「顧客よりも社員が大事」一風変わった“デル流”働き方(2/4 ページ)
「従業員をないがしろにする日本企業は間違っている」――従業員満足度と生産性の相関に着目したデルの働き方改革にはファシリティ改善と組織運営のノウハウが詰まっていた。ヒントは7つの働き方にある。
従業員をないがしろにしがちな日本企業は間違っている
実際、デルがアジアの企業に対して行ったアンケート調査からは興味深い結果が分かっている。アジアのビジネスリーダーや意思決定者にビジネスで何を重視していくかを聞くと、1位が「顧客満足度」で、2位が「コスト削減」だった。これに対し、「従業員満足度」は最下位だった。特に日本は従業員満足度への意識がアジア諸国のなかでも下から2番目という低い位置である。
「調査では、ほとんどの日本のビジネスリーダーが顧客満足度を重視し、人材確保にテクノロジーは重要だと考えているのに、『従業員満足度はビジネスの成功に欠かせない』と考える人は半数以下だったのです。『日本企業は従業員に興味がない』といえるデータです。しかし、実は、顧客満足度と従業員満足度には相関が見られます。従業員満足度が高まると、自ら進んでお客さまの課題を見つけ、業務の課題を改善しようとする傾向があるのです」
実際、従業員満足度が高い会社は、平均よりも顧客満足度が高いという結果がでているという。
「一番に考えるべきは従業員です。従業員が生産性、創造性を発揮できるIT投資でなければなりません」
従業員満足への投資は、顧客満足度向上につながるだけでなく、人材を確保する上でも重要だ。次世代を担う、デジタルネイティブやミレニアル世代に「魅力ある労働環境である」であると認知されなければ人材確保が難しくなるからだ。
ここで、デルがグローバルで調査したミレニアル世代に関する調査を参照してみよう。
YouTubeで成績アップ? デジタルネイティブ世代の働き方も7つに類型化できる
ミレニアル世代では、在宅で仕事をしている割合は66%、「業務で支給されるテクノロジーの水準が低ければ仕事を辞める」とする回答が42%に達する。しかも、この世代の44%は既に現段階で「自身が働く環境がスマートでない」と感じている。
「われわれの世代は家で仕事というとサボっていると思われたものです。しかしミレニアル世代はそれが当たり前です」と、山田氏は自身の家族の体験を振り返える。
「中学生の娘は、社会科の授業で憲法の前文をロック調に歌うYouTube動画を教材にしています。そして、こうした学習方法をきっかけに、実際に社会科に興味を持ったり、学習意欲が高まったりして、成績向上につながっています。こうした最新テクノロジーで育った人材が後数年で社会に出てくるのです。人材のトランスフォーメーションが進んでいます。優秀な人材を獲得することますます困難になるでしょう。そうした人材を獲得し、長く働いてもらい、次のリーダーになってもらうためには、従業員満足を高める会社になることが近道なのです」
デルでは、そうした新しい人材の働き方のタイプを「社内移動型」「デスク型」「外勤型」「在宅型」「クリエイティブ型」「エンジニア型」「現場作業型」の7つに分類、「7つのメソッド」として、それぞれのニーズに即した製品開発を進めている。
「例えば私の場合、オフィスでの業務が中心ですが、会議室やミーティングスペースの移動が非常に多い社内移動型。持ち運びやすくどこでも業務に集中できる端末が必要です。一方でリモートワークが中心であればセキュリティに加えてコラボレーション作業を効率化するデバイスも必要です。クリエイティブ型であれば何よりもパワフルな性能が求められます。働き方改革が進んだとしても、従業員が求める環境はこの7つに集約できます」
これからのワークスタイル変革を実践する際、具体的な道具選をシンプルにこの7つに集約することで、多様性を維持しながら調達や管理の効率を高めることができる。
この7つのメソッドの実践例として、例えばUSENでは、「Inspiron7000」シリーズを使って「外勤型」社員の機動力をアップし、TCO削減でも成果を挙げている。また、水野産業では、防滴防水の「Latitude Rugged」シリーズを使って、「現場作業型」社員の作業効率アップとペーパーレス化を実現している。
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