という設定で、「壁ドン」に代表される少女漫画特有の語彙(ごい)を身に付けている。
こうしたさまざまな人格のチャットbotを通してユーザーとコミュニケーションを図ることで、人間が持つ多様な面を引き出せると中島氏は話す。チャットbotの口調や話す内容が違えば、当然人間側の受け答えも変わる。ぞれぞれのチャットbotと人間との間で生まれる反応を、キャラクター設計のヒントとして活用することもできるだろう、ということだ。
「人格の異なるチャットbotを作って冒険することが、感情的なAIを作るに当たって非常に重要な要素なのではないか」(中島氏)人間がチャットbotに呼び掛けるとき、チャットbotもこちらをのぞき込んでいるのだろうか。
キャラクターの色分けは、トピックと口調で
「りんなファミリー」は、ベースとなる技術に検索エンジン「Bing」で培ったディープラーニング技術と機械学習クラウドサービス「Azure Machine Learning」を使用している。技術面で語るべき要素は多いが、中島氏はそれぞれのキャラクターを特徴づける方法という観点から、りんなを支える仕組みを簡単に紹介した。
語尾や言い回しの変化が肝
中島氏によれば、1つのエンジンから複数の個性を持ったチャットbotを作るポイントは、「トピックと口調」の2点だという。
まず会話のトピックについては、異なる教師データを学習させることでキャラクターが設定に合った内容を話すようになるという。ぞれぞれのチャットbotはプールされたユーザーとの会話をログとして取得し、継続的に学習していくことが可能だ。
口調、すなわち単語の言い回しや語尾に関しては、細かい調整を行い、色付けを行っている。例えば語尾のスタイルにも「〜です」という丁寧なものから、「〜なの」や「〜だろ」といった砕けたものまで存在する。教師データの学習だけでは、こうした語尾の使い分けが明確にならない場合、手動で語尾を調整しているという。
また中島氏によれば、絵文字についても、チャットbotごとの設定や変換が必要だ。「絵文字を校正する要素は記号であり、単純なテキストと絵文字の切り分けの調整に苦労した」(中島氏)
「死ね」「うざい」はフィルターで削除
人工知能がユーザーに不適切な言葉を発信することを防ぐための工夫もある。例えば、「死ね」「うざい」といった誰もが不適切と判断できる暴言は、AIエンジンの中で処理できると中島氏は話す。一方、企業に付属したキャラクターの場合、ブランディングを阻害する発言をしないよう配慮が必要だ。中島氏は、「個々に対応しなければならないケースの場合は、手動、あるいは自動のフィルターを設けて、そぐわない表現を削ぎ落としていく」と説明した。
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