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「顧客よりも社員が大事」一風変わった“デル流”働き方(4/4 ページ)

「従業員をないがしろにする日本企業は間違っている」――従業員満足度と生産性の相関に着目したデルの働き方改革にはファシリティ改善と組織運営のノウハウが詰まっていた。ヒントは7つの働き方にある。

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実は非効率だった「インサイドセールス部門はパーティション区切り必須」の常識

 ファシリティ専門家の知見の中には、山田氏が納得できないものもあったという。それは内勤営業のフロアのパーティションを撤去することだ。内勤営業の現場は固定席とパーティションに仕切られた静かな環境が“常識”だった。パーティションがないと、オフィスの中の話し声が電話の先の顧客に伝わる懸念があるためだ。

 「しかし、ヘッドフォンのノイズキャンセリング機能を使えば、オフィスの音は全くといっていいほど話し相手には聞こえないのです。実際に試してみるとパーティションのあるなしで差はわずか数デシベルしかありませんでした。テクノロジーの進化は素晴らしいと実感しました。パーティションを撤廃したことで、固定席でデスクトップPCを使う必要がなくなりました。見通しがよくなり、立ち上がってすぐ相談することができるようになり、新人の面倒も見やすくなるという効果が得られました」

 テクノロジー導入の効果という点では、デュアルモニターも大きな成果を出している。資料作成やデータ確認などの作業効率が大幅にアップするため、今では、営業部隊のほとんどがデュアルモニターを希望し、実際に利用しているという。開発者や設計者などではなく、営業のほとんどが利用しているという事例は珍しいだろう。

パーティションなしを実践したところ。音声通話が多い部門にもかかわらず、フロア全体を見渡せる
パーティションなしを実践したところ。音声通話が多い部門にもかかわらず、フロア全体を見渡せる

深夜会議の翌朝をどう過ごすか、家族から見て「いい会社か」は生産性に影響する

 山田氏は、取り組みの成果として大きいものとして、意識の変化を挙げた。社内調査では「労働時間よりも成果を気にするようになった」という回答は80%に上った。在宅勤務も含め、どこからでも働けるようになったので「いつまでにこれを」という意識のもと、どう仕事を配分し、終わらせるかを深く考えるようになったという。

働き方改革の成果 時間よりも成果に関心を持つ社員が、全体の80%に
働き方改革の成果 時間よりも成果に関心を持つ社員が、全体の80%に

 「私自身、深夜に自宅から参加する米国本社との電話会議が苦手でした」――山田氏自身も家庭や子育てと仕事を両立してきた経験が長い。その山田氏にとって、大きな負担になっていたのは、深夜に行われる米国本社との会議だ。

 米国との打ち合わせは時差があるため、日本時間の深夜に行われることが多い。山田氏の場合も帰宅後、就寝時間を後ろ倒しにして参加することが多いという。しかし、子育て中の山田氏からすると「そんな日の翌日に限って子どもは“朝練”に出掛ける。支度をするために私も早起きします。その後、寝不足まま出勤すると、丸一日パフォーマンスが良くない状態になるのがストレスでした。結果的に、米国との会議がある日は憂鬱な気分になりがちだったのです」という。

 働き方改革が進んだ今は、在宅勤務制度を活用し、家族を送り出してから通勤に掛かる時間を仮眠に充てることで、「始業時間には万全の体調で就業できるようになった」という。この変化によって、寝不足や疲労でパフォーマンスが出ない状況がストレスとなり会議そのものに苦手意識を持っていた状況は大きく改善したそうだ。

 山田氏は、働き方改革の最大の効果として「そこで働く幸福感とモチベーションの向上」を挙げた。ある社員は、取り組みの成果を聞かれてこんな回答を寄せたという。

 “自宅で仕事をすることで、家族が働く姿を見る機会が増えた。家族の会話も増え、仕事への理解も深まったようだ。職場への印象も『こんな働き方ができる会社に務めているのはいいことだ』と言ってくれるようになった”

 家族が“いい会社”と感じる職場では、従業員は「もっと活躍したい」と思うようになり、顧客満足度を高め、生産性を向上させようと努力する気持ちが生まれやすくなる。従業員満足度を高めることで、組織の可能性を無限大に広げることができる、というのが山田氏及びデルの考えだ。

 山田氏らは、前述の7つのメソッドに加え、デル自身の働き方改革の経験則について、広く伝えていきたいとしている。

 「生産性を高める方法を見つけるには、経験も必要ですが、最新のテクノロジーの利便性も組み合わせて柔軟に検討すべきです。私たちの知見をお伝えしたい」

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