データセンターの場所、SLAの補填……表には出てこない、Office 365とG Suiteの違い:クラウド時代のオフィススイート選定術(1/2 ページ)
クラウドサービスがSLAを下回った際、具体的にどのような補填がされるか理解しているだろうか。Office 365とG Suiteとでもここまで違う。あまり表に出てこないサービスの違いを紹介する。
今回は「Office 365」と「G Suite」の比較セミナーを実施している当社(富士ソフト)だからこそ知っている、あまり語られることがない両製品の違いについて紹介する。
データセンターの運用とデータ保存
まず、データセンターの立地についてだ。Office 365は日本国内に、G Suiteは世界各地に分散配置されている。では、上記のデータセンター運用のメリットを考えてみる。
Office 365は、日本国内で契約した場合、ほとんど全てのサービスが日本で運用され、準拠法も日本国法となる。万が一Microsoftとトラブルが発生した場合には、日本国法にのっとり対応できる。
一方、G Suiteは世界中どこから利用をしてもレスポンスが変わらない点が大きな魅力であろう。海外に拠点がある場合や、出張する機会が多い場合でも、その場所から日本国内と変わらないレスポンスでサービスを利用できる(ただし中国においては利用不可能)。
また、単純なデータ保存の方法をとっても2製品の間には大きな違いがある。Office 365はサーバのデータを丸ごと冗長化し、データセンターで保存している。ポイントは、仮想化された環境において、コンシューマー向けのサービスと企業向けサービスのデータがそれぞれ別のサーバで保存されていることだ。そのため、仮にコンシューマー向けサービスに問題が発生しても企業向けサービスのデータは影響を受けることがない。
対してG Suiteは、データを複製し、さらにそれらの全てを細分化してから複数のサーバに分散して保存する。G Suiteも、コンシューマー向けのサービスに問題が発生しても企業向けサービスのデータが影響を受けることはないが、その仕組みは「Google File System」というGoogle独自の分散ファイルシステムによって実現される。元のデータを複製し、細分化かつ暗号化した上で、世界各地のデータセンターに分散して保存しているのである。そのため、優れた難読性と冗長性を実現している。万が一、データセンターからサーバごと持ち出されたとしても、データの中身を読み取られることはない。さらに、サーバやデータセンターの一部に障害が発生した場合でも、元データを問題なく閲覧できる。
機密情報の管理方法
さらにユーザーが持つ機密情報の管理機能についても違いがある。
Office 365は、Microsoftが提供する「Azure Rights Management Services(Azure RMS)」を有効化することで「Information Rights Management(IRM)」の機能を利用できる。IRMは機密情報などの重要なドキュメントなどに対して印刷や保存、編集、コピーといった操作に関する権限情報をきめ細かく設定できる。これにより、アクセス権のないユーザーはファイルを開くことができないようにしたり、アクセス権のあるユーザーに対してもファイルを開くことはできるが内容をコピーさせない、印刷させないなどの操作を制御したりできる。
権限情報はファイルに対して埋め込まれるため、自分の手元から離れたファイルに対しても永続的に保護できる。つまり、IRMによって暗号化されたファイルは、関係者以外は確認できないのである。また、Exchange OnlineやSharePoint OnlineとIRMを連携させることでメールやドキュメントの自動暗号化を行うことも可能である。
一方、G SuiteはIRMにより、共有の詳細設定メニューからGoogle ドライブを使っているユーザーのダウンロード、印刷、コピーといった機能を無効化できる。
難しい設定は一切なく、共有の際に「コメント権を持つユーザーと閲覧権を持つユーザーのダウンロード、印刷、コピーを無効にします」のチェックボックスをクリックするだけで設定ができる。
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